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Part 16 「アイソメトリクスを見直そう」

Part 16 「アイソメトリクスを見直そう」

ひと昔前に流行った、「ブルワーカー」というトレーニング器具をご存知でしょうか。円筒状のシリンダの中にスプリングが入っており、それを両端から押さえつけて鍛えるというものです。
この器具の根底にある考え方は、「アイソメトリクス」というトレーニング方法です。今ではこの方法を用いる人は少なくなりましたが、実は、正しくアイソメトリクスを行えば、通常のトレーニングで得られる効果をさらにアップさせることが期待できるのです。

●アイソメトリクスとは

さて、アイソメトリクスとは何でしょうか。これは日本語では「等尺性筋収縮」といいます。等尺性というのは、長さが同じであるということ。つまり、筋肉が長さを変えないまま、力を発揮している状態のことを指します。たとえば電車に乗っていて、身体が揺れないように踏ん張っているときが、アイソメトリクスの例となります。

筋肉が力を発揮するとき、ひとつの筋繊維はだいたい5秒くらい収縮すると、別の繊維に入れ替わります。つまり5秒ごとに使われる筋繊維が入れ替わりながら力を発揮し、運動を続けていくということです。
このように余裕を持って筋肉が働いているときは、筋繊維がバトンタッチしながら力を発揮しているため、それほどダメージもなく長時間の運動を続けることができます。 では、100%の力を発揮した場合はどうでしょうか。ギリギリの力を出すためには、ほとんどの筋繊維を同時に使うしかありません。従って、このときはバトンタッチする相手がいなくなってしまうのです。
たえば、「5秒+アルファの時間、全力で筋肉を収縮させ続ければ、筋発達のための刺激は十分与えることができる」ということになります。余裕を見て7~8秒の間、全力で力を入れ続ければ良いでしょう。

これは非常に合理的なトレーニング方法であり、数多くの実験によって、その効果は確かめられています。時間もかからず、大掛かりな器具もいらず、自宅で好きなときにトレーニングできる、そんな利点があります。

●アイソメトリクスの欠点

ただし、欠点もあります。基本的にアイソメトリクスによって発達する筋肉は、「その関節角度、プラスマイナス12度前後」だとされています。つまり、肘を直角にして上腕二頭筋を刺激した場合、肘が78度~102度までの関節角度においてしか、上腕二頭筋は強化されません。ですので、関節角度全域で鍛えようとしたら、いくつもの角度においてアイソメトリクスを行う必要があります。

また、「全力で7~8秒間力を入れ続ける」というのも、慣れないと意外に難しいものです。最初のうちはどうしても、途中で力を抜いてしまいがちですが、できるだけ全力を維持するように頑張ってください。ちなみに呼吸は決して止めず、ゆっくりと少しずつ息を吐きながら行うようにします。

●アイソメトリクスの実際

ブルワーカーを用いる方法もありますが、ジムに通っている場合はセーフティバーを利用して行うこともできます。その方法をいくつか紹介しましょう。

◇ベンチプレスのアイソメトリクス

  1. 1.パワーラックにフラットベンチを置き、胸の上数cmでバーが止まるようにセーフティバーをセットする。
  2. 2.胸の上数cmでバーが止まった状態で、7~8秒間思いっきり力を入れる。
  3. 3.セーフティバーの位置を高くし、胸の上20cmの高さでバーが止まるようにセットする。
  4. 4.胸の上20cmで、バーが止まった状態で7~8秒間思いっきり力を入れる。
  5. 5.ヒジが伸びきる寸前の高さに、セーフティバーをセットする。
  6. 6.ヒジを完全に伸ばしきるつもりで、7~8秒間思いっきり力を入れる。
胸の上数cm 胸の上20cm
胸の上数cm 胸の上20cm
肘が伸びきる寸前
肘が伸びきる寸前

◇バーベルカールのアイソメトリクス

  1. 1.パワーラックの中に立って、バーベルカールのポジションをとる。ヒジを少しだけ曲げたところで、バーが止まるようにセーフティバーをセットする。
  2. 2.ヒジを少しだけ曲げた状態で、バーベルカール。7~8秒間思いっきり力を入れる。
  3. 3.セーフティバーの位置を高くし、ヒジが直角になったところでバーが止まるようにセットする。
  4. 4.ヒジを直角に曲げた状態でのバーベルカール。7~8秒間思いっきり力を入れる。
  5. 5.ヒジが曲がりきる寸前の高さに、セーフティバーをセットする。
  6. 6.ヒジを完全に曲げきるつもりで、7~8秒間思いっきり力を入れる。
ヒジを少しだけ曲げた状態 直角 肘が曲がりきる寸前
ヒジを少しだけ曲げた状態 直角 肘が曲がりきる寸前

通常のトレーニングにアイソメトリクスを組み合わせることで、筋肉に新しい刺激を与えることができます。怪我をしている場合は、痛みを感じない角度だけでトレーニングすることも可能ですし、特に弱い関節角度の部分だけ集中的にトレーニングすることもできます。
これまでにアイソメトリクスを試したことのない方は、ぜひ一度採り入れてみてください。

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