That's トレーニング

Part 45 「SSCを応用したエクササイズ」

Part 45 「SSCを応用したエクササイズ」

筋力向上、筋肥大、競技能力向上
メリット:モーターユニット動員数の向上

筋肉に強い刺激を与えようとする時、ウォリアーには二つの選択肢がある。一つは高重量を用いること。もう一つは、「動作に集中し、効かせて」行うことだ。

高重量を用いる場合、多くのモーターユニットが動員される。モーターユニットとは、1本の神経とそれが支配する筋繊維群のこと。多くのモーターユニットが動員されるということは、多くの神経と筋繊維群が使われるということである。

集中し、効かせて行う場合、脳から筋肉への「収縮せよ」という電気インパルスの頻度が高まる。この電気インパルスの頻度のことを「レートコーディング」と呼ぶが、ゆっくり効かせて個々の筋肉に集中した動作を行っている時はレートコーディングが高まり、個々の筋繊維の発揮する張力が強くなる。

どちらも筋肥大や筋力向上には必要である。ただし競技能力の向上を目指す場合、モーターユニットの動員数を高めるエクササイズを重視した方がいい。実際の競技では個々の筋肉だけに集中し、効かせて行う場面はないからだ。

◆SSCとは?

ストレッチ・ショートニング・サイクルという言葉がある。略してSSC。膝を曲げて静止した状態からジャンプするよりも、屈んでから一気に切り返してジャンプした方が高く跳び上がることができる。それはSSCの作用によるものだ。

筋肉は一気に伸ばされると、断裂してしまう。それでは困るので、伸ばされてしまわないように収縮しようとする働きがある。それを「伸展反射」と呼ぶ。反射なので脳は介さず、脊髄からの反射運動として行われる。

また筋肉や腱にはエラスチンという弾性のある繊維がある。ゴムが伸びると自然に縮むように、エラスチンも縮もうとする。その縮む時の弾性エネルギーや伸展反射の働きにより、SSCが起こるのである。

◆エクササイズへの応用

高重量を扱う時だけでなく、SSCのような爆発的な動きの時も、多くのモーターユニットが動員される。これをエクササイズに応用することで、筋肥大や筋力向上が望めるはずだ。 ただしストレッチ時に多大な負荷がかかるので、ケガを引き起こす可能性も高い。エクササイズの選定や使用重量の設定には注意が必要である。

具体的には、ストレッチポジションでもともと負荷がかかりにくいエクササイズは、高重量を用いて問題ない。例えばサイドレイズの場合、ダンベルを両手に持ってぶら下げた状態では、三角筋にほとんど負荷はかかっていない。しかしネガティブでスピーディーに下ろし、一気に切り替えして挙げるようにすると、スタートポジション(ストレッチポジション)で強い負荷がかかっていることを感じられるだろう。

チンニングやダンベルロウなどの背中のエクササイズは、SSCとの相性がいい。ボトムポジション(ストレッチポジション)よりもトップポジション(収縮ポジション)での負荷が高いだけでなく、動作中には肩甲骨がクッションのように柔軟に動き、数多くの筋肉に自然な伸展反射を起こさせることができる。ゴムがノンストップで伸び縮みしているようなイメージで行うといいだろう。

逆にベンチプレスやスクワットなど、ボトムのストレッチポジションで最初から強い負荷がかかる種目の場合、高重量を扱うのは危険である。このようなエクササイズでは、軽めの重量でスピーディーな切り返しを意識して行うようにする。

集中し、効かせて行うトレーニングでは脳が強く働いている。ここでは意識が重要である。しかしSSCは反射的な運動であり、弾性エネルギーを利用した運動でもあるため、むしろ無意識に、無心に行うようにしたい。高く跳び上がろうとする時に「膝をこう伸ばして」「腕をこう振って」などと考えていたのでは、まともに跳び上がることすらできない。

なお、チーティングと混同しないでほしい。身体を前後に揺らし、反動を使って行うサイドレイズやバーベルカールでは、むしろストレッチポジションでの負荷は抜けてしまっている。他の筋肉を使い反動を使って挙げるのではなく、しっかりと負荷をかけてターゲットとする筋肉を収縮伸展させて行うようにしてほしい。

【SSCを利用したダンベル・ロウ】

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