競技パフォーマンスUP

俺達は、やり抜く。俺達は、圧倒的にデカくなる。そして必ず、奪い返す。フィジカルに復活を託す京都大学ギャングスターズ 後編

俺達は、やり抜く。俺達は、圧倒的にデカくなる。そして必ず、奪い返す。
フィジカルに復活を託す京都大学ギャングスターズ 後編

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競技パフォーマンスUP

俺達は、やり抜く。俺達は、圧倒的にデカくなる。そして必ず、奪い返す。フィジカルに復活を託す京都大学ギャングスターズ 後編

俺達は、やり抜く。俺達は、圧倒的にデカくなる。そして必ず、奪い返す。
フィジカルに復活を託す京都大学ギャングスターズ 後編

かつて大型選手をそろえ、大学アメリカンフットボール界を席巻。6度の大学日本一に輝いた名門・京都大学アメリカンフットボール部ギャングスターズ。しかし1996年度を最後に大学王座から遠ざかり、関西学生リーグで立命館大、関西学院大の後塵を拝す。それでも前進を続ける彼らはウエイトトレーニングへの取り組みを見直し、パワーあふれる大型選手を育成して復活を期す。彼らはいかなる改革によって大学王座を奪回せんとしているのか。西村大介監督、河田繁治フィジカルコーディネーター、南川太志ストレングスコーチに話を聞いた。
(※インタビューは、2016年9月に実施。)


■試合までの2週間のうち、前半で追い込み、後半で疲れを取る

トレーニング期間から8月の試験期間を挟んでチームを仕上げ、8月末より、本番である秋のリーグ戦に突入する。アメリカンフットボールという競技は肉体的にハードであり、戦術構築にかける時間が多く必要となる。そのためシーズンに入ると、フィジカルトレーニングの時間を十分に確保するのが難しくなってくる。


河田繁治フィジカルコーディネーター

「シーズンイン以降はケガのないよう、コンディション維持が第一。われわれはそれほど層の厚いチームではありません。スターティングメンバーがケガをすると大きな戦力ダウンになるので、バックアップも含めて、とにかく負傷をさせない。そのためにも、トレーニングでガツガツと追い込んで疲労をためることは避ける。これが基本方針です」(河田)

「シーズン中も身体を大きくし続けるのは、正直言って難しい。リーグ戦を圧倒的に勝てるチームならば、力量差のあるチームと対戦するシーズン序盤の1カ月程度をフィジカルアップに充てられますが、今の我々にそこまでの実力はありません。とにかく1戦1戦、しっかりと戦っていかねばならない状況なので、トレーニングの疲労をためて、ケガのリスクが高まることは避けざるを得ません。現行のプログラムをあと数年しっかりとこなし、もう少しノウハウがたまってくれば、回数を増やせる可能性はありますが…」(西村)

しかしトレーニングを怠ると、1年近くをかけて作ってきた選手の身体も、どうしてもしぼんでしまう。そのため、シーズン中もなるべく筋力強化をしたいところのですが、スキルトレーニングとの兼ね合いから、筋への局部的なオーバーワークやタイトネスを引き起こし、けがのリスクが高まる。そのため、シーズン中の調整は本当に難しい。

「シーズンイン後は筋力のメンテナンスがメインとなりますが、今年はリーグ戦の合間に、全員でトレーニングする日を設定。週2回、ウエイトトレーニングを行います。今は2週間に1回、試合がありますから、ハードにやる日と、少しずつテーパーをかけてコンディショニングをする日とに分け、合計4回行っています。
試合翌週の最初のトレーニングでは、大幅な筋肥大を狙うところまでは難しいのですが、筋力をしっかりと維持すべく、重さをしっかりと確保。ただし、レップスを増やして疲労をためないよう、多くても5レップぐらいにとどめています。そして2回目のトレーニングは、パワーにフォーカス。ベンチプレスなどでも挙上スピードをしっかり意識させます。

そして翌週最初の、3回目のトレーニング。ここも基本的には前の週と同じで、パワーの発揮をメインで考えて組みます。しかし練習強度が上がっており、なおかつ、疲労がたまっている時期なので、状況に応じてトレーニングの量を調整することもあります。そして試合4日前に試合前最後のトレーニングを行いますが、ここはテーパリング。それほど負荷はかけません。要は試合までの2週間のうち、前半の1週間で追い込み、後半の1週間で疲れを取っていく。そんなイメージです。

私達の方で選手の主観的な疲れや筋肉の張り、睡眠時間、栄養摂取状況などを毎日チェックし、コンディションが今一つな選手とは直接コミュニケーションを取っています。

選手には常に『集中して、テンポよくやろう』と言い聞かせており、1回当たりのトレーニング時間は45分のみ。試合直前のトレーニングは30分で終わらせることで、集中力を落とさせないことを徹底しています」(南川)


■すべての改革は、再び日本一の座に返り咲くため

ウエイトトレーニングへの取り組み以外にも、チームがさまざまな試行錯誤を常に繰り返している。現在のチームの指針は、アメリカのチーム作りの手法や戦術、スキルを導入していくこと。例えば昨年、ディフェンスコーディネーターに、NFLパンサーズで5年間プレーしたアダム・シュワード(ネバダ大学ラスベガス校出身)氏を迎え入れた。本場アメリカを手本に、チームの強化を行っている。

また2~3年生を中心に、将来オールジャパンになるポテンシャルを持つ11人の選手を選抜。サプリメントを特別に提供し、外部のジムでトレーニングをさせる「チームジャパン」というプロジェクトを、今年からスタートさせた。

「人の成長において、最も大切なのはロールモデル。お手本になるようなすごい選手が身近にいて『あの選手みたいになりたい』と思うことで、一番成長できる。日本には、みんなが平等に扱われることが大事、といった風潮がありますが、そうじゃない。飛び抜けた人材を育てることで、チームは変わる。大事なのは、エリートを作ることです。
エリートという言葉の語源は『エリュシオン』という、ギリシア神話に登場する死後の楽園。本来の意味から言うと、エリートとは死を恐れず、世のため人のために体を張る存在。そういう意味で、われわれの選手達にはぜひエリートになってほしい。そして、「チームジャパン」に選ばれた選手は、自分に多くの責任があり、フィールドでもフィールド外でも、一つ一つのことを真剣にやらねばならない、という緊張感を持ってほしいです」(西村)

すべての改革は、再び日本一の座に返り咲くためだ。しかし今シーズンは第1節の龍谷大戦、第3節の甲南大戦と、前年度下位校を相手に2試合を落とした。神戸大、同志社大には勝利したものの、日本一への道のりの険しさを痛感させられる結果となった。

そして2勝2敗で迎えた、昨年度王者・立命館大との1戦。圧倒的パワーとスピードで今シーズン学生ナンバーワンと評価される立命館大に、3-28で完敗を喫する。


西村大介監督

「勝負は時の運で仕方ない面もありますが、正直、もう少しやれると思っていただけに、非常に悔しいです。
しかし、何としてもここから巻き返します。結果は出ていませんが、われわれは確実にパワーアップしている。その成果を少しでも見せたい。そして『京大の選手はでかいよね。強いよね』というイメージを、少しずつでも取り戻していきます」(西村)

かつて大型選手をそろえ『パワーの京大』と呼ばれたギャングスターズ。復権に向けた戦いは、まだまだ続く。

(終わり)

(前編を読む)




Text:
前田成彦
DESIRE TO EVOLUTION編集長(株式会社ドーム コンテンツ企画部所属)。学生~社会人にてアメリカンフットボールを経験。趣味であるブラジリアン柔術の競技力向上、そして学生時代のベンチプレスMAX超えを目標に奮闘するも、誘惑に負け続ける日々を送る。お気に入りのマッスルメイトはホエイSP。

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かつて大型選手をそろえ、大学アメリカンフットボール界を席巻。6度の大学日本一に輝いた名門・京都大学アメリカンフットボール部ギャングスターズ。しかし1996年度を最後に大学王座から遠ざかり、関西学生リーグで立命館大、関西学院大の後塵を拝す。それでも前進を続ける彼らはウエイトトレーニングへの取り組みを見直し、パワーあふれる大型選手を育成して復活を期す。彼らはいかなる改革によって大学王座を奪回せんとしているのか。西村大介監督、河田繁治フィジカルコーディネーター、南川太志ストレングスコーチに話を聞いた。
(※インタビューは、2016年9月に実施。)


■試合までの2週間のうち、前半で追い込み、後半で疲れを取る

トレーニング期間から8月の試験期間を挟んでチームを仕上げ、8月末より、本番である秋のリーグ戦に突入する。アメリカンフットボールという競技は肉体的にハードであり、戦術構築にかける時間が多く必要となる。そのためシーズンに入ると、フィジカルトレーニングの時間を十分に確保するのが難しくなってくる。


河田繁治フィジカルコーディネーター

「シーズンイン以降はケガのないよう、コンディション維持が第一。われわれはそれほど層の厚いチームではありません。スターティングメンバーがケガをすると大きな戦力ダウンになるので、バックアップも含めて、とにかく負傷をさせない。そのためにも、トレーニングでガツガツと追い込んで疲労をためることは避ける。これが基本方針です」(河田)

「シーズン中も身体を大きくし続けるのは、正直言って難しい。リーグ戦を圧倒的に勝てるチームならば、力量差のあるチームと対戦するシーズン序盤の1カ月程度をフィジカルアップに充てられますが、今の我々にそこまでの実力はありません。とにかく1戦1戦、しっかりと戦っていかねばならない状況なので、トレーニングの疲労をためて、ケガのリスクが高まることは避けざるを得ません。現行のプログラムをあと数年しっかりとこなし、もう少しノウハウがたまってくれば、回数を増やせる可能性はありますが…」(西村)

しかしトレーニングを怠ると、1年近くをかけて作ってきた選手の身体も、どうしてもしぼんでしまう。そのため、シーズン中もなるべく筋力強化をしたいところのですが、スキルトレーニングとの兼ね合いから、筋への局部的なオーバーワークやタイトネスを引き起こし、けがのリスクが高まる。そのため、シーズン中の調整は本当に難しい。

「シーズンイン後は筋力のメンテナンスがメインとなりますが、今年はリーグ戦の合間に、全員でトレーニングする日を設定。週2回、ウエイトトレーニングを行います。今は2週間に1回、試合がありますから、ハードにやる日と、少しずつテーパーをかけてコンディショニングをする日とに分け、合計4回行っています。
試合翌週の最初のトレーニングでは、大幅な筋肥大を狙うところまでは難しいのですが、筋力をしっかりと維持すべく、重さをしっかりと確保。ただし、レップスを増やして疲労をためないよう、多くても5レップぐらいにとどめています。そして2回目のトレーニングは、パワーにフォーカス。ベンチプレスなどでも挙上スピードをしっかり意識させます。

そして翌週最初の、3回目のトレーニング。ここも基本的には前の週と同じで、パワーの発揮をメインで考えて組みます。しかし練習強度が上がっており、なおかつ、疲労がたまっている時期なので、状況に応じてトレーニングの量を調整することもあります。そして試合4日前に試合前最後のトレーニングを行いますが、ここはテーパリング。それほど負荷はかけません。要は試合までの2週間のうち、前半の1週間で追い込み、後半の1週間で疲れを取っていく。そんなイメージです。

私達の方で選手の主観的な疲れや筋肉の張り、睡眠時間、栄養摂取状況などを毎日チェックし、コンディションが今一つな選手とは直接コミュニケーションを取っています。

選手には常に『集中して、テンポよくやろう』と言い聞かせており、1回当たりのトレーニング時間は45分のみ。試合直前のトレーニングは30分で終わらせることで、集中力を落とさせないことを徹底しています」(南川)


■すべての改革は、再び日本一の座に返り咲くため

ウエイトトレーニングへの取り組み以外にも、チームがさまざまな試行錯誤を常に繰り返している。現在のチームの指針は、アメリカのチーム作りの手法や戦術、スキルを導入していくこと。例えば昨年、ディフェンスコーディネーターに、NFLパンサーズで5年間プレーしたアダム・シュワード(ネバダ大学ラスベガス校出身)氏を迎え入れた。本場アメリカを手本に、チームの強化を行っている。

また2~3年生を中心に、将来オールジャパンになるポテンシャルを持つ11人の選手を選抜。サプリメントを特別に提供し、外部のジムでトレーニングをさせる「チームジャパン」というプロジェクトを、今年からスタートさせた。

「人の成長において、最も大切なのはロールモデル。お手本になるようなすごい選手が身近にいて『あの選手みたいになりたい』と思うことで、一番成長できる。日本には、みんなが平等に扱われることが大事、といった風潮がありますが、そうじゃない。飛び抜けた人材を育てることで、チームは変わる。大事なのは、エリートを作ることです。
エリートという言葉の語源は『エリュシオン』という、ギリシア神話に登場する死後の楽園。本来の意味から言うと、エリートとは死を恐れず、世のため人のために体を張る存在。そういう意味で、われわれの選手達にはぜひエリートになってほしい。そして、「チームジャパン」に選ばれた選手は、自分に多くの責任があり、フィールドでもフィールド外でも、一つ一つのことを真剣にやらねばならない、という緊張感を持ってほしいです」(西村)

すべての改革は、再び日本一の座に返り咲くためだ。しかし今シーズンは第1節の龍谷大戦、第3節の甲南大戦と、前年度下位校を相手に2試合を落とした。神戸大、同志社大には勝利したものの、日本一への道のりの険しさを痛感させられる結果となった。

そして2勝2敗で迎えた、昨年度王者・立命館大との1戦。圧倒的パワーとスピードで今シーズン学生ナンバーワンと評価される立命館大に、3-28で完敗を喫する。


西村大介監督

「勝負は時の運で仕方ない面もありますが、正直、もう少しやれると思っていただけに、非常に悔しいです。
しかし、何としてもここから巻き返します。結果は出ていませんが、われわれは確実にパワーアップしている。その成果を少しでも見せたい。そして『京大の選手はでかいよね。強いよね』というイメージを、少しずつでも取り戻していきます」(西村)

かつて大型選手をそろえ『パワーの京大』と呼ばれたギャングスターズ。復権に向けた戦いは、まだまだ続く。

(終わり)

(前編を読む)