Warrior's Story

栗原ジャスティーン(モデル)-前編-

■細くてただ腹筋が割れているだけが、女性らしさじゃない。

「ここ1年で、仕事内容が本当に変わった実感があります。今までは一人のモデルとしてオーディションを受け、選ばれる立場だった。でも今はそういう仕事は減り『私だからお願いしたい』と指名されることが増えました。自分しかできないことを仕事にできているので、やりがいがあります」

栗原ジャスティーンさん

語るのは、モデルの栗原ジャスティーン。随一の鍛え上げられたダイナミックな身体は「ただ細いだけ」のモデルとは一線を画す。現在、ソーシャルメディアで流行りの言葉「筋肉女子」「腹筋女子」。彼女がそのアイコンの一人であることは間違いない。だがそんな状況に対し、はっきりと言いたいことがある。

「筋肉をつけることはカッコいい。それが最近、少しずつ理解されてきたと思います。でも、メディアの紹介の仕方はまだまだ。トレーニングをガンガンやっている女性はあくまで変わった人。『オモシロ人間』扱いや、いやらしい目線で撮られることも多い。

今はまだ、腹筋をバキバキに割ることばかりが注目されている気がします。腹筋のカットは鍛えるよりも、絞ることで生まれます。全身をしっかり鍛えた結果、腹筋も割れているのはいいですが、細くてメリハリがなく、ただ腹筋だけが割れている身体が女性らしいとはいえない。また太ももだって、細くて脚の間に隙間が空いているより、しっかり筋肉がついている方がずっとカッコいい。

メディアには、鍛えた女性のカッコよさにもっとシンプルにフォーカスしてほしいし、より多くの人にトレーニングとの魅力を知ってほしい。女性らしい身体は筋トレで作る。そのことを、一人でも多くの女性に向けて発信していきたいです」

栗原ジャスティーンさん

■ノリでこの大会に出る人はいない。目標があるから自分をプッシュできる。

モデルとしての仕事の他、コンテストにもたびたび出場。現在は、9月3日に大阪で行われる「オールジャパンフィットネスビキニ選手権」(JBBF主催・35歳以下・163㎝超級)に照準を合わせ、週6回のハードなトレーニングに励む。2015年にはベストボディジャパン東京大会でグランプリ、全国大会で準グランプリ。2016年のサマースタイルアワード東京大会で2位、全国大会では3位。そんな彼女が、JBBFが主催するボディビル大会に出ようと思ったのは、なぜなのか。

「2年前のベストボディに一緒に出た友達が昨年、JBBFのフィットネスビキニにエントリーしたんです。当時は正直、フィットネスビキニに出ている選手は筋肉質過ぎて、私にはトゥーマッチかな、カッコいいけど合わないかな、という気持ちでした。でも大会を見て、キラキラのビキニで鍛えられた選手たちの身体を見たら、すごくきれいで...。そのとき、私もやりたいと思いました」

だが、フィットネスビキニはあくまでボディビルのコンテストである。勝つためには今までよりもバルクのある身体を作らねばならない。そして当然ながら、軽いノリで出場する人はいない。普段からトレーニングに集中し、自信と実績のある選手たちと競い合うコンテストであり、下手をすれば恥をかく可能性もある。だから迷った。

「さまざまな葛藤がありましたが、今年の1月に出場を決め、そこからはトレーニング内容を大きく変えました。それまでは下半身を中心に鍛えていて上半身は細かったので、特に上半身を重点的に鍛えていきました。上半身は肩・腕・背中、お尻・足でパーツ分けして、腕は途中から他の日に混ぜて回数を減らしました。腕が太くなりすぎると肩が小さく見えるので腕だけの日はやめ、その分、肩のトレーニングを増やしました。

体重は昨年末の49㎏から、9㎏アップの58㎏まで持っていきました。そこから大会までに約5㎏絞って、53㎏ぐらいに仕上げます。今は約54㎏なので、減量はおおむね終了。あとはお腹周りをあと少し絞って、最後に水分を抜く感じですね」

当然、サプリメントも確実に摂取している。朝がビタミンとジョイント、ZMAとEPAを摂取し、トレーニング中にBCAAとクレアチン、トレーニング後にホエイSPとグルタミン。夜にもビタミンとZMA、EPAを摂る。

「食事は朝から卵やご飯に納豆など。朝は炭水化物をしっかり摂っています。お昼は外食が多いのでなるべく定食やお肉を選びます。肉はソースなどは避け、なるべくシンプルな味つけで。夜は鶏肉料理かステーキですね。ステーキは250~300gぐらいは食べますよ。夜の炭水化物は少なめで、絞る時期はカットします。私はもともと食が細くて、食べることも正直それほど好きじゃないんです。だから、頑張って食べています。シーフードとスイーツが大好きですが、今はスイーツはもちろんダメ。JBBFの大会に出るのは初めてなので、プレッシャーは正直、大きいです。でも目標があるからこそ、自分をプッシュできるのは確か。

今のところ、仕上がりはほぼプラン通り。もちろん、細かい部分ではいろいろあるのですが、できる限りのことはやりました。あとは大会までに、お腹まわりをもう少し絞りたいです。あの時ああすれば、こうすれば、という後悔はまったくないから、どんな結果が出ても受け入れられる。少なくとも、恥ずかしい結果にはならないと思います」

今年のフィットネスビキニを目標にしたことでメンタルも強くなり、つらいトレーニングでもやり通せるようになった。

「以前はきつくてやめていたレベルでも、めげずにやっています。トレーナーをつけない普段のトレーニングで追い込むのは大変。自分をプッシュし続けなくてはいけないのは正直、つらいです。それを少しずつできるようになり、メンタルもだいぶ強くなった気がします。

ジムに行くことは大好きだけど、自分で決めている『もう1セット』や『あと1回』を妥協してしまいたい葛藤は常にあります。『15回と決めているけれど、やっぱり10回でよくない!?』みたいな(笑)。でも絶対に負けないです。一度でも減らすと、それがクセになってしまう気がするから」

■誰もシェイプアップなんて考えず、ビルドアップしようとしている。

子どものころからVOGUEやELLEなど、父親が海外で買ってきてくれるファッション誌を見るのが大好きだった。そして小学校時代からテニスに打ち込む傍ら、中学1年のころからモデルの仕事を始めた。

「ジムでトレーニングを始めたのは、高校生になってすぐ。私にとって身体を動かすのはとても自然なこと。入会できる年になったらすぐに入りました。週に3~4回は行っていたかな。でも、当時はヨガやスタジオレッスンが中心で、たまに軽くマシンを使う程度。事務所からは『太り過ぎだから痩せろ』とよく言われていました。あのころはか弱くて細い女性アイドルが人気だったけど、私はああなりたいとは思えなかった。大人になって自分の意志を持つにつれ、その思いが強くなっていきました」

自らの理想像と世間が求める女性像。そのギャップが嫌になり、香港でモデルの仕事をしたこともあった。「鍛えた女性の身体はカッコいい」という確信が生まれ、自らの方向性がはっきりしたきっかけは、20代前半のころ、ロサンゼルスで暮らしたことだった。

「アメリカの女性はみんなすごく鍛えているんですね。ベニスビーチのジムにいる女性たちは、シェイプアップなんて誰もしていない。みんなビルドアップしようとしているんです。驚きでした。私は当時細かったけれど、普通の女の子と比べたらトレーニングはそこそこやっていたつもり。でも、彼女達と比べたらぜんぜん...。私が真剣に扱う重量で、向こうはウォーミングアップしていましたから。ウェイトトレーニングをたくさんやるようになったのは、あの時からです。それまではジムのフリーウェイトコーナーになんて、足を踏み入れたことすらなかったのに(笑)」

兄はパーソナルトレーナーで、フィジーク選手、モデルと活躍するシェレン・イースン佑太。そして夫はDNS戦士・アメリカンフットボールIBMビッグブルーのワイドレシーバー栗原嵩。今は、そんな恵まれた環境をフルに生かしている。特に身体が大きく変わったと感じるのは、この1年ぐらい。ウェイトトレーニングをしっかり行いながら、ドームアスリートハウスでは筋力をパワーに変換するアスリート向けのフィジカルトレーニングに取り組み、大きく進化した。

「兄はいつも、いろいろとアドバイスしてくれます。今回に向けても、背中や肩のトレーニングを教わりました。そしてクリーンやスナッチなど、アスリート向けトレーニングは、主人が教えてくれます。私と主人で細かいパーツのトレーニングを兄に教わりながら、3人でトレーニングすることもありますよ。そんな恵まれた環境にいるので、あとは本当に私の努力次第です。

日本では、筋トレはできるけれど動くトレーニングは苦手な人が多いのですが、私は動けて筋トレもできる存在でいたい。ウェイトトレーニングとファンクショナルトレーニングのどちらかを選ぶのではなく、どちらもやるべき。そういう意味で今、憧れている存在がアメリカのフィットネスモデル、カリーナ・エル。彼女は男性顔負けの重さでスクワットをこなし、柔軟性もあり、バック転もできる。少しでも近づきたい理想の存在です」

■フィットネスモデルのアイコンになる。

今後は、これまで行ってきたボディメイクのノウハウを、書籍や映像で広めていきたいと考えている。

栗原ジャスティーンさん

「私は高校生からジムでトレーニングしてきましたが、今思えば、アメリカでウェイトトレーニングに目覚めるまでの間は、あまり成長できないムダな時間だった。当時の日本に『この身体になりたい』と憧れる存在はいなかったし、カッコよく鍛えるノウハウもなかった。もしも当時そういう存在がいたら、もっと早く気づいていたはず。だから、私がそうなりたい。

栗原ジャスティーンさん

アメリカでは、日本にはない『フィットネスモデル』という存在がしっかりと確立されています。そしてフィットネスモデルにもいろいろなタイプがいて、全身がっちりしている子もいればお尻がすごく大きい子も、少し脂肪は乗っているけれど引き締まっている子もいる。さまざまなタイプがいて、その中から『私はこうなりたい』と選ぶことができるんです。その点、日本で今取り上げられているのは、腹筋バキバキの人が多い。目指す道が1本しかないから、それをもっと増やしたい。私が新しい道の一つになれたら、と思っています」

チャレンジの結果がどうであろうと、今後もコンテストには出場し続けるつもりでいる。今回の経験で自分に足りない部分を見つけ、それを改善できれば、その先にある世界の舞台が、いつか見えてくるだろう。憧れの舞台を見すえて、彼女は今日も鍛え続ける。

栗原ジャスティーンさんの変遷

※左から2010年、2015年、2016年、2017年

(終わり)



栗原 ジャスティーン

栗原 ジャスティーン │ Justine Kurihara

1988年10月02日生まれ

・身長:170cm
・出身:東京都  日本とアメリカのハーフ
・経験競技:テニス
・SNS:twitter、インスタグラム、LINEブログ
・成績:ベストボディジャパン2015 東京大会 グランプリ
    ベストボディジャパン2015 全国大会  2位




Text:
前田成彦
DESIRE TO EVOLUTION編集長(株式会社ドーム コンテンツ企画部所属)。学生~社会人にてアメリカンフットボールを経験。趣味であるブラジリアン柔術の競技力向上、そして学生時代のベンチプレスMAX超えを目標に奮闘するも、誘惑に負け続ける日々を送る。お気に入りのマッスルメイトはホエイSP。

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