いわきFC

リスクを冒さぬ退屈な日本のサッカーを、圧倒的なパワーで変革する。 いわきFCが巻き起こすフィジカル革命 ~その7

リスクを冒さぬ退屈な日本のサッカーを、圧倒的なパワーで変革する。
いわきFCが巻き起こすフィジカル革命 ~その7

10月13日から福井県で行われる「第53回全国社会人サッカー選手権」に参戦するいわきFC。この大会で3位以内に入れば、11月に行われる「全国地域チャンピオンズリーグ2017」への出場権が与えられる。そこで2位以内に入れば、いわきFCは現在所属する福島県1部リーグから、JFL(日本フットボールリーグ:J1をトップ=1部と考えた場合、4部に該当する)への飛び級昇格を果たすことになる。

※インタビューは2017年9月27日に実施。


北海道コンサドーレ札幌を撃破し、清水エスパルスに善戦した天皇杯に次ぐ大きな目標「全社」。いわきFCは昨年、3回戦で敗退し、地域チャンピオンズリーグへの出場とJFL昇格を逃した。5日間の集中開催で最大5連戦となる「負けたら終わり」のトーナメント。ただサッカーが上手いだけで勝ち抜けるとは限らず、強靭なフィジカルと高い走力、そしてタフなメンタルが求められる。そのため、チームは10月の戦いに向け「鍛錬期」を設け、ストレングストレーニングを中心にフィジカルの再構築を図った。

■アメフト選手に匹敵する強靭な下半身。

今回の鍛錬期は8月9日から9月9日までの5週にわたり「重さ」を追求。「身体を大きくすること」にフォーカスし、トレーニングのボリュームを大幅に増やした。選手達は朝9時から週4回、長い日は2時間半近く、ドームアスリートハウスのトレーニングルームにこもった。相変わらず、ボールを蹴るのはトレーニング後の長くても30分程度。徹底的にストレングストレーニングに打ち込み栄養を摂り、身体を大きく、強くしていった。

「彼らのフィジカルトレーニングにおける目標は、サッカー選手ではありません」

いわきFCのトレーニングを担当する、ドームアスリートハウスの鈴木拓哉トレーナーはそう断言する。一つの目標にしたのは、同年代になる法政と東大のアメリカンフットボール部の選手達。「同じフットボールだからアメフトに勝て! 年代の近い彼らに負けない数字を出そう!」とハッパをかけ、ひたすら追い込んだ。

鈴木拓哉トレーナー
鈴木拓哉トレーナー

「鍛錬期が始まってすぐの時、IBMビッグブルーのWR栗原嵩選手と、法政オレンジ(アメフト)の選手が二人、いわきに来てくれました。やはり実際に話して、自分の目で見ると説得力がある。彼らと一緒にトレーニングしたことが、非常にいい効果を生みました。中でも栗原選手の爆発的なパワーには、全員が驚かされました。すごくいい刺激になりましたね。

栗原選手はそろそろ30歳ですが、今もパワー、スピードともに自己記録を更新し続けているそうです。きちんとトレーニングをすれば、年齢なんて関係なくフィジカルは向上します。栗原選手の身体で動けるサッカー選手がいたら、最強です。サッカー選手というより、アスリートとして学ぶべきことがたくさんあったはずです」

鈴木拓哉トレーナー鈴木拓哉トレーナー


MAX測定を行い、ベンチプレス、スクワットの挙上重量を体重あたりで換算すると、ベンチプレスでは法政・東大の選手達にかなわなかったものの、スクワットについては互角以上の数値を残した。同年代のアメフト選手ともわたり合える強靭な下半身と体幹を、彼らはこの鍛錬期で手に入れたのだった。


トレーニング表▲クリックで拡大

鍛錬期のある週のストレングストレーニングメニュー(例)
※ストレングストレーニングの詳細は、別記事にて解説予定。


■骨格筋量と体重は増え、体脂肪率は下がった。

今回の鍛錬期では体重、体脂肪率、骨格筋量のデータを取り「身体を大きくすること」にフォーカス。特に体重と骨格筋量の増加を重視した。

「シーズン中は体脂肪12%以下で保たせていたのですが、今回は体脂肪率についてはうるさく言わず、体重を上げて身体を大きくして、筋肉を増やすことを重視しました。より重いものを挙げてもらうには、筋肉量と並行して体重も増やさなくてはいけませんが、純粋に筋肉だけで体重を増やすのは、正直難しいので...」

そして、選手個々の目標値をしっかりと設定。種目ごとにランキングを作成するなどして、競争心を刺激。選手達は競い合うことで、記録を伸ばしていった。結果、選手達の身体は大きく進化。チーム平均で体重、骨格筋量ともに800g程度増えた。

「もちろんこの数字は偶然ですが、計算上は筋肉だけ増やせたことになります。特にフォーカスしていなかった体脂肪率も、結果的に下がりました。週4回の高強度トレーニングは今まで経験がなく、キツかったと思います。でも、やった甲斐がありました。鍛錬期でも構わず試合を組んでいたこともあり、選手はみんなボロボロでした。でも変われるものですね。本当によく頑張りました」

今回、特にしっかりとした数値の伸びを見せたのがFW菊池将太、MF平澤俊輔、MF高橋大河の3選手だ。菊池は骨格筋量+1.1㎏、体重+2.8㎏、体脂肪率+0.4%。平澤は骨格筋量+1.3㎏、体重+1.3㎏、体脂肪率-1.5%、高橋は骨格筋量+0.9㎏、体重-0.3㎏、体脂肪率-2.4%と、皆一回り大きく、それでいて絞れてきた。

菊池将太選手
菊池将太選手

「今の体重は82㎏です。昨年の全社は73㎏でやりましたから、この1年でサイズが完全に変わりました。今思えば、軽かったころは動けましたが迫力に欠けていた。だから今年は、周囲から『重すぎるんじゃない?』と言われるこの身体で、あえて戦いたいです。

先日チャリティマッチで、ベガルタ仙台のヴィニシウスというサイズの大きなブラジル人選手とコンタクトしましたが、特に驚きはありませんでした。完全に鍛錬期の成果だと思います。今(試合3週間前)はまだ疲れが残っていて、軽い時よりも走れていません。でも鍛錬期明けからスプリントやジャンプ系トレーニングを増やしているので、この体重を維持しながらキレを増していけば、確実にフィットするはずです」(FW菊池)

菊池将太選手菊池将太選手


平澤俊輔選手
平澤俊輔選手

「体重も骨格筋量も増えて、体脂肪率は下がりました。僕の場合、鍛錬期はケガのリハビリ期間と重なっていたんです。今年いわきFCに入り、ストレングストレーニングをたくさんやったことで、球際でパワーを生かせるようになりました。でも筋トレの効果を実感したところでケガをしてしまって...。その思いがあったからこそ、身体が強くなればもっといける、という気持ちで鍛錬期に臨むことができました。モチベーションを高く保ちながらトレーニングできたと思います」(MF平澤)

平澤俊輔選手平澤俊輔選手


高橋大河選手
高橋大河選手

「格筋量が約1㎏増えて体重、体脂肪は減りました。今年入団して、今回の鍛錬期は2度目。このひと月でいえば、人生で初めてのトレーニング量をこなしました。僕はもともと筋トレが好きで高校時代から少しやっていたのですが、いわきFCのトレーニングはケタ違い。最初はとにかくキツかったですが、体つきが明らかに変わりましたし、プレーでも前にガツガツと行けるようになりました。試合終盤まで走り続けられるし、スピードも落ちない。僕の売りは身体能力。スプリント時のスピードや切り返しの速さなど。徐々にいい感じになってきたと思いますが、まだまだパワーもスピードも上げられます」(MF高橋)

高橋大河選手高橋大河選手


また、栄養摂取に対するマインドも向上した。ただトレーニングをするだけで、身体は大きくならない。選手達はクラブハウスに隣接するDIB(ドームいわきベース)でしっかりと食事を摂りつつ、トレーニング後はホエイSPR4などのサプリメントを摂取。それに加え、たんぱく質等の栄養を補うため、週に2度「肉トレ」を決行。選手全員で鳥鍋やバーベキューなど、肉を積極的に食べる日を設けた。

「バーベキューの時は、肉の摂取量の目安は一人あたり600g。しかもなるべく脂質少ない部位です。練習後にプロテインとR4を摂った直後なので正直きついですが、どうにか食べています。それと、昼と夜の食事で卵を2つずつ食べている他、ジェルエックスバーエックスソイフィットプロテインバープロエックスの4つを14時~19時の仕事中と、夜に家に帰ってからのタイミングで必ず摂るようにしたところ、体重が一気に増えました。僕は胃腸が強い方ではありませんし、正直言えば、好きなものだけを食べて生活したい。でも、身体のことを考えたらそれはできない。サッカー選手でいられる時間は長くないので、今はやるしかありません」(菊池)

「僕は食べても体重が増えないタイプ。しっかり食べていますが、肉トレはなかなかキツいです。食が細くて普段の食事も残してしまうこともあるのですが、プラスアルファでバーエックスやプロエックス、寝る前にSLOWを摂っています」(高橋)

「体重を増やすため、食事の量を意識的に増やしました。それと血液検査の結果から鉄分が足りないことがわかったので、ソイフィットプロテインバーを意識的に食べています。鉄分をちゃんと取ったところ、スタミナが大きく向上しましたね。肉トレについてはおいしかったし、ストレスはまったく感じませんでした」(平澤)


参考情報

2017年4月

いわきFC

2017年9月

いわきFC

※選手たちの肉体は、この半年で劇的な進化を遂げている。


■自らのスイッチを入れられるか。

田村雄三監督
田村雄三監督

今回の鍛錬期そして全社の見通しについて、田村雄三監督はこう語る。

「鍛錬期は本当にキツかったと思います。選手達は本当に真面目で、やれと言ったことをちゃんとやってくれた。そこには本当に感謝しています。そして、こんなにきついメニューをこなしてから試合をさせても、誰一人文句を言わない。本当にすごいと思います。栗原さんや法政・東大の選手達が来たことで、自分達が今までやっていたことのレベルの低さに気づき、自分をしっかり見つめ直すことができた。そういう意味でも、本当にやってよかったです。そしてこの鍛錬期を経て、選手達は確実にたくましくなりました。正直、サッカーが上手くなったわけではなく、身体が大きくなったことで自信がついた。当たられても吹っ飛ばされないことが、プレーに大きな自信をもたらしている。

今のいわきFCが、他のサッカークラブと明確に異なる点が二つあります。まず、サッカーの練習とフィジカルトレーニングが完全に連動していること。そしてもう一つが、チームが福島県1部リーグのレベルから飛び抜けているため、リーグ戦をこなしつつもフィジカルをしっかり強化できることです。今、こんなことができるチームは、日本中で僕らだけでしょう。そして、チームが誰もやっていないことに挑戦していることを、選手全員が理解し、納得できている。これは非常に大きいです」

今回の鍛錬期においても、トレーニングでしっかり追い込みながら試合も精力的にこなした。午前に2時間半のトレーニングを行ってすぐに試合、という状況で足が止まり、大敗したこともあった。

「選手達の身体が動かないことはわかっていた。だから試合前に『どんな状況でも歯を食いしばって戦え』と言いました。2時間以上も筋トレをしてすぐにゲームですから、足が止まることも負けることも仕方ないので、割り切っていました。この時期に大事なのは、あくまで身体を大きくすることですから。

そんな中で僕が見たかったのは、本当に厳しい状況でも選手たちは歯を食いしばれるか。キツいから走るのをやめよう、という方向にブレるのは簡単。その状況でやれるかを見極めたいと思いました。例えば1対0からあと2点を取りに行くパワーがあるか、ここで1点を守り切らずさらに突き放そうとするパワーがあるか、といったところです。別に下手でもいいんですよ。大事なのは、自分で自分のスイッチを入れられるか。人間、追い込まれた時にこそ、本当の姿が見えるものですから」

田村雄三監督田村雄三監督


■自分達がやってきた攻撃的なプレーを貫き、勝つ。

選手達はもちろん、鍛錬期を終えた以降も身体作りを継続している。ストレングストレーニングの量を減らす代わりにスプリント系のトレーニングを増やし、大きく強くなった身体をひたすら研ぎ澄ます。。

チーム立ち上げ1年目の昨年は、3回戦でヴィアティン三重に敗れ、地域チャンピオンズリーグへの出場権とJFLへの昇格を逃した。全員が悔しい思いをしただけでなく、チームはこの大会に大きな忘れ物をした。それは「自分達が目指すフットボール」。JFL昇格を意識するあまり本来の戦い方を放棄し、パワープレーによるゴリ押しをしてしまったことが、試合に負けた以上に大きな反省として残った。それを踏まえ、今年は90分間、常に前に出続けるアグレッシブなフットボールを貫き通す。FW菊池将太は、昨年の全社を知る数少ない選手の一人。「どこよりも厳しいフィジカルトレーニングを積んできた分、僕らは有利です」と胸を張る。

「全社は5日間の集中開催なので、やや特殊な戦い方になります。ただ、間違いなく言えることがあります。それは、今回の鍛錬期は間違いなく全社よりもキツいということ。正直に言うと、もう一度やれと言われたら...(苦笑)だからこそ、今年はしっかりと結果を出します。これだけやってきたのだから、例え5連戦だろうとまったく問題ない」

もちろん全社、そして地域CLで勝ちたい。だが、目先の勝ちにこだわることはない。なぜなら、いわきFCのミッションはあくまで「いわき市を東北一の都市にする」「日本のフィジカルスタンダードを変える ~魂の息吹くフットボール~」「人材育成と教育を中心に据える」の3つだからだ。目先のJFL、そして将来のJ1昇格に気持ちが揺らぎ、今までやってきたことを放棄することは、もはやない。田村監督は語る。

「ただ全社に勝つだけなら、きっと相手の穴を突く試合をするでしょう。それでは意味がない。全員が一つになってゴールに向かい、全員で守る。自分達がやってきた攻撃的なプレーを貫いて勝つ。それが僕らのすべきことです。

いわきFCは間違いなく、どのチームよりもしっかりとトレーニングを積んできました。その自負が本物ならば、あわてる必要はない。天皇杯でJリーグのチームと戦った時のテンションで試合に臨むことができれば、相手がどこであろうと勝てます。

だから、どの試合も自分達のフットボールをして、3対0、4対0で勝っていきたい。それぐらいのことはやってきたつもりだし、そこまで突き抜けたい。今までJFLに飛び級昇格したチームの戦い方は『相手を研究して引いて守り、セットプレーでドン!』という形が多いです。でも、それは僕らのスタイルじゃない。もちろん攻めれば攻めるほどリスクは負うし、点も取られるかもしれない。でも、それを承知で前に出続けます」

何が起こるかわからないノックアウト方式のトーナメント。研究されて厳しいマークを受け、簡単には勝たせてくれないこともあるだろう。だが関係ない。年間を通じて培ったフィジカルを前面に押し出し、誰もが驚く圧倒的な勝ち方を見せたい。それが選手・スタッフの今の思いだ。



(終わり)




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Text:
前田成彦
DESIRE TO EVOLUTION編集長(株式会社ドーム コンテンツ企画部所属)。学生~社会人にてアメリカンフットボールを経験。趣味であるブラジリアン柔術の競技力向上、そして学生時代のベンチプレスMAX超えを目標に奮闘するも、誘惑に負け続ける日々を送る。お気に入りのマッスルメイトはホエイSP。

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