サプリメント最前線

「閾値」を理解してバルクアップしろ。 ー前編ー

「閾値」を理解してバルクアップしろ。 ー前編ー

我々の身体には「ホメオスタシス」というものがある。これを日本語にすると「生体恒常性の維持」となる。気温や湿度、運動などさまざまな環境の変化が起こっても、体内の血圧や体温、血糖値などは常に一定の範囲に収まるように調整されており、そうやって我々は生命を維持しているのである。

筋肉量にも、ホメオスタシスの圧力は存在する。つまり「ヒトとして普通に生きていくのに必要なだけの筋肉量があればいい、余計な筋肉はいらない」という圧力だ。生命を維持するだけならば、特に強かったり、デカかったり、速かったりする必要はないのである。

しかし、ウォリアーにその理屈は通用しない。より強く、デカく、速くなるためには、ホメオスタシスを打ち破るだけの筋肉量が必要となる。そのためには、どうすればいいのだろうか。

■効果が出ない理由とは

ホエイプロテインとクレアチン。筋肉量を増やしたいウォリアーの二大マストアイテムである。しかし、どうも効果が得られず、不満を訴えるウォリアーも多い。

効果が出ない理由は簡単だ。量が足りないのである。

「閾値(いきち)」という言葉がある。これは生物体に対して、ある反応を起こすために必要となる最小限の量のことを指す。例えば皮膚を軽くつまんでも、痛みは感じない。しかし「ある程度の強さ」でつまむと、痛みを感じるようになる。そして、ある程度の強さでつまんだ時に、「痛みを感じる閾値に達した」と表現する。

プロテインやクレアチンは、どちらも体内に存在する。体内に蓄えられているタンパク質やクレアチンの量は、ホメオスタシスの範囲内で増減している。この場合、筋肉量もホメオスタシスの範囲内に収まることになる。

しかし、ある閾値に達するだけのプロテインやクレアチンを摂取した時に、ホメオスタシスを打ち破ることができる。その時こそ「筋肉量を増やせ」というシグナルが送られるのだ。

つまり、プロテインやクレアチンはチビチビ使っていても効果はない。ある程度の量を摂取することが必要なのである。

■プロテインの必要摂取量

では、どれだけの量を摂取すればいいのだろうか。まずはプロテインだが、1日のトータル摂取量として、筋肉量を増やしていくためには普通の人の2倍以上のタンパク質が必要だとされてきた。(※1, ※2, ※3)

2016年に出された国際的な報告でも、アスリートの場合は普通に体調を整えたり回復させたりするだけでも「1日に体重1kgあたり1.2~2.0g」のタンパク質が必要だとされ、特にハードにトレーニングしているのに摂取カロリーが少ない場合、さらに多くが必要だとされている。また1回の摂取量としては、体重1kgあたり0.25~0.3gが推奨されている。(※4)

体重70kgのウォリアーだったら、体重1kgあたり2.0gとすると、1日のタンパク摂取量として「70×2 = 140g」は最低でも確保したい。食事で肉や魚、卵などを積極的に食べると、だいたい80g程度のタンパク質が摂れる。残りの60gをプロテインで摂取すればいいわけだ。

1回の摂取量として体重1kgあたり0.3gとすると、約20g。つまり20gのプロテインを1日3回飲めばいい、ということになる。

体重80kgのウォリアーならばどうか。体重1kgあたり2.0gだと、1日のタンパク摂取量は160g。食事を頑張って90gのタンパク質を摂取したとすると、残りは70gだ。1回の摂取量として体重1kgあたり0.3gだと、約25g。つまり25gのプロテインを1日3回飲むべし、ということだ。

繰り返すが、この計算は「最低限必要な量」だ。1回の量をケチって10gくらいに抑えたり、1日1回しか飲まなかったりするようでは、効果が出るだけの閾値に達することができない。ホメオスタシスを打ち破れず、いつまで経っても筋肉量は変わらないことになる。

なお若いウォリアーはここまでの計算で問題ない。しかし、ある程度年齢が高くなると、プロテインの必要量はさらに増えるのである。

平均71歳の男性にウェイトトレーニングを行わせ、ホエイプロテインを0g, 10g, 20g, 40gの各群に分けて摂取させたところ、0gと10gではタンパク合成は高まらず、20gでやや高まり、40gにしたところでやっと強く高まったという。(※5)

もう若くないと実感しているウォリアーは、1回のプロテイン摂取量を40gまで増やす必要があるかもしれない。

(後編に続く)


  • ※1 :Evaluation of protein requirements for trained strength athletes.
    J Appl Physiol (1985). 1992 Nov;73(5):1986-95.
  • ※2 :Protein and amino acid needs of the strength athlete.
    Int J Sport Nutr. 1991 Jun;1(2):127-45.
  • ※3 :ISSN exercise & sport nutrition review: research & recommendations.
    J Int Soc Sports Nutr. 2010 Feb 2;7:7. doi: 10.1186/1550-2783-7-7.
  • ※4:Position of the Academy of Nutrition and Dietetics, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine: Nutrition and Athletic Performance.
    J Acad Nutr Diet. 2016 Mar;116(3):501-528. doi: 10.1016/j.jand.2015.12.006.
  • ※5:Resistance exercise enhances myofibrillar protein synthesis with graded intakes of whey protein in older men.
    Br J Nutr. 2012 Nov 28;108(10):1780-8. doi: 10.1017/S0007114511007422. Epub 2012 Feb 7.


Text:
Mr.D
栄養・サプリメント・トレーニングについて、聞けば全てに答えを持っているウォリアー界の生き字引的存在。数々の有名選手のパフォーマンスアップの裏にもMr.Dの存在が...。

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