Dr.'s Eye

Dr.'s Eye ~40万年で食と内臓は変化した? ─前編─

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~40万年で食と内臓は変化した? ─前編─

執行役員 SO(Scientific Officer)
栄養学博士 青柳清治

私はダーウィンの進化論の信者です。ですから「進化」という自然の営みを強く信じていて、その流れの中で人の生き方や世の中の移り変わりを考えるようにしています。

「自然選択による適者生存」という概念はヒト(ホモ・サピエンス)が現れた40万年の昔から今日に至るまで、その威力を絶えず与えてくれて、我々をより強いものへと日々進化させてくれています。

40万年進化を続けて生き延びてきたヒトという動物にとって、現代社会において適者生存して勝ち抜く上で最も重要なのは、「栄養」「運動」「健康」だと思います。「栄養」は細胞を潤し、「運動」によって身体を作り、それによって得られる肉体的及び精神的な「健康」が生活を豊かにしてくれて、結果的に勝者になれます。

ヒトが二本足で歩き始めた6万年前にさかのぼってみます。当時は狩猟や漁労、採集で得た物を食べ、主に肉が中心の食生活を送ってきました。つまりヒトの祖先が霊長類から進化して以降、肉食こそが数万年もの間続けてきたヒト本来の食生活なのです。

ところがヒトは1万年前に農耕を覚えます。農耕により食糧の生産と貯蔵が可能となって、一ヵ所に定住するようになりました。これがヒトの生活システム・社会構造を大きく進化させることとなり、ヒトは文明を生み出してきました。

一方、農耕を覚えたことによって、人々の食生活も大きく変化し、栄養も変わることになります。炭水化物の摂取量が著しく増加したのです。

さらに、今からわずか200年前に起きた産業革命では、砂糖を精製する技術が生み出されます。このことがさらに油を注ぎ、肥満にともなう糖尿病、高血圧などのいわゆる生活習慣病という形で現代社会に生きるヒトを脅かしていくのです。自動車の発明によって生じた運動不足も、便利さとは裏腹にヒトの健康を蝕むことに追い打ちをかけることになりました。

40万年のヒトの進化の歴史において、穀物や砂糖など炭水化物を多く摂取し始めたのは極々最近だということがおわかりでしょうか。そのため、肉体の進化がそれに追いついていません。

解剖学的観点からヒトと他の動物の内臓とを比較すると、特に消化管は肉食動物です。肉食動物のネコ科の消化管とそっくりです。雑食のマウスや豚、そして草食動物の馬では、盲腸は大腸や小腸より大きく、ヒトとは全く異なっています。

(後編に続く)

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