Dr.'s Eye

食の質 ~「栄養プロファイリング」という新しい考え方~

食の質
~「栄養プロファイリング」という新しい考え方~

皆さんは「ジャンクフード」を食べますか?

ドーナツやスナック菓子、コーラといったジャンクフードの多くは、高カロリー食品です。では、カロリーの高い食品ほど身体に大きな活力をもたらすのでしょうか? そんなことはありませんよね。

ジャンクフードの別名は「エンプティカロリー食品」。つまり栄養的に「エンプティ=空」の食品、ということ。精製された糖や脂肪分を多く含み、少量でもカロリーが高い一方、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維といった、健康維持に必要な栄養素の含量は極めて少ないのが特徴です。

このエンプティカロリー食品をたくさん食べると肥満が進み、糖尿病などの生活習慣病の原因となります。スポーツを楽しみながら健康な生活を長く送りたいと考えるなら、ジャンクフードの食べ過ぎには注意すべきでしょう。

ところで「栄養プロファイリング」という言葉を聞いたことはありますか? 

今年8月号の「日本栄養士会雑誌」(https://www.dietitian.or.jp/publications/magazine/)に、エポックメーキングな文献が掲載されました。「栄養プロファイリングを用いた食品の評価」というタイトルの実践事例報告で、日本栄養士会会長・中村丁次先生率いる「Diet Quality研究会」のメンバーによる投稿で、私も著者の一人です。

なぜ、この文献が重要なのでしょう?

理由は、これまでなかった「栄養プロファイリング」という新たな食品の評価基準が、日本で初めて紹介されたことにあります。

栄養プロファイリングとは、栄養素密度(食品に含まれる栄養成分の含有密度のこと。例えば、加工食品の栄養成分については、kcalあたりで示した場合、含まれる栄養素量が栄養摂取基準量の何%か、あるいは何倍かという形で評価する)に基づいた、食品のランク付けのこと。食品に含まれる一つの栄養素だけでなく、栄養素の組み合わせを総合的に考慮して算出した指数を言います。

この評価指数はもともと、アメリカで生まれたものです。アメリカでは、肥満は大きな社会問題。アメリカ疾病管理予防策センター(CDC)が2017年に発表したところによると、成人の39.8%が、肥満度を示す体格指数(BMI)で「肥満」に分類されるそうです。さらに未成年も、18.5%が肥満に分類されています。

しかもBMIの肥満度判定値は、他国が25 kg/m2であるのに対し、アメリカでは30 kg/m2です。つまり世界的に見ると、アメリカにおける肥満者の比率はさらに多いことになります。

その理由は何でしょう?

もうおわかりですね。エンプティカロリー食品=ジャンクフードです。ジャンクフードの食べ過ぎによってアメリカ人の肥満が進み、それが糖尿病などの生活習慣病の原因となり、アメリカの医療財政を圧迫しているのです。

アメリカ食品医薬品局(FDA)は、健康な食べ物・食事(=healthy diet)についての研究を進める中で、疫学的知見や栄養学的観点よりも「食事の質(=diet quality)」に注目するようになりました。彼らが考える食事の質の評価基準が「栄養プロファイリング」。アメリカを始めとする欧米の各国では今、この指数を用いて食品を評価し、それを国民の健康増進や医療費の抑制に役立てているのです。

そのように、アメリカで肥満は社会問題化していますが、わが国でも食事の欧米化やファーストフードチェーンの拡大が進み、肥満や生活習慣病の増加は、決して他人事ではありません。

2015年の国民健康・栄養調査によると、わが国の肥満者(BMI25kg/m2以上)の割合は、成人男性で約30%、成人女性で約20%です。厚生労働省は「21世紀における第2次国民健康づくり対策」において、適正な量と質の食事摂取を増やすことを目的に掲げています。しかし、国民一人ひとりが常に健康的な食品を選ぶことは簡単ではありません。ところが、欧米における栄養プロファイリングのような評価手法は日本にはないのです。

この状況に危機感を覚え、世界的権威であるDr. Adam Drewnowskiの来日をきっかけに2014年8月、日本栄養士会会長の中村丁次先生が中心となって立ち上げられたのが「Diet Quality研究会」です。研究会のメンバーはこれまで、栄養プロファイリングという評価基準を日本に導入するため、多くの議論を重ねてきました。そして、わが国で初めて栄養プロファイリングによる食品の評価が行われ、その結果が今回「日本栄養士会雑誌」に発表された、というわけです。

実はドームは、かねてから彼らの活動をサポートしてきました。その上で実感しているのは、日本全国の栄養士の方々に栄養プロファイリングという新たな考え方を紹介し、その評価内容を発表できた意義はとても大きい、ということです。

(後編へ続く)

Share
twitter
facebook
印刷用ページへ