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食の質 ~「栄養プロファイリング」という新しい考え方~ -後編-

食の質
~「栄養プロファイリング」という新しい考え方~ -後編-

栄養プロファイリングについて、もう少し詳しく説明しましょう。そもそも「食の質」とは、どのように決まる、あるいは決めるべきなのでしょう? 

食の質を表す従来の言葉として「栄養価」があります。栄養価は「エネルギー量」と「栄養素量」に区分けできます。エネルギー量は一定の重量(g)あたりのカロリー量のことで、カロリー密度(Kcal/g)が低いか高いか、という単純な評価になります。その一方、食品にはたんぱく質、ビタミン、ミネラルなど、さまざまな栄養素が異なる量含まれています。これをどのように表せば、簡単に理解できるでしょうか。

そこで考案されたのが、栄養プロファイリングという評価指数なのです。

栄養プロファイリングには、さまざまなモデル(計算方法)があります。一般的な方法は、ある特定の食品の中に、推奨される栄養素と制限すべき栄養素が、定められた目標値に対してどれだけ含まれているかを計算する、というもの。推奨される栄養素が多い食品はスコアが高くなり、制限すべき栄養素が推奨される栄養素に対して多い場合、スコアは低くなります。

今回はDr. Drenowskiの指導を参考に、日本人の栄養状態や食事情も踏まえ、推奨される栄養素としてたんぱく質、食物繊維、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、カルシウム、マグネシウム、鉄、及びカリウムの9つを選択しました(NR9)。一方、制限すべき栄養素としては飽和脂肪酸、添加糖、ナトリウムの3つを選択(LIM3)。各栄養素の目標値は、日本人の食品摂取基準に掲載されている推奨量・目安量・目標量や、米国医学研究所のデータを参考に決めていきました(文献表1参照)。

例としてDNSのBarXと、あるバランス栄養食品(CM)を比較してみます(表1)。

Bar-Xには1本(45g、214Kcal)あたり15.6gのたんぱく質が含まれているので、100Kcal換算で7.29gとなります。それは目標値(1日の摂取量)の81gに対し、9%の充足率になります。同じように、他の8つの推奨された栄養素の充足率を計算し、それらを合算した「177.17%」が、NR9(nutrient rich 9)のスコアになります。

制限すべき栄養素でも同様に計算します。例えばBar-Xには、1本あたり5.6gの飽和脂肪酸が含まれているので、100Kcal換算での含有量は、目標値の16.36%になります。そして3つの制限すべき栄養素の合計「56.06%」が、LIM3(limit 3)のスコアになります。

そしてNR9からLIM3を引いた数字は、NRF9.3というスコアで表されます。つまりBar-XのNRF9.3は、177.17-56.06=「121.12」。同じように、バランス栄養食品CMのNR9とLIM3を同じように計算し、NRF9.3を算出すると、わずか「1.6」。つまりNRF9.3の数値を比較すると、Bar-XはCMより大幅に高くなります。それだけBar-Xの栄養価が総合的に優れている、ということを意味しているのです。

本来、さまざまな食品の栄養組成データがそろっていれば、それぞれの食品のNRF9.3を計算して比較できるのですが、一般の食品表示には、NR9とLIM3の栄養素に関する記載がありません。そこで今回「日本栄養士会雑誌」に掲載された文献では、「日本食品標準成分表2015年版」に掲載されている2091食品のうち、解析が可能であった1481食品に関するNRF9.3を算出。それぞれを比較しています。

その結果、カロリーの低さに対して栄養素が詰まっている藻類、野菜類、きのこ類のNRF9.3は、非常に高い数値になっています(文献表3参照)。しかし同じ食品群の中でも、加工方法によってはナトリウムや添加糖が多く使われてLIM3が高くなり、結果的にNRF9.3が低くなった例もあります。例えば藻類の中でも、ひじきや焼きのりのNRF9.3は400~700と高値ですが、塩分の多いカットわかめのNRF9.3は185.7と低くなっています。また、イチゴ(生)のNRF9.3は226.4と高いですが、砂糖を多く使っているイチゴジャムのNRF9.3は、‐9.8でした(文献表4参照)。

このように、栄養プロファイリングを用いることで、食品の質を総合的に比較し、評価することが可能になります。欧米では栄養素のみならず、食品の価格や、環境に対する生産コスト(二酸化炭素排出量など)も考慮し、最も地球環境に優しく、経済的にも質の高い食品とは何かについても検証が重ねられています。日本でも今回の文献が起爆剤となり、栄養プロファイリングという新しい概念が浸透し、われわれの食生活の質が少しでも向上していけばうれしく思います。

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(終わり)

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