競技パフォーマンスUP

Part 90  爆発的なパワーを発揮しろ!

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Part 90  爆発的なパワーを発揮しろ!

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  • 目  的:瞬発力、爆発力を向上させて競技能力を向上させる
  • メリット:スピードの向上、スタートダッシュの強化など

走っているときの動作をイメージしてみよう。このとき、身体を前進させるために使われる筋肉は主に大殿筋やハムストリングとなる。動作としては股関節の伸展や膝関節の屈曲だ。
そのため、大殿筋やハムストリングは「アクセル筋」と呼ばれることがある。
それに対し、前方に脚を伸ばしたり、伸ばした足が地面に着地したりするときには大腿四頭筋が使われる。急激にストップしたり、方向転換したりするときにも大腿四頭筋は使われる。動作としては膝関節の伸展だ。そのため、大腿四頭筋は「ブレーキ筋」と呼ばれることもある。
どちらも重要だが、今回はスピードを向上させ、スタートダッシュなどの強化に役立つ大殿筋とハムストリングの強化方法について紹介していこう。

■大殿筋とハムストリングのための第一選択・・ワイドスタンス・フルスクワット

大殿筋とハムストリングの主な機能は股関節の伸展動作である。そのためこれらの筋群を鍛えるためには、スクワットを行う際に「深く下ろす」フルスクワットで行うことが望ましい。浅く下ろすパーシャルスクワットでは股関節の可動域が十分に得られないからだ。
またスタンスは広めが望ましい。ナロースタンスだと大腿骨が骨盤に当たってしまって深く下ろしにくいのである。ワイドスタンスならその心配がなく、スムーズに深く下ろすことができる。
実際にワイドスタンスとナロースタンスで比較したところ、ワイドスタンスの方が大殿筋への刺激が強くなっている。(※1, ※2)
ではワイドスタンス・フルスクワットにおける動作のポイントを箇条書きで記しておこう。

◇ワイドスタンス・フルスクワットのポイント

  1. 1. かかとに重心を置くこと
  2. 2. 腰を後ろに引きながら「腹を大腿部に近づけるようにして」しゃがんでいくこと
  3. 3. 視線は水平か、やや斜め下に向けるようにすること
  4. 4. シューズはソールが固く、高めのものを選ぶようにすること。
  5. 5. 腹圧が抜けないように注意。締めたベルトを押し返すように力を入れる

<ワイドスタンス・フルスクワット>

キング・オブ・エクササイズと呼ばれるスクワットにも弱点がある。立ち上がる寸前の時点では負荷がほとんどかからないことだ。つまり大殿筋やハムストリング(大腿四頭筋も)の収縮時における負荷が抜けてしまうのである。
そこで追加したいエクササイズが「ヒップスラスト」である。筋電図の測定でスクワットとヒップスラストを比較したところ、大殿筋もハムストリングもヒップスラストのほうが2倍以上強く活動していることが分かっている。(※3)
またフロントスクワットを行った群とヒップスラストを行った群とでスプリントと立ち幅跳び、垂直跳びの記録向上を比較したところ、スプリントと立ち幅跳びにおいてヒップスラスト群のほうが良い成績を収めている。(※4)
ではヒップスラストにおける動作の注意点を箇条書きで記そう。

◇ヒップスラストのポイント

  1. 1. かかとに重心を置いて挙げる
  2. 2. 上体を反らせ過ぎず、一直線になるように心がける
  3. 3. トップでしっかりと大臀筋の収縮を感じ、一瞬だけ止めて絞り込む
  4. 4. 足の位置はトップポジションですねが垂直になる場所に置く
  5. 5. 下ろすときはゆっくりとコントロールしながら下ろす

<ヒップスラスト>

ハムストリングのためのエクササイズとしてはレッグカールが知られているが、ハムストリングの機能は股関節の伸展も含んでいる。
そこでお勧めしたいのが、「ボール・ハムストリングカール」だ。通常のレッグカールはマシンによるエクササイズなので軌道が完全に固定され、モーターユニットの動員数が少なくなる。またマシンのアームの長さが体型に合っていなかったり、カムの形状が悪くて負荷が上手くかからなかったりといったことも、往々にしてあるものである。
しかし、ボール・ハムストリングカールの場合は不安定なボールを使うため、スタビライザーとして多くの筋肉群が働き、モーターユニットの動員も増大する。また動作において股関節の伸展も加わる。そのため通常のレッグカールを超える効果が期待できるのだ。
ではボール・ハムストリングカールのやり方を紹介しよう。

◇ボール・ハムストリングカールのやり方

  1. 1. 仰向けになり、両手は床において身体を固定。臀部を床につけた状態でボールの頂点にかかとを置き、膝を伸ばす
  2. 2. 膝を曲げながらボールを身体に近づけるように巻き込み、同時に臀部を浮かせる
  3. 3. 身体が一直線になるまで持ち上げたら、1秒ほど静止させ、元の位置にゆっくりと戻していく
  4. 4. 慣れてきたら片脚ずつ行ってみる

<ボール・ハムストリングカール>

これらのエクササイズをしっかり行い、大殿筋とハムストリングを強化すれば、これまでにない瞬発力・ダッシュ力を手に入れられるはずだ。ぜひ試してほしい。

【参考文献】

  • 1: Stance width and bar load effects on leg muscle activity during the parallel squat. Med Sci Sports Exerc. 1999 Mar;31(3):428-36.
  • 2: The effect of stance width on the electromyographical activity of eight superficial thigh muscles during back squat with different bar loads. J Strength Cond Res. 2009 Jan;23(1):246-50.
  • 3: A Comparison of Gluteus Maximus, Biceps Femoris, and Vastus Lateralis Electromyographic Activity in the Back Squat and Barbell Hip Thrust Exercises. J Appl Biomech. 2015 Dec;31(6):452-8. doi: 10.1123/jab.2014-0301. Epub 2015 Jul 24.
  • 4: Effects of a Six-Week Hip Thrust vs. Front Squat Resistance Training Program on Performance in Adolescent Males: A Randomized Controlled Trial. J Strength Cond Res. 2017 Apr;31(4):999-1008. doi: 10.1519/JSC.0000000000001510.
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  • 目  的:瞬発力、爆発力を向上させて競技能力を向上させる
  • メリット:スピードの向上、スタートダッシュの強化など

走っているときの動作をイメージしてみよう。このとき、身体を前進させるために使われる筋肉は主に大殿筋やハムストリングとなる。動作としては股関節の伸展や膝関節の屈曲だ。
そのため、大殿筋やハムストリングは「アクセル筋」と呼ばれることがある。
それに対し、前方に脚を伸ばしたり、伸ばした足が地面に着地したりするときには大腿四頭筋が使われる。急激にストップしたり、方向転換したりするときにも大腿四頭筋は使われる。動作としては膝関節の伸展だ。そのため、大腿四頭筋は「ブレーキ筋」と呼ばれることもある。
どちらも重要だが、今回はスピードを向上させ、スタートダッシュなどの強化に役立つ大殿筋とハムストリングの強化方法について紹介していこう。

■大殿筋とハムストリングのための第一選択・・ワイドスタンス・フルスクワット

大殿筋とハムストリングの主な機能は股関節の伸展動作である。そのためこれらの筋群を鍛えるためには、スクワットを行う際に「深く下ろす」フルスクワットで行うことが望ましい。浅く下ろすパーシャルスクワットでは股関節の可動域が十分に得られないからだ。
またスタンスは広めが望ましい。ナロースタンスだと大腿骨が骨盤に当たってしまって深く下ろしにくいのである。ワイドスタンスならその心配がなく、スムーズに深く下ろすことができる。
実際にワイドスタンスとナロースタンスで比較したところ、ワイドスタンスの方が大殿筋への刺激が強くなっている。(※1, ※2)
ではワイドスタンス・フルスクワットにおける動作のポイントを箇条書きで記しておこう。

◇ワイドスタンス・フルスクワットのポイント

  1. 1. かかとに重心を置くこと
  2. 2. 腰を後ろに引きながら「腹を大腿部に近づけるようにして」しゃがんでいくこと
  3. 3. 視線は水平か、やや斜め下に向けるようにすること
  4. 4. シューズはソールが固く、高めのものを選ぶようにすること。
  5. 5. 腹圧が抜けないように注意。締めたベルトを押し返すように力を入れる

<ワイドスタンス・フルスクワット>

キング・オブ・エクササイズと呼ばれるスクワットにも弱点がある。立ち上がる寸前の時点では負荷がほとんどかからないことだ。つまり大殿筋やハムストリング(大腿四頭筋も)の収縮時における負荷が抜けてしまうのである。
そこで追加したいエクササイズが「ヒップスラスト」である。筋電図の測定でスクワットとヒップスラストを比較したところ、大殿筋もハムストリングもヒップスラストのほうが2倍以上強く活動していることが分かっている。(※3)
またフロントスクワットを行った群とヒップスラストを行った群とでスプリントと立ち幅跳び、垂直跳びの記録向上を比較したところ、スプリントと立ち幅跳びにおいてヒップスラスト群のほうが良い成績を収めている。(※4)
ではヒップスラストにおける動作の注意点を箇条書きで記そう。

◇ヒップスラストのポイント

  1. 1. かかとに重心を置いて挙げる
  2. 2. 上体を反らせ過ぎず、一直線になるように心がける
  3. 3. トップでしっかりと大臀筋の収縮を感じ、一瞬だけ止めて絞り込む
  4. 4. 足の位置はトップポジションですねが垂直になる場所に置く
  5. 5. 下ろすときはゆっくりとコントロールしながら下ろす

<ヒップスラスト>

ハムストリングのためのエクササイズとしてはレッグカールが知られているが、ハムストリングの機能は股関節の伸展も含んでいる。
そこでお勧めしたいのが、「ボール・ハムストリングカール」だ。通常のレッグカールはマシンによるエクササイズなので軌道が完全に固定され、モーターユニットの動員数が少なくなる。またマシンのアームの長さが体型に合っていなかったり、カムの形状が悪くて負荷が上手くかからなかったりといったことも、往々にしてあるものである。
しかし、ボール・ハムストリングカールの場合は不安定なボールを使うため、スタビライザーとして多くの筋肉群が働き、モーターユニットの動員も増大する。また動作において股関節の伸展も加わる。そのため通常のレッグカールを超える効果が期待できるのだ。
ではボール・ハムストリングカールのやり方を紹介しよう。

◇ボール・ハムストリングカールのやり方

  1. 1. 仰向けになり、両手は床において身体を固定。臀部を床につけた状態でボールの頂点にかかとを置き、膝を伸ばす
  2. 2. 膝を曲げながらボールを身体に近づけるように巻き込み、同時に臀部を浮かせる
  3. 3. 身体が一直線になるまで持ち上げたら、1秒ほど静止させ、元の位置にゆっくりと戻していく
  4. 4. 慣れてきたら片脚ずつ行ってみる

<ボール・ハムストリングカール>

これらのエクササイズをしっかり行い、大殿筋とハムストリングを強化すれば、これまでにない瞬発力・ダッシュ力を手に入れられるはずだ。ぜひ試してほしい。

【参考文献】

  • 1: Stance width and bar load effects on leg muscle activity during the parallel squat. Med Sci Sports Exerc. 1999 Mar;31(3):428-36.
  • 2: The effect of stance width on the electromyographical activity of eight superficial thigh muscles during back squat with different bar loads. J Strength Cond Res. 2009 Jan;23(1):246-50.
  • 3: A Comparison of Gluteus Maximus, Biceps Femoris, and Vastus Lateralis Electromyographic Activity in the Back Squat and Barbell Hip Thrust Exercises. J Appl Biomech. 2015 Dec;31(6):452-8. doi: 10.1123/jab.2014-0301. Epub 2015 Jul 24.
  • 4: Effects of a Six-Week Hip Thrust vs. Front Squat Resistance Training Program on Performance in Adolescent Males: A Randomized Controlled Trial. J Strength Cond Res. 2017 Apr;31(4):999-1008. doi: 10.1519/JSC.0000000000001510.