競技パフォーマンスUP

アカデミー選手と食べるチカラ‐前編‐

Vol.3 アカデミー選手と食べるチカラ‐前編‐

DESIRE TO EVOLUTION

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アカデミー選手と食べるチカラ‐前編‐

Vol.3 アカデミー選手と食べるチカラ‐前編‐

DNS栄養士・田中初紀が、Team DNSのサッカークラブ「いわきFC」のニュートリション(栄養)サポートについてのあれこれを、赤裸々に(!?)綴ります。かつてチームの中にいたからこそ見えたもの、感じたこと。そして選手達の素顔に触れながら、アスリートのパフォーマンスアップに有益な栄養情報をお伝えしていきます。

いわきFCが目指すアカデミーシステム。

今回は、いわきFCアカデミーの選手(U-18,15,14,13Girls)への食事提供について、お話していきたいと思います。

一般的に、日本のサッカークラブのユースチームは「プロサッカー選手養成スクール」。選手達は厳しいプロの世界と同じようにサッカーに打ち込み、ライバル達と競い、ふるいにかけられながら、トップチームという狭き門を目指していきます。

その点いわきFCアカデミーは、少し考え方が異なります。

いわきFCが目指すアカデミーシステムは、1000人に1人のプロサッカー選手と999人の不合格者を作り出すためのものではありません。ゴールは、選手全員が大きく成長し、それぞれがそれぞれの目標を達成し、幸せになること。アカデミーの役割は、その土台作りを手助けすることです。

そのため、活動内容はサッカーの練習と試合にとどまりません。サッカーを終えた後も社会で活躍するための基礎として、語学や食事・栄養などについても学びます。


2018
年からアカデミーの食事・栄養分野のサポートにも携わらせていただいています。選手達が食への興味・関心を高め、自分自身の身体と向き合い、競技力・人間力を向上させる。その一助になれればと思っています。

■食事のポイント=成長の可能性を最大限に引き出すこと。

ジュニアアスリート達の食事とはどのような内容で、どれぐらいの量を提供すればいいのでしょうか。

アカデミーは立ち上げられて間もないため、参考にすべき過去のデータはありません。私は先輩栄養士の皆さんにご意見いただきながら、まずは走り出し、試行錯誤しながら、選手達に合う形を作り上げていきました。

とはいえ、食事のメニューの一つ一つは決して特別なものではありません。基本の食事、普通の食事をベースとして、スポーツをしている成長期の子ども達に必要な量や組み合わせを探る。そんな、パズルのような感覚でした。

そもそも成長や身体作りの基本は『運動・栄養・休養』のサイクルであることは、トップアスリートもジュニアアスリートも変わりません。このサイクルを構成するそれぞれがとても大切。この3つを正しい理解のもとグルグル回していくことが、子ども達の成長の可能性を最大限に引き出します。


そしてジュニアアスリート達の食事には①生命維持 ②成長 ③競技に取り組むための栄養を補う、という3つの要素があります。そのため、提供する食事でそれらを満たすことを意識します。食事に必要なエネルギー量の参考は「日本人の食事摂取基準(2015年度版)」(当時の最新)(※1)の1217歳男性、女性ともに身体活動レベルⅢを用いました(表1)。

表1.日本人の食事摂取基準:推定エネルギー必要量(kcal/日)より抜粋

推定エネルギー必要量を朝昼夕+補食で補うと仮定し、夕食は800900kcal程度をベースに主食、主菜、副菜、汁物、果物、乳製品と、バランスよく献立組みするよう意識しました。ただ、この時期の子ども達の体格は、同じカテゴリーであっても個々それぞれ。ご飯の量や各自で取る納豆や卵といったアイテムでの、エネルギーやたんぱく質量のコントロールが大きな役割を果たします。

さらにユース(U-18)の食事にはJrアカデミー(U-15,14,13Girls)のメニューに主菜を一つ足し、主菜が2皿ある形にしたり、ご飯の量をプラスする、などの調整を行いました。

【実際の食事】

Jrアカデミー用

ユース用

そんな中、私がアカデミーの選手達の指導だからこそ意識していたことがありました。

後編に続く



田中 初紀

田中 初紀 │ Hazuki Tanaka

栄養士
東京農業大学卒業。2017年株式会社ドーム入社後、サプリメント事業部、ドームアスリートハウスを経て、2020年より株式会社DNS OMO Div兼マーケティングDivに所属。アスリートや健康の保持・増進を目指す方への食事指導のほか、自社ブランドサイトにて、チーム帯同レポートや食事コンテンツに関わる記事執筆を行う。チームサポートではいわきFCを担当。自身も5歳から少林寺拳法に打ち込む現役アスリート。一児の母として、子育てにも奮闘中。

【参考文献】

  • 1.日本人の食事摂取基準(2015年版)
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DNS栄養士・田中初紀が、Team DNSのサッカークラブ「いわきFC」のニュートリション(栄養)サポートについてのあれこれを、赤裸々に(!?)綴ります。かつてチームの中にいたからこそ見えたもの、感じたこと。そして選手達の素顔に触れながら、アスリートのパフォーマンスアップに有益な栄養情報をお伝えしていきます。

いわきFCが目指すアカデミーシステム。

今回は、いわきFCアカデミーの選手(U-18,15,14,13Girls)への食事提供について、お話していきたいと思います。

一般的に、日本のサッカークラブのユースチームは「プロサッカー選手養成スクール」。選手達は厳しいプロの世界と同じようにサッカーに打ち込み、ライバル達と競い、ふるいにかけられながら、トップチームという狭き門を目指していきます。

その点いわきFCアカデミーは、少し考え方が異なります。

いわきFCが目指すアカデミーシステムは、1000人に1人のプロサッカー選手と999人の不合格者を作り出すためのものではありません。ゴールは、選手全員が大きく成長し、それぞれがそれぞれの目標を達成し、幸せになること。アカデミーの役割は、その土台作りを手助けすることです。

そのため、活動内容はサッカーの練習と試合にとどまりません。サッカーを終えた後も社会で活躍するための基礎として、語学や食事・栄養などについても学びます。


2018
年からアカデミーの食事・栄養分野のサポートにも携わらせていただいています。選手達が食への興味・関心を高め、自分自身の身体と向き合い、競技力・人間力を向上させる。その一助になれればと思っています。

■食事のポイント=成長の可能性を最大限に引き出すこと。

ジュニアアスリート達の食事とはどのような内容で、どれぐらいの量を提供すればいいのでしょうか。

アカデミーは立ち上げられて間もないため、参考にすべき過去のデータはありません。私は先輩栄養士の皆さんにご意見いただきながら、まずは走り出し、試行錯誤しながら、選手達に合う形を作り上げていきました。

とはいえ、食事のメニューの一つ一つは決して特別なものではありません。基本の食事、普通の食事をベースとして、スポーツをしている成長期の子ども達に必要な量や組み合わせを探る。そんな、パズルのような感覚でした。

そもそも成長や身体作りの基本は『運動・栄養・休養』のサイクルであることは、トップアスリートもジュニアアスリートも変わりません。このサイクルを構成するそれぞれがとても大切。この3つを正しい理解のもとグルグル回していくことが、子ども達の成長の可能性を最大限に引き出します。


そしてジュニアアスリート達の食事には①生命維持 ②成長 ③競技に取り組むための栄養を補う、という3つの要素があります。そのため、提供する食事でそれらを満たすことを意識します。食事に必要なエネルギー量の参考は「日本人の食事摂取基準(2015年度版)」(当時の最新)(※1)の1217歳男性、女性ともに身体活動レベルⅢを用いました(表1)。

表1.日本人の食事摂取基準:推定エネルギー必要量(kcal/日)より抜粋

推定エネルギー必要量を朝昼夕+補食で補うと仮定し、夕食は800900kcal程度をベースに主食、主菜、副菜、汁物、果物、乳製品と、バランスよく献立組みするよう意識しました。ただ、この時期の子ども達の体格は、同じカテゴリーであっても個々それぞれ。ご飯の量や各自で取る納豆や卵といったアイテムでの、エネルギーやたんぱく質量のコントロールが大きな役割を果たします。

さらにユース(U-18)の食事にはJrアカデミー(U-15,14,13Girls)のメニューに主菜を一つ足し、主菜が2皿ある形にしたり、ご飯の量をプラスする、などの調整を行いました。

【実際の食事】

Jrアカデミー用

ユース用

そんな中、私がアカデミーの選手達の指導だからこそ意識していたことがありました。

後編に続く



田中 初紀

田中 初紀 │ Hazuki Tanaka

栄養士
東京農業大学卒業。2017年株式会社ドーム入社後、サプリメント事業部、ドームアスリートハウスを経て、2020年より株式会社DNS OMO Div兼マーケティングDivに所属。アスリートや健康の保持・増進を目指す方への食事指導のほか、自社ブランドサイトにて、チーム帯同レポートや食事コンテンツに関わる記事執筆を行う。チームサポートではいわきFCを担当。自身も5歳から少林寺拳法に打ち込む現役アスリート。一児の母として、子育てにも奮闘中。

【参考文献】

  • 1.日本人の食事摂取基準(2015年版)
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