競技パフォーマンスUP

日本人よ、もっと鍛えよ~長距離走編 その1 長距離選手こそ、フィジカルトレーニングを重視せよ

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日本人よ、もっと鍛えよ~長距離走編 その1 長距離選手こそ、フィジカルトレーニングを重視せよ

日本人よ、もっと鍛えよ~長距離走編 その1 長距離選手こそ、フィジカルトレーニングを重視せよ

(こちらの記事は2015年2月に公開されました。)

日本の長距離選手のフィジカルはどうなのだろうか?今回は識者の目線から、元短距離日本代表選手、200mのジュニア日本記録保持者(20.29)で、早稲田大学競走部時代には主将も務め、現在はドームの営業本部スポーツマーケティング部に籍を置く大前祐介(当時)に話を聞いた。


■「ズバリ、日本の長距離選手の多くは何も考えていない」

―― フルマラソンを始めとする長距離走もまた、さまざまな体力要素が必要な競技だと思います。多くの日本人選手の身体は正直、貧弱です。そして何より気になるのが、ケガがとても多いことです。

「長距離に関し、僕は言いたいことがたくさんあるんですよ。ズバリ、日本の長距離選手は何も考えていない選手が多いと思います。高校時代は長距離の選手でも、技術練習をしっかりやってフォームを固める。でも、これが大学に入ると、とにかく長い距離をひたすら走ってばかりなんですね。ただ走ればいいと思って、まるで回遊魚みたいに延々とトラックやロードを回っている。そして、ネックが体重維持。僕ら短距離と比べ、彼らのエネルギー消費はすごいです。それなのに体重を増やしたくないから、ご飯をぜんぜん食べられない。そりゃ、走れるわけないですよ。それでガス欠して『ここが痛い』『あそこが痛い』『だから治療に行ってきます』。そんなケースが本当に多い」

―― 長距離選手は短距離選手と比べ体重管理が難しく、いたずらに筋肉をつけてはいけないと考えられているイメージがあります。これは、果たして本当なのでしょうか。

「1歩走ると、体重×3~4倍の負荷が身体にかかります。そして例えばフルマラソンなら、1回のレースで2~3万歩走るわけです。つまり、レースでは身体にとんでもなくきつい負荷がかかります。だから、身体を強くしないといけない。それなのに男子の長距離選手が、体重管理ばかりを気にしている。そんなものを男がやってどうするんだ! きっちり身体を作りなさい! と僕は言いたいです(笑)。そしてフォームも、短距離選手以上に気にしなくてはいけない。そして、できる限り自分に負荷のない状態を作り上げるべきです。ただトラックをぐるぐる回って、与えられたメニューをこなす。それじゃあ、世界なんて無理。それが今の日本の現状だと思います。長距離は積み重ね。ケガをして練習できないのは絶対ダメです。練習を積み重ねていけば、それだけでアドバンテージになるものです。」

―― 例えば、ケガの原因はどんなところにあるのでしょうか。

「自己管理の欠如なのか、栄養に関する知識が足りないのか、トレーニング不足なのか。その理由を探し求めず、ただ痛いと訴えても意味がありません。痛みは自分から発せられたサインです。そこがなぜ痛んだのかを、考えなくてはいけません。そこで『ああ、こういう動作をしていたからかも…。』『こういう生活をしていたからかも』と考えることが大事です。それをせず病院に頼り、間に合わせのような治療をする。それで痛い箇所は多少治るかもしれないけれど、原因は体のひずみですから、結局またケガをする。その繰り返しです。自分の身体の使い方が悪かった結果なんです。走るとは、自分の身体を最大限に使うこと。だから、何かがおかしな状態にあることが負担となって表れる。その積み重ねがケガになるのだと思います」


■「筋肉を段階的に強くしていけば、身体が大きくなっても問題ない」

こういった問題点を理解し、身体作りを行う必要性を痛切に感じているからこそ、入念にフィジカルトレーニングを積む長距離選手もいる。続いて話を聞いたのは、大前と同じ早稲田大競走部出身のある選手。現在実業団チームで10000m、5000mの選手として活躍しながら、ドームアスリートハウスにてトレーニングに励んでいる。

―― 現在ドームアスリートハウスでは、どのようなテーマでトレーニングを積んでいるのですか。

長距離走は体力要素と効率性の両方を追求せねばなりませんが、より効率的に走るためにも、レースの何万歩のうち1歩をとにかく大切にする必要があります。その部分を追求していくと、いいフォームで走り続けるためのフィジカル、筋力が必要になるので、そこをドームアスリートハウスで補っている。そんなイメージです。僕も以前のフィジカルトレーニングは我流。しかも20代中盤までは、それほどやっていなかった。それが年齢を重ねるにつれて、ケガが増えてきた。そして負傷箇所をかばっていると、全体が崩れてくる。その崩れた部分を、昨年からドームアスリートハウスでトレーニングを積んだことで、やっと修正できてきました」

―― 具体的には、どのような負傷をしていたのですか。

「坐骨神経痛から始まり、左足のアキレス腱をずっと痛めていました。その影響で、斜めに走るようなフォームになっていたんです。これは長年の疲労がたまったというよりも、明らかに、身体のバランスの悪さが原因。若いころはケガを1カ所ぐらいしても、違う部分で補える。でも年を取ってくると、いろいろな箇所にガタがくる。そして補えるパーツがなくなり、ごまかしが通じなくなるんです」

―― 競技特性上、身体を大きくしにくい面はありますか。

「確かに僕も、急激に身体を大きくすることには反対です。長距離走向けのトレーニングは、重たいウェイトをガンガン挙げるというよりも、細かな筋肉をしっかり鍛えることが大事。自分が使いやすい部分だけを使ってしまわないよう、走るために必要とされる、いつもおろそかにしている小さな筋肉を意識して動かすことを考えています。例えば内転筋。男性は骨盤が狭いので、力が外に逃げることがありますので、内転筋の強化は必須。あとは腹直筋や腹横筋とか、コアを強くすることも当然、大事です。他の種目の人は筋肉を大きくすることを考えますが、僕は強くするイメージ。トレーニングのおかげで、フォームのバランスがよくなりましたね」

―― トレーニングを積んだ今、以前と比べて筋肉量や体重は増えましたか。

「20歳ぐらいのころと比べ、筋肉量も体重も確実に増えていますね。トレーニングで多少体重が増えても、それに耐えられる筋力があれば、力強く走れる。筋肉を段階的に強くしていけば、身体が大きくなっても問題ないと思っています」


「長距離選手は、体重が増えるのでフィジカルトレーニングをすべきではない」などという迷信は、今すぐ捨て去るべきだ。では、一般のランナーはどうなのだろう。現在、多くのランナーが走ることを楽しんでいるが、栄養摂取に関する知識が十分とはいえないのが現状だ。

※2015年2月時点(取材時)の情報です


大前 祐介
1982年生まれ。本郷高校から早稲田大学へ進学。
在学中はユニバーシアード金メダル(400mリレー)、関東インカレ3冠(100m、200m、400mリレー)。大学卒業後、富士通株式会社陸上部に所属。アジア大会(400mリレー)で銀メダルを獲得。
その後、株式会社ドーム 陸上プロモーション担当になるとともに、陸上部GMとして活動。
自己ベスト100m10秒33、200m20秒29(現日本ジュニア記録)
現役時代はベンチプレス130kg、ハイクリーン130kgを挙上。

 

(その2を読む)




Text:
前田成彦
DESIRE TO EVOLUTION編集長(株式会社ドーム コンテンツ企画部所属)。学生~社会人にてアメリカンフットボールを経験。趣味であるブラジリアン柔術の競技力向上、そして学生時代のベンチプレスMAX超えを目標に奮闘するも、誘惑に負け続ける日々を送る。お気に入りのマッスルメイトはホエイSP。

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(こちらの記事は2015年2月に公開されました。)

日本の長距離選手のフィジカルはどうなのだろうか?今回は識者の目線から、元短距離日本代表選手、200mのジュニア日本記録保持者(20.29)で、早稲田大学競走部時代には主将も務め、現在はドームの営業本部スポーツマーケティング部に籍を置く大前祐介(当時)に話を聞いた。


■「ズバリ、日本の長距離選手の多くは何も考えていない」

―― フルマラソンを始めとする長距離走もまた、さまざまな体力要素が必要な競技だと思います。多くの日本人選手の身体は正直、貧弱です。そして何より気になるのが、ケガがとても多いことです。

「長距離に関し、僕は言いたいことがたくさんあるんですよ。ズバリ、日本の長距離選手は何も考えていない選手が多いと思います。高校時代は長距離の選手でも、技術練習をしっかりやってフォームを固める。でも、これが大学に入ると、とにかく長い距離をひたすら走ってばかりなんですね。ただ走ればいいと思って、まるで回遊魚みたいに延々とトラックやロードを回っている。そして、ネックが体重維持。僕ら短距離と比べ、彼らのエネルギー消費はすごいです。それなのに体重を増やしたくないから、ご飯をぜんぜん食べられない。そりゃ、走れるわけないですよ。それでガス欠して『ここが痛い』『あそこが痛い』『だから治療に行ってきます』。そんなケースが本当に多い」

―― 長距離選手は短距離選手と比べ体重管理が難しく、いたずらに筋肉をつけてはいけないと考えられているイメージがあります。これは、果たして本当なのでしょうか。

「1歩走ると、体重×3~4倍の負荷が身体にかかります。そして例えばフルマラソンなら、1回のレースで2~3万歩走るわけです。つまり、レースでは身体にとんでもなくきつい負荷がかかります。だから、身体を強くしないといけない。それなのに男子の長距離選手が、体重管理ばかりを気にしている。そんなものを男がやってどうするんだ! きっちり身体を作りなさい! と僕は言いたいです(笑)。そしてフォームも、短距離選手以上に気にしなくてはいけない。そして、できる限り自分に負荷のない状態を作り上げるべきです。ただトラックをぐるぐる回って、与えられたメニューをこなす。それじゃあ、世界なんて無理。それが今の日本の現状だと思います。長距離は積み重ね。ケガをして練習できないのは絶対ダメです。練習を積み重ねていけば、それだけでアドバンテージになるものです。」

―― 例えば、ケガの原因はどんなところにあるのでしょうか。

「自己管理の欠如なのか、栄養に関する知識が足りないのか、トレーニング不足なのか。その理由を探し求めず、ただ痛いと訴えても意味がありません。痛みは自分から発せられたサインです。そこがなぜ痛んだのかを、考えなくてはいけません。そこで『ああ、こういう動作をしていたからかも…。』『こういう生活をしていたからかも』と考えることが大事です。それをせず病院に頼り、間に合わせのような治療をする。それで痛い箇所は多少治るかもしれないけれど、原因は体のひずみですから、結局またケガをする。その繰り返しです。自分の身体の使い方が悪かった結果なんです。走るとは、自分の身体を最大限に使うこと。だから、何かがおかしな状態にあることが負担となって表れる。その積み重ねがケガになるのだと思います」


■「筋肉を段階的に強くしていけば、身体が大きくなっても問題ない」

こういった問題点を理解し、身体作りを行う必要性を痛切に感じているからこそ、入念にフィジカルトレーニングを積む長距離選手もいる。続いて話を聞いたのは、大前と同じ早稲田大競走部出身のある選手。現在実業団チームで10000m、5000mの選手として活躍しながら、ドームアスリートハウスにてトレーニングに励んでいる。

―― 現在ドームアスリートハウスでは、どのようなテーマでトレーニングを積んでいるのですか。

長距離走は体力要素と効率性の両方を追求せねばなりませんが、より効率的に走るためにも、レースの何万歩のうち1歩をとにかく大切にする必要があります。その部分を追求していくと、いいフォームで走り続けるためのフィジカル、筋力が必要になるので、そこをドームアスリートハウスで補っている。そんなイメージです。僕も以前のフィジカルトレーニングは我流。しかも20代中盤までは、それほどやっていなかった。それが年齢を重ねるにつれて、ケガが増えてきた。そして負傷箇所をかばっていると、全体が崩れてくる。その崩れた部分を、昨年からドームアスリートハウスでトレーニングを積んだことで、やっと修正できてきました」

―― 具体的には、どのような負傷をしていたのですか。

「坐骨神経痛から始まり、左足のアキレス腱をずっと痛めていました。その影響で、斜めに走るようなフォームになっていたんです。これは長年の疲労がたまったというよりも、明らかに、身体のバランスの悪さが原因。若いころはケガを1カ所ぐらいしても、違う部分で補える。でも年を取ってくると、いろいろな箇所にガタがくる。そして補えるパーツがなくなり、ごまかしが通じなくなるんです」

―― 競技特性上、身体を大きくしにくい面はありますか。

「確かに僕も、急激に身体を大きくすることには反対です。長距離走向けのトレーニングは、重たいウェイトをガンガン挙げるというよりも、細かな筋肉をしっかり鍛えることが大事。自分が使いやすい部分だけを使ってしまわないよう、走るために必要とされる、いつもおろそかにしている小さな筋肉を意識して動かすことを考えています。例えば内転筋。男性は骨盤が狭いので、力が外に逃げることがありますので、内転筋の強化は必須。あとは腹直筋や腹横筋とか、コアを強くすることも当然、大事です。他の種目の人は筋肉を大きくすることを考えますが、僕は強くするイメージ。トレーニングのおかげで、フォームのバランスがよくなりましたね」

―― トレーニングを積んだ今、以前と比べて筋肉量や体重は増えましたか。

「20歳ぐらいのころと比べ、筋肉量も体重も確実に増えていますね。トレーニングで多少体重が増えても、それに耐えられる筋力があれば、力強く走れる。筋肉を段階的に強くしていけば、身体が大きくなっても問題ないと思っています」


「長距離選手は、体重が増えるのでフィジカルトレーニングをすべきではない」などという迷信は、今すぐ捨て去るべきだ。では、一般のランナーはどうなのだろう。現在、多くのランナーが走ることを楽しんでいるが、栄養摂取に関する知識が十分とはいえないのが現状だ。

※2015年2月時点(取材時)の情報です


大前 祐介
1982年生まれ。本郷高校から早稲田大学へ進学。
在学中はユニバーシアード金メダル(400mリレー)、関東インカレ3冠(100m、200m、400mリレー)。大学卒業後、富士通株式会社陸上部に所属。アジア大会(400mリレー)で銀メダルを獲得。
その後、株式会社ドーム 陸上プロモーション担当になるとともに、陸上部GMとして活動。
自己ベスト100m10秒33、200m20秒29(現日本ジュニア記録)
現役時代はベンチプレス130kg、ハイクリーン130kgを挙上。

 

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