競技パフォーマンスUP

もがき苦しみ、考え抜き、一つ一つを積み上げる。圧倒的サイズとパワーで悲願の日本一へ。  関西学院大学ファイターズのトレーニング革命(後編)

もがき苦しみ、考え抜き、一つ一つを積み上げる。
圧倒的サイズとパワーで悲願の日本一へ。
関西学院大学ファイターズのトレーニング革命(後編)

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もがき苦しみ、考え抜き、一つ一つを積み上げる。圧倒的サイズとパワーで悲願の日本一へ。  関西学院大学ファイターズのトレーニング革命(後編)

もがき苦しみ、考え抜き、一つ一つを積み上げる。
圧倒的サイズとパワーで悲願の日本一へ。
関西学院大学ファイターズのトレーニング革命(後編)

史上最多となる甲子園ボウル優勝27回を誇る、名門・関西学院大アメリカンフットボール部ファイターズ。昨年は宿敵・立命館大に敗れ、捲土重来を誓う今年は、身体をより大きくすることにフォーカス。打倒立命館と大学王座奪回、そして社会人チームに勝利しての日本一を目指す。彼らのフィジカルアップへの取り組みについて、大村和輝アシスタントヘッドコーチ、油谷浩之ストレングスコーチに話をうかがった。

(※インタビューは、2016年9月に実施。)


■養ったパワーを、試合でのパフォーマンスへ転化する


大村和輝アシスタントヘッドコーチ

昨年度は優勝を逃したが、2011年度から2014年度まで4年連続で大学日本一に輝いた。その背景にあったのが、ウエイトトレーニングに加えて2012年から注力した体幹トレーニングだった。

「それまではビッグスリーを中心に取り組んでおり、身体はそれなりに大きくなった。ただし、ウエイトトレーニングで作り上げたパワーをスピードへと転化することが、もう一つ思った通りにできていませんでした」(大村)

「当時、私は大学院で体幹トレーニングの共同研究を行っていたのですが、その中で、例えばおもりを持って四肢をいろいろな方向に思い切り振ったり、ジャンプしたり、凹凸のある場所で左右別の動きをしたり、といったことが体幹のパワーを高める、ということがわかってきました。体幹トレーニングといえば、以前、コアスタビライゼーションが流行りましたよね。確かに悪くはないです。でも、あれは力の入れ方を覚えるためのもの。体幹が弱い選手ならば有効ですが、すでに体幹がある程度強い選手をさらに強くする効果は、ほとんど期待できません。


油谷浩之ストレングスコーチ

それよりもアメリカンフットボールの競技特性も考慮し、人間同士で押し合ったり、寝ている相手をひっくり返したりする他、ViPR(丸太を模したゴム製の重り。振り回したりすることで動きの中での筋力発揮を養うことができるといわれている。)やウォーターバッグなどを使ったトレーニングを、時には土のグラウンドに水をまいた滑りやすい状態で行ったりしました。これらのトレーニングが、ウエイトトレーニングで培った力をグラウンドに上手く転化していくには、とても有効だとわかったのです」(油谷)

この体幹トレーニングによって、下半身の筋力が大幅に向上し、試合でのケガが減った。

「非常に激しい練習なので、いわゆる『根性練』と思われがちですが、違います。すべてのトレーニングはデータとエビデンスに基づいており、安全性を最大限に考慮しつつ、ギリギリのポイントを狙うイメージです。身体を最も機能的に大きく成長させるには、身体が悲鳴を上げるギリギリを狙うこと。その『際』の突き詰め方に、トレーナーの腕前が表れます」(油谷)

しかしここ数年、ライバル校もこういったパフォーマンスに転化させるトレーニングに取り組み始め、選手に身体の使い方を意識させるようになってきた。

「それならば僕らは、体幹トレーニングの継続に加え、もう一つ別のことをやらなあかん。そこで考えたのが、ベースとなる身体の大きさを今一度追い求めることでした。

アメリカンフットボール選手のパフォーマンスを三角形で表すと、ウエイトトレーニングで作った身体の大きさは、下の土台部分。ここの面積が広ければ、上に乗るパフォーマンス部分の面積も大きくなる。つまり、三角形がトータルで大きくなるわけです」(油谷)

アメリカンフットボールのパフォーマンスを直接的に左右するといわれるトレーニング種目の一つが、パワークリーン。今年のファイターズの徹底したウエイトトレーニングの成果。その裏づけとして、今年はパワークリーンの数値が飛躍的に上がっているという。

「昨年まで、うちの選手はみんなクリーンが下手でした。こういうファンクショナルな種目は、ビッグスリーなどと比べてスキルフル。そして、クリーンで培ったパワーをアメリカンフットボールでの実際のパフォーマンスに転化させるには、選手本人のイメージが何より大切です。

つまり、クリーンはある程度の数をこなす必要がある。その点、今年は春に身体を大きくできたことでベースの筋力が大幅に上がったので、その分、クリーンをたくさんこなせるようになりました。これは非常に大きいです」(油谷)

■ファイターズはきっと、日本で一番、遠回りしているチーム

ファイターズ出身であり、主将を務めたこともある油谷コーチ。学生達に問題意識を持たせ、自ら考えさせることをよしとするチーム哲学を完全に理解したストレングスコーチの存在は、大きなアドバンテージだ。

「やっぱり母校やし、就任当初はいろいろなことをこちらから指導したかった。でも、それは違うと思い直しました。ただ勝てばいいのなら、入部テストをして部員を絞り、ああせえ、こうせえとすべてこちらから指示すればいい。でも、それは決してしません。なぜならファイターズは学生主体のチームであり、人格形成の場。僕らの仕事は、彼らにヒントや気づきを与えること。それを決して忘れてはいけません。

トレーニングに関しても、僕は『こうでなくてはダメ』とは言いません。あくまで選手自身に考えさせ、こちらはヒントを与えて方向の微修正だけを行う。こちらは答えがわかっている時も、あえて選手に考えさせます。なぜなら自分で気づかないと、人間は成長できませんから。
社会に出れば『ボール捕ってこい』じゃなく『注文取ってこい』です(笑)。問題意識を持ち、気づきを得て、一人前の男として社会に出て、活躍する。勝つことよりも大事なのはそれです。


油谷浩之ストレングスコーチ

そのためには、こちらからすると非効率と思えることでも、必要ならばしなくてはならない。それを考えると、ファイターズはきっと、日本で一番遠回りしているチームでしょう。満足することなく問題点を考え、新しいことに積極的に取り組む。それが伝統です。関学のフットボールをスマートと言って下さる方がおられますが、きっとそういったことを指しているのでしょう。でも実際の取り組みは、回り道の多い泥臭いことだらけです」

ファイターズは現在までに6戦を消化し、全勝をキープ。今年の関西学生リーグの覇権争いもまた、昨年と同じく関学と立命館の2強に絞られた。


大村和輝アシスタントヘッドコーチ

「まだまだミスが多いのが正直なところ。練習で起きているミスが、試合でも出ている。それをいかになくせるか。そこが大きなポイントになるでしょう。立命館さんと戦うリーグ最終戦が大きなヤマになりますし、今年から関西2位のチームも全日本大学アメリカンフットボール選手権に参加できるので、彼らとは2回戦う可能性が高い。確かに、今年の立命さんはずば抜けて強いです。でも、こちらがやるべきことをやれれば、勝負はできる。ぜひ期待して下さい」(大村)

システマティックなウエイトトレーニングで大型化し、チーム力を着実に高めてきた関西学院大学ファイターズ。彼らは再び大学日本一に輝くことができるのか。そして社会人チームに勝ち、日本一を勝ち取ることができるのか。

その運命を分ける立命館大戦は、11月20日にキックオフとなる。

(前編を読む)




Text:
前田成彦
DESIRE TO EVOLUTION編集長(株式会社ドーム コンテンツ企画部所属)。学生~社会人にてアメリカンフットボールを経験。趣味であるブラジリアン柔術の競技力向上、そして学生時代のベンチプレスMAX超えを目標に奮闘するも、誘惑に負け続ける日々を送る。お気に入りのマッスルメイトはホエイSP。

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史上最多となる甲子園ボウル優勝27回を誇る、名門・関西学院大アメリカンフットボール部ファイターズ。昨年は宿敵・立命館大に敗れ、捲土重来を誓う今年は、身体をより大きくすることにフォーカス。打倒立命館と大学王座奪回、そして社会人チームに勝利しての日本一を目指す。彼らのフィジカルアップへの取り組みについて、大村和輝アシスタントヘッドコーチ、油谷浩之ストレングスコーチに話をうかがった。

(※インタビューは、2016年9月に実施。)


■養ったパワーを、試合でのパフォーマンスへ転化する


大村和輝アシスタントヘッドコーチ

昨年度は優勝を逃したが、2011年度から2014年度まで4年連続で大学日本一に輝いた。その背景にあったのが、ウエイトトレーニングに加えて2012年から注力した体幹トレーニングだった。

「それまではビッグスリーを中心に取り組んでおり、身体はそれなりに大きくなった。ただし、ウエイトトレーニングで作り上げたパワーをスピードへと転化することが、もう一つ思った通りにできていませんでした」(大村)

「当時、私は大学院で体幹トレーニングの共同研究を行っていたのですが、その中で、例えばおもりを持って四肢をいろいろな方向に思い切り振ったり、ジャンプしたり、凹凸のある場所で左右別の動きをしたり、といったことが体幹のパワーを高める、ということがわかってきました。体幹トレーニングといえば、以前、コアスタビライゼーションが流行りましたよね。確かに悪くはないです。でも、あれは力の入れ方を覚えるためのもの。体幹が弱い選手ならば有効ですが、すでに体幹がある程度強い選手をさらに強くする効果は、ほとんど期待できません。


油谷浩之ストレングスコーチ

それよりもアメリカンフットボールの競技特性も考慮し、人間同士で押し合ったり、寝ている相手をひっくり返したりする他、ViPR(丸太を模したゴム製の重り。振り回したりすることで動きの中での筋力発揮を養うことができるといわれている。)やウォーターバッグなどを使ったトレーニングを、時には土のグラウンドに水をまいた滑りやすい状態で行ったりしました。これらのトレーニングが、ウエイトトレーニングで培った力をグラウンドに上手く転化していくには、とても有効だとわかったのです」(油谷)

この体幹トレーニングによって、下半身の筋力が大幅に向上し、試合でのケガが減った。

「非常に激しい練習なので、いわゆる『根性練』と思われがちですが、違います。すべてのトレーニングはデータとエビデンスに基づいており、安全性を最大限に考慮しつつ、ギリギリのポイントを狙うイメージです。身体を最も機能的に大きく成長させるには、身体が悲鳴を上げるギリギリを狙うこと。その『際』の突き詰め方に、トレーナーの腕前が表れます」(油谷)

しかしここ数年、ライバル校もこういったパフォーマンスに転化させるトレーニングに取り組み始め、選手に身体の使い方を意識させるようになってきた。

「それならば僕らは、体幹トレーニングの継続に加え、もう一つ別のことをやらなあかん。そこで考えたのが、ベースとなる身体の大きさを今一度追い求めることでした。

アメリカンフットボール選手のパフォーマンスを三角形で表すと、ウエイトトレーニングで作った身体の大きさは、下の土台部分。ここの面積が広ければ、上に乗るパフォーマンス部分の面積も大きくなる。つまり、三角形がトータルで大きくなるわけです」(油谷)

アメリカンフットボールのパフォーマンスを直接的に左右するといわれるトレーニング種目の一つが、パワークリーン。今年のファイターズの徹底したウエイトトレーニングの成果。その裏づけとして、今年はパワークリーンの数値が飛躍的に上がっているという。

「昨年まで、うちの選手はみんなクリーンが下手でした。こういうファンクショナルな種目は、ビッグスリーなどと比べてスキルフル。そして、クリーンで培ったパワーをアメリカンフットボールでの実際のパフォーマンスに転化させるには、選手本人のイメージが何より大切です。

つまり、クリーンはある程度の数をこなす必要がある。その点、今年は春に身体を大きくできたことでベースの筋力が大幅に上がったので、その分、クリーンをたくさんこなせるようになりました。これは非常に大きいです」(油谷)

■ファイターズはきっと、日本で一番、遠回りしているチーム

ファイターズ出身であり、主将を務めたこともある油谷コーチ。学生達に問題意識を持たせ、自ら考えさせることをよしとするチーム哲学を完全に理解したストレングスコーチの存在は、大きなアドバンテージだ。

「やっぱり母校やし、就任当初はいろいろなことをこちらから指導したかった。でも、それは違うと思い直しました。ただ勝てばいいのなら、入部テストをして部員を絞り、ああせえ、こうせえとすべてこちらから指示すればいい。でも、それは決してしません。なぜならファイターズは学生主体のチームであり、人格形成の場。僕らの仕事は、彼らにヒントや気づきを与えること。それを決して忘れてはいけません。

トレーニングに関しても、僕は『こうでなくてはダメ』とは言いません。あくまで選手自身に考えさせ、こちらはヒントを与えて方向の微修正だけを行う。こちらは答えがわかっている時も、あえて選手に考えさせます。なぜなら自分で気づかないと、人間は成長できませんから。
社会に出れば『ボール捕ってこい』じゃなく『注文取ってこい』です(笑)。問題意識を持ち、気づきを得て、一人前の男として社会に出て、活躍する。勝つことよりも大事なのはそれです。


油谷浩之ストレングスコーチ

そのためには、こちらからすると非効率と思えることでも、必要ならばしなくてはならない。それを考えると、ファイターズはきっと、日本で一番遠回りしているチームでしょう。満足することなく問題点を考え、新しいことに積極的に取り組む。それが伝統です。関学のフットボールをスマートと言って下さる方がおられますが、きっとそういったことを指しているのでしょう。でも実際の取り組みは、回り道の多い泥臭いことだらけです」

ファイターズは現在までに6戦を消化し、全勝をキープ。今年の関西学生リーグの覇権争いもまた、昨年と同じく関学と立命館の2強に絞られた。


大村和輝アシスタントヘッドコーチ

「まだまだミスが多いのが正直なところ。練習で起きているミスが、試合でも出ている。それをいかになくせるか。そこが大きなポイントになるでしょう。立命館さんと戦うリーグ最終戦が大きなヤマになりますし、今年から関西2位のチームも全日本大学アメリカンフットボール選手権に参加できるので、彼らとは2回戦う可能性が高い。確かに、今年の立命さんはずば抜けて強いです。でも、こちらがやるべきことをやれれば、勝負はできる。ぜひ期待して下さい」(大村)

システマティックなウエイトトレーニングで大型化し、チーム力を着実に高めてきた関西学院大学ファイターズ。彼らは再び大学日本一に輝くことができるのか。そして社会人チームに勝ち、日本一を勝ち取ることができるのか。

その運命を分ける立命館大戦は、11月20日にキックオフとなる。

(前編を読む)