競技パフォーマンスUP

リスクを冒さぬ退屈な日本のサッカーを、圧倒的なパワーで変革する。 いわきFCが巻き起こすフィジカル革命 ~その5 後編

リスクを冒さぬ退屈な日本のサッカーを、圧倒的なパワーで変革する。
いわきFCが巻き起こすフィジカル革命 ~その5 後編

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リスクを冒さぬ退屈な日本のサッカーを、圧倒的なパワーで変革する。 いわきFCが巻き起こすフィジカル革命 ~その5 後編

リスクを冒さぬ退屈な日本のサッカーを、圧倒的なパワーで変革する。
いわきFCが巻き起こすフィジカル革命 ~その5 後編

6月21日、第97回天皇杯 全日本サッカー選手権大会2回戦。いわきFC対北海道コンサドーレ札幌。いわきFCにとって、J1との公式戦は初めての経験だった。試合はいわきFCが先行し、札幌が追いつく展開となった。

相手のオウンゴールやMF金大生のゴールもあり2対2で終了して延長戦に入ると、いわきFCの「らしさ」が一気に爆発する。選手達の足はいっさい止まらず、98分にPKで、FW平岡将豪、115分にFW菊池将太、そして120分にはFW小野瀬恵亮がゴールを挙げ、5対2で勝利を挙げた。延長で一気に3点を挙げた走力は、まさに圧巻だった。

MF 金 大生
MF 金 大生

FW 平岡 将豪
FW 平岡 将豪

FW 菊池 将太
FW 菊池 将太

FW 小野瀬 恵亮
FW 小野瀬 恵亮

MF 金 大生
MF 金 大生

FW 平岡 将豪
FW 平岡 将豪

FW 菊池 将太
FW 菊池 将太

FW 小野瀬 恵亮
FW 小野瀬 恵亮



「中途半端なスキルは、フィジカルでねじ伏せられる」

今回の勝利で、チームスタッフはそれを確信した。ハードにコンタクトしながら最後まで走り続ける旺盛なフィジカル。今シーズン、彼らはいかにそれを獲得し、J1クラブ相手の見事な勝利へとつなげていったのか。

■筋肉量と走力、まだまだ伸ばせるはず。

日本のサッカーのフィジカルスタンダードを変える。そんな強い思いを掲げて立ち上がったいわきFCの快挙。順風満帆に見える歩みの裏には、実は多くの試行錯誤がある。

チームは昨年「日本のフィジカルスタンダードを変える~魂の息吹くフットボール~」というスローガンを掲げ、外国人監督とともにスタート。快調に勝利を重ねていった。しかし振り返ると、フィジカルについては反省点が多々あった。『日本のサッカーのフィジカルスタンダードを変える』という言葉ばかりが先行し『フィジカルとは何なのか』という共通理解が選手とスタッフ間で深まらぬまま、チーム作りが進んでしまっていたのだ。

その反省のもと、2017年シーズンのスタートに当たり、あらためてフィジカルとは『パワー=ストレングス(筋力)×走力』を基にしたものと再定義。そして選手達のフィジカルを骨格筋量と走行距離のデータで検証した結果、まだまだ向上の余地があることがわかった。大倉智総監督は語る。

大倉 智 総監督
大倉 智 総監督

大倉 智 総監督
大倉 智 総監督

「昨年、選手達はしっかりと筋力トレーニングに取り組み、その結果、身体は明らかに大きくなりました。平均体重は大幅にアップし、コンタクトも間違いなく強くなった。でも実際に選手の骨格筋量を測定してみると、筋肉量が期待していたほど増えていなかったし、体脂肪率も思ったほど下がっていなかった。

走力についても、期待した伸びはありませんでした。今年の練習試合2ゲームでGPSトラッキングシステムを試験的に使い、走行距離を計測してみたのですが、例えばMF久永翼の走行距離は13㎞。これはチームでは多いですが、チームの平均値はJ1のチームと比べるとまだまだ低い。

『魂の息吹くフットボール』とは、常に走り続けることが前提。『ここはエネルギーをたくわえておけ』とか『ここは出ず、バランスを取れ』という省エネのサッカーではありません。90分間、例えリスクを背負ってでも、前へ前へと勇敢に出て戦うサッカーです。その実現のためには、絶えずスプリントを繰り返し、足を止めずに走り続ける必要がある。

昨年はチームを感覚的に見ていた部分がありましたが、今年はクラブハウスの完成などもあり、全体をしっかり数字で管理できるようになりました。それではっきりわかったことが、昨年は相手がそれほど強くないので勝てていたのであり、目指している『魂の息吹くフットボール』はまだまだできていない、ということ。その現実が、数字ではっきり見えたことは大きかったです」

■遺伝子検査の結果により、選手を3タイプに分ける。

今年、チームは順天堂大のスポーツドクター・齋田良知先生の提言により、選手全員の遺伝子検査を行った。その結果からも、多くの課題が見えてきた。

鈴木 拓哉トレーナー
鈴木 拓哉トレーナー

鈴木 拓哉 トレーナー
鈴木 拓哉 トレーナー

遺伝子検査を行ったことには明確な理由があった。昨シーズンは年間を通じてフィジカルトレーニングを行ってきたにも関わらず、骨格筋量が思うように上がっていない選手がいた。その理由を探っていくうちに、選手一人一人の身体の個別性をもう少し考慮してトレーニングメニューを組み立てた方がいいのではないか、という考えに至ったのだ。

ドームアスリートハウスの鈴木拓哉トレーナーは語る。

「昨年は年間を通じて、全員に同じボリュームと強度のトレーニングをさせていましたが、選手の体質は遺伝子によって先天的に異なる部分が多くあり、選手それぞれの個別性に応じたトレーニングメニューを与えていく方針に変更しました。遺伝子検査の結果に基づき、全26選手の体質をRR(パワー系:8名)、RX(中間系:12名)、XX(持久系:6名)の3パターンに分け、トレーニングメニューをパターン別に調整。今回、骨格筋量の増加が少なかった選手には持久系タイプが数人いたので、彼らはウエイトトレーニングで扱う重量を減らし、代わりにレップ数を上げるなどを行ってみました。

トレーニングトレーニング

骨格筋量の増減には遺伝子の他にもさまざまな理由があると思うのですが、まずはやってみようということで、この3パターンの体質に合わせたメニューを与えて4カ月ほどトレーニングしてみました。すると、全員ではなかったのですが、昨年1年間で骨格筋量が伸びていなかった選手の数値が、4カ月で平均0.6~0.7㎏増えた。例えばDF古山瑛翔は昨年ほとんど骨格筋量の伸びがなかったのですが、トレーニングを変えてみたところ、たった1カ月で骨格筋量が1㎏アップしました。チーム平均はそれほど上がらなかったのですが、明らかに伸びた選手がいた。これは驚きの成果でした」

また血液検査の結果からは、選手それぞれにどの栄養素が足りていて、どの栄養素が足りていないのかが明確になった。

「例えばFW吉田知樹の血液を調べたところ、鉄分が明らかに足りなかった。彼は70分以降、動きがガクッと落ちることがあったのですが、その理由が見えてきた。他にも、総たんぱく質量が足りない選手がいたり…。

大倉 智 総監督
大倉 智 総監督

大倉 智 総監督
大倉 智 総監督

もちろん、食べるタイミングや体質によってもたんぱく質の吸収具合や消化スピードは異なりますし、練習がオフの日の食生活は管理できておらず、血液検査の結果自体、前日の食事に大きく左右されます。そして選手それぞれの体質によって、必要な栄養素も微妙に異なります。そして彼らが普段の食事を含め、本当にちゃんと食べているのかを洗い直す必要性を感じました」(鈴木)

「選手には毎食、食べたものを写真に撮って送らせているのですが、それを見ると、食事を残したり、食事中に炭酸飲料を飲んだり、オフの日に菓子パンやファストフードを食べていたりと、まだまだ意識が低い。そこで、抜き打ちで栄養素に関するテストをしてみたところ、やはり点数が思わしくなかった。こちらとしてはきちんと食事とサプリメントを摂らせてきたつもりですが、栄養管理を徹底し切れていなかったことが、はっきりとわかりました。

選手は練習のある日は朝・昼・晩と、グラウンドのあるDIB(ドームいわきベース)で食事を摂ります。それをすべてきちんと食べているか、そして週に1日のオフに、いつ何をどれぐらい食べているかなど、24時間365日の食生活をすべて管理することは不可能です。われわれがいくら環境を整えても、選手自身にしっかりとした自覚と知識がなくては、やはり意味がありません。そこで、今一度こちらですべてをコントロールし、選手それぞれに栄養摂取の重要性をリマインドし、自覚を持たせながら、個人にとって必要な食事とサプリメントを摂らせるよう、プランニングしていきます」(大倉)

■対策されても、そこを突き抜けたい。

上記からわかる通り、いわきFCはまだまだ発展途上のチームである。そして今後も悪い点は改善し、よい点は伸ばす。さまざまな試行錯誤を重ねながら、よりよいチームへと成長していくつもりだ。田村雄三監督は語る。

田村 雄三 監督
田村 雄三 監督

田村 雄三 監督
田村 雄三 監督

「1年目だった昨年は、公営のグラウンドを点々として、毎日トレーニング器具を持ち運びながら練習していました。そして、何もないサッカー選手にいわきFCのあるべき姿を教え、トレーニングを習慣化させ、ストレングストレーニングをライフスタイルに組み込むことがファーストミッションでした。

でも、今年はまったく違う。グラウンドとトレーニングジムが完成し、クラブハウスがオープンしたことで、環境は大きく進化。トレーニング効率は大幅にアップし、選手達はどんどんたくましくなっている。試合中のスプリント回数は明らかに増え、どの選手も、倒されてもすぐに立ち上がって走る。その点は、誰が見ても明らかに変わりました」

開催地について物議を醸した天皇杯3回戦・清水エスパルス戦は、7月12日にIAIスタジアム日本平で開催。そして3日後の「いわきドリームチャレンジ2017」では、全日本大学選抜との一戦が待っている。そして秋には、昨年ベスト8に終わった全国社会人サッカー選手権大会という大きなヤマ場を迎える。

「札幌戦に続き、選手達には最後まで足を止めることなく堂々と戦い続けてほしいと思います。また全日本大学選抜との一戦は、同年代の選手達との力量差を測る貴重な機会になるでしょう。

そして全国社会人サッカー選手権。この大会では、間違いなく多くのチームからマークされます。どのチームもきっと僕らの弱点を探し『勝てばいい』とばかりに、そこを突いてくるでしょう。でも、僕らは自分達の戦い方を放棄することは決してありません。例え対策されても、そこを突き抜けてやりたい。そして『こいつらフィジカルすごいし、走るし、すごい勢いでゴールに向かってくる。これはダメだ。いわきFCは強い…』と思わせたい。確かにこの大会は、ベスト4以上に入るとJFLへの飛び級昇格があります。でも、そこで勝つための手を練るつもりはまったくありません。いつも通りの戦い方で臨みます」

いわきFCが目指すのはJ1のチームに勝つことではない。もっと言えば、Jリーグへの昇格ですらない。目標はあくまで「いわき市を東北一の都市にする」こと。そのためのベストな手段を探しながら、彼らの戦いは続いていく。

いわきFC

(前編を読む)
(その6を読む)

 

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6月21日、第97回天皇杯 全日本サッカー選手権大会2回戦。いわきFC対北海道コンサドーレ札幌。いわきFCにとって、J1との公式戦は初めての経験だった。試合はいわきFCが先行し、札幌が追いつく展開となった。

相手のオウンゴールやMF金大生のゴールもあり2対2で終了して延長戦に入ると、いわきFCの「らしさ」が一気に爆発する。選手達の足はいっさい止まらず、98分にPKで、FW平岡将豪、115分にFW菊池将太、そして120分にはFW小野瀬恵亮がゴールを挙げ、5対2で勝利を挙げた。延長で一気に3点を挙げた走力は、まさに圧巻だった。

MF 金 大生
MF 金 大生

FW 平岡 将豪
FW 平岡 将豪

FW 菊池 将太
FW 菊池 将太

FW 小野瀬 恵亮
FW 小野瀬 恵亮

MF 金 大生
MF 金 大生

FW 平岡 将豪
FW 平岡 将豪

FW 菊池 将太
FW 菊池 将太

FW 小野瀬 恵亮
FW 小野瀬 恵亮



「中途半端なスキルは、フィジカルでねじ伏せられる」

今回の勝利で、チームスタッフはそれを確信した。ハードにコンタクトしながら最後まで走り続ける旺盛なフィジカル。今シーズン、彼らはいかにそれを獲得し、J1クラブ相手の見事な勝利へとつなげていったのか。

■筋肉量と走力、まだまだ伸ばせるはず。

日本のサッカーのフィジカルスタンダードを変える。そんな強い思いを掲げて立ち上がったいわきFCの快挙。順風満帆に見える歩みの裏には、実は多くの試行錯誤がある。

チームは昨年「日本のフィジカルスタンダードを変える~魂の息吹くフットボール~」というスローガンを掲げ、外国人監督とともにスタート。快調に勝利を重ねていった。しかし振り返ると、フィジカルについては反省点が多々あった。『日本のサッカーのフィジカルスタンダードを変える』という言葉ばかりが先行し『フィジカルとは何なのか』という共通理解が選手とスタッフ間で深まらぬまま、チーム作りが進んでしまっていたのだ。

その反省のもと、2017年シーズンのスタートに当たり、あらためてフィジカルとは『パワー=ストレングス(筋力)×走力』を基にしたものと再定義。そして選手達のフィジカルを骨格筋量と走行距離のデータで検証した結果、まだまだ向上の余地があることがわかった。大倉智総監督は語る。

大倉 智 総監督
大倉 智 総監督

大倉 智 総監督
大倉 智 総監督

「昨年、選手達はしっかりと筋力トレーニングに取り組み、その結果、身体は明らかに大きくなりました。平均体重は大幅にアップし、コンタクトも間違いなく強くなった。でも実際に選手の骨格筋量を測定してみると、筋肉量が期待していたほど増えていなかったし、体脂肪率も思ったほど下がっていなかった。

走力についても、期待した伸びはありませんでした。今年の練習試合2ゲームでGPSトラッキングシステムを試験的に使い、走行距離を計測してみたのですが、例えばMF久永翼の走行距離は13㎞。これはチームでは多いですが、チームの平均値はJ1のチームと比べるとまだまだ低い。

『魂の息吹くフットボール』とは、常に走り続けることが前提。『ここはエネルギーをたくわえておけ』とか『ここは出ず、バランスを取れ』という省エネのサッカーではありません。90分間、例えリスクを背負ってでも、前へ前へと勇敢に出て戦うサッカーです。その実現のためには、絶えずスプリントを繰り返し、足を止めずに走り続ける必要がある。

昨年はチームを感覚的に見ていた部分がありましたが、今年はクラブハウスの完成などもあり、全体をしっかり数字で管理できるようになりました。それではっきりわかったことが、昨年は相手がそれほど強くないので勝てていたのであり、目指している『魂の息吹くフットボール』はまだまだできていない、ということ。その現実が、数字ではっきり見えたことは大きかったです」

■遺伝子検査の結果により、選手を3タイプに分ける。

今年、チームは順天堂大のスポーツドクター・齋田良知先生の提言により、選手全員の遺伝子検査を行った。その結果からも、多くの課題が見えてきた。

鈴木 拓哉トレーナー
鈴木 拓哉トレーナー

鈴木 拓哉 トレーナー
鈴木 拓哉 トレーナー

遺伝子検査を行ったことには明確な理由があった。昨シーズンは年間を通じてフィジカルトレーニングを行ってきたにも関わらず、骨格筋量が思うように上がっていない選手がいた。その理由を探っていくうちに、選手一人一人の身体の個別性をもう少し考慮してトレーニングメニューを組み立てた方がいいのではないか、という考えに至ったのだ。

ドームアスリートハウスの鈴木拓哉トレーナーは語る。

「昨年は年間を通じて、全員に同じボリュームと強度のトレーニングをさせていましたが、選手の体質は遺伝子によって先天的に異なる部分が多くあり、選手それぞれの個別性に応じたトレーニングメニューを与えていく方針に変更しました。遺伝子検査の結果に基づき、全26選手の体質をRR(パワー系:8名)、RX(中間系:12名)、XX(持久系:6名)の3パターンに分け、トレーニングメニューをパターン別に調整。今回、骨格筋量の増加が少なかった選手には持久系タイプが数人いたので、彼らはウエイトトレーニングで扱う重量を減らし、代わりにレップ数を上げるなどを行ってみました。

トレーニングトレーニング

骨格筋量の増減には遺伝子の他にもさまざまな理由があると思うのですが、まずはやってみようということで、この3パターンの体質に合わせたメニューを与えて4カ月ほどトレーニングしてみました。すると、全員ではなかったのですが、昨年1年間で骨格筋量が伸びていなかった選手の数値が、4カ月で平均0.6~0.7㎏増えた。例えばDF古山瑛翔は昨年ほとんど骨格筋量の伸びがなかったのですが、トレーニングを変えてみたところ、たった1カ月で骨格筋量が1㎏アップしました。チーム平均はそれほど上がらなかったのですが、明らかに伸びた選手がいた。これは驚きの成果でした」

また血液検査の結果からは、選手それぞれにどの栄養素が足りていて、どの栄養素が足りていないのかが明確になった。

「例えばFW吉田知樹の血液を調べたところ、鉄分が明らかに足りなかった。彼は70分以降、動きがガクッと落ちることがあったのですが、その理由が見えてきた。他にも、総たんぱく質量が足りない選手がいたり…。

大倉 智 総監督
大倉 智 総監督

大倉 智 総監督
大倉 智 総監督

もちろん、食べるタイミングや体質によってもたんぱく質の吸収具合や消化スピードは異なりますし、練習がオフの日の食生活は管理できておらず、血液検査の結果自体、前日の食事に大きく左右されます。そして選手それぞれの体質によって、必要な栄養素も微妙に異なります。そして彼らが普段の食事を含め、本当にちゃんと食べているのかを洗い直す必要性を感じました」(鈴木)

「選手には毎食、食べたものを写真に撮って送らせているのですが、それを見ると、食事を残したり、食事中に炭酸飲料を飲んだり、オフの日に菓子パンやファストフードを食べていたりと、まだまだ意識が低い。そこで、抜き打ちで栄養素に関するテストをしてみたところ、やはり点数が思わしくなかった。こちらとしてはきちんと食事とサプリメントを摂らせてきたつもりですが、栄養管理を徹底し切れていなかったことが、はっきりとわかりました。

選手は練習のある日は朝・昼・晩と、グラウンドのあるDIB(ドームいわきベース)で食事を摂ります。それをすべてきちんと食べているか、そして週に1日のオフに、いつ何をどれぐらい食べているかなど、24時間365日の食生活をすべて管理することは不可能です。われわれがいくら環境を整えても、選手自身にしっかりとした自覚と知識がなくては、やはり意味がありません。そこで、今一度こちらですべてをコントロールし、選手それぞれに栄養摂取の重要性をリマインドし、自覚を持たせながら、個人にとって必要な食事とサプリメントを摂らせるよう、プランニングしていきます」(大倉)

■対策されても、そこを突き抜けたい。

上記からわかる通り、いわきFCはまだまだ発展途上のチームである。そして今後も悪い点は改善し、よい点は伸ばす。さまざまな試行錯誤を重ねながら、よりよいチームへと成長していくつもりだ。田村雄三監督は語る。

田村 雄三 監督
田村 雄三 監督

田村 雄三 監督
田村 雄三 監督

「1年目だった昨年は、公営のグラウンドを点々として、毎日トレーニング器具を持ち運びながら練習していました。そして、何もないサッカー選手にいわきFCのあるべき姿を教え、トレーニングを習慣化させ、ストレングストレーニングをライフスタイルに組み込むことがファーストミッションでした。

でも、今年はまったく違う。グラウンドとトレーニングジムが完成し、クラブハウスがオープンしたことで、環境は大きく進化。トレーニング効率は大幅にアップし、選手達はどんどんたくましくなっている。試合中のスプリント回数は明らかに増え、どの選手も、倒されてもすぐに立ち上がって走る。その点は、誰が見ても明らかに変わりました」

開催地について物議を醸した天皇杯3回戦・清水エスパルス戦は、7月12日にIAIスタジアム日本平で開催。そして3日後の「いわきドリームチャレンジ2017」では、全日本大学選抜との一戦が待っている。そして秋には、昨年ベスト8に終わった全国社会人サッカー選手権大会という大きなヤマ場を迎える。

「札幌戦に続き、選手達には最後まで足を止めることなく堂々と戦い続けてほしいと思います。また全日本大学選抜との一戦は、同年代の選手達との力量差を測る貴重な機会になるでしょう。

そして全国社会人サッカー選手権。この大会では、間違いなく多くのチームからマークされます。どのチームもきっと僕らの弱点を探し『勝てばいい』とばかりに、そこを突いてくるでしょう。でも、僕らは自分達の戦い方を放棄することは決してありません。例え対策されても、そこを突き抜けてやりたい。そして『こいつらフィジカルすごいし、走るし、すごい勢いでゴールに向かってくる。これはダメだ。いわきFCは強い…』と思わせたい。確かにこの大会は、ベスト4以上に入るとJFLへの飛び級昇格があります。でも、そこで勝つための手を練るつもりはまったくありません。いつも通りの戦い方で臨みます」

いわきFCが目指すのはJ1のチームに勝つことではない。もっと言えば、Jリーグへの昇格ですらない。目標はあくまで「いわき市を東北一の都市にする」こと。そのためのベストな手段を探しながら、彼らの戦いは続いていく。

いわきFC

(前編を読む)
(その6を読む)

 

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