競技パフォーマンスUP

リスクを冒さぬ退屈な日本のサッカーを、圧倒的なパワーで変革する。 いわきFCが巻き起こすフィジカル革命 ~その9 前編

リスクを冒さぬ退屈な日本のサッカーを、圧倒的なパワーで変革する。
いわきFCが巻き起こすフィジカル革命 ~その9 前編

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リスクを冒さぬ退屈な日本のサッカーを、圧倒的なパワーで変革する。 いわきFCが巻き起こすフィジカル革命 ~その9 前編

リスクを冒さぬ退屈な日本のサッカーを、圧倒的なパワーで変革する。
いわきFCが巻き起こすフィジカル革命 ~その9 前編

チーム創設2年目となった2017年。いわきFCは天皇杯でJ1所属チームを破り、福島県1部リーグを圧倒的な強さで優勝し、東北社会人2部南リーグに昇格。またトレーニングジム(ドームアスリートハウス)と商業施設を備えたクラブハウス「いわきFCパーク」が完成し、万全の体制を整えた。

そして3年目となる今年。掲げた目標は「日本一のスポーツチーム」。東北社会人2部南リーグ所属ではあるが、まずは日本でナンバーワンの環境を作り上げる。いわきFCパーク、いわきFCフィールドに加え、IT技術を搭載した分析ソフトの採用や選手の食事環境の整備などにより、日本一のスポーツチームを目指していくのだ。
掲げた目標の達成。そのためには何が必要なのか。いわきFCの2018年の展望について、大倉智総監督、田村雄三監督、そしてFW平岡将豪、MF久永翼の2選手に話を聞いた。

■止まらない・倒れない・痛がらない。

2月8日~10日にハワイで行われた「パシフィック・リムカップ2018」。米国MLS(メジャーリーグサッカー)からコロンバス・クルーSC、バンクーバー・ホワイトキャップスFC、日本のJリーグから北海道コンサドーレ札幌、そして東北社会人2部リーグからいわきFCが参戦した。

いわきFCは初戦、バンクーバーに0対1で惜敗。2戦目はコロンバスと打ち合いを繰り広げるも、3対5で敗れた。結果は2戦2敗で4チーム中4位。しかし、チームは単なる勝ち負けでは測ることのできない、大きな自信を得た。

大型で上背に勝り、各国代表選手を多数擁するMLSの2チーム。選手達はまったく臆することなく身体をぶつけ、幾度となく相手選手を跳ね飛ばし、球際の競り合いや走力でもまったく引けを 取らなかった。鍛え上げたフィジカルを前面に押し出して真っ向勝負を繰り広げ、これまでの取り組みの正しさ、そして、日本のサッカー選手がパワーで世界と互角に渡り合える大きな可能性を証明してみせた。今シーズン最初の山場であったパシフィック・リムカップを終え、株式会社いわきスポーツクラブ代表取締役兼いわきFC総監督・大倉智は語る。

大倉 智 総監督
大倉 智 総監督

「今回確信できたのは、東北社会人2部、すなわち上から数えれば”6部”相当のいわきFCでも、正しいストレングストレーニングを積めば、世界と十分戦えるということ。MLSの2チームのレベルは非常に高かったですが、選手達はそれほど緊張することもなく、『普段から鍛えているストレングスを試す絶好の機会だ』とばかりに、いつも通り堂々と、勇敢に戦いました。見ているこちらがびっくりするぐらい、普通の態度で臨んでいましたね。『フィジカルコンタクトでは負けない』という自信が選手達からみなぎっていることが、見ていてわかりました」

大倉 智 総監大倉 智 総監

結果こそ最下位。だが2試合とも、スタンドからの大きな拍手と、多くの海外のメディアからの高い評価を得た。特にフィジカルについては、あらためて自信を深める結果になった。正しいストレングストレーニングに取り組めば、上背で勝る相手にも十分、競り勝てる。それが選手達の自信となり、アグレッシブなプレーにつながる。そして彼らの戦う姿勢が観客に伝わり、スタジアムに熱狂が生まれる。チームはその好循環を確信した。

「そして痛感したことがあります。MLSのチームとアグレッシブな試合をしてからあらためてJリーグを見ると、正直、面白くない。なぜなら積極的にボールを奪おうとしないし、少し相手と接触しただけで倒れ、ファールをアピールする。そんな姿を見ていると残念な気持ちになります。

MLSの選手は激しくコンタクトされても何も言いませんし、審判もいちいち笛など吹きません。ウチも日ごろから『ファールされても倒れるな』と言っています。いわきFCは『止まらない・倒れない・痛がらない』。ふっ飛ばされても、やられた選手が悪い。

Jリーグはコンタクトが少ないので、審判も、たまに激しいプレーがあると笛を吹きたくなるのはわかります。でも、本当にこのままでいいのでしょうか? パシフィック・リムカップを終えてチームのホームページにも書きましたが、日本の選手はヨーロッパのチームに移籍し、激しい身体のぶつけ合いを体験するたびに『世界ではこれが普通。こういう激しいリーグでやりたかったし、楽しい』と言います。じゃあ、Jリーグって何? それが素直な思いです。この現状は審判、選手、指導者それぞれに問題がある。

ですから、Jリーグという小さな枠組みに固執することはないと思っています。もっと大きな目線を持ち、パシフィック・リム、すなわち環太平洋という未開拓のマーケットも意識しながら、チームを強化していきます」

昨年から訴えているように、いわきFCの野望は「Jリーグ昇格」という小さなスケールで語られるべきものではない。そのスタンスは2018年も不変だ。

■今年のテーマは「自己実現型」。

チーム創設2年目となった2017年。6月にトレーニングジムを備えたクラブハウス「いわきFCパーク」が完成。選手は午前はグラウンドでの練習とストレングストレーニングに取り組み、午後はDIB(ドームいわきベース)で業務をこなす。メディカルにおいては医療機関と綿密に連携。負傷対応のみならず遺伝子検査なども行い、実現したいサッカーから逆算した理想のフィジカルとコンディション作りをサポート。そして栄養バランスを考慮し、多くのたんぱく質を摂れる食事を1日3回、DIB内のDNSパワーカフェで提供する。
そんな理想のサイクルが構築され、いわきFCの体制は今や、J1チームをも軽く凌駕するレベルに達している。

結果、昨年は天皇杯福島県予選でJ3所属の福島ユナイテッドFCを、全国大会2回戦でJ1所属の北海道コンサドーレ札幌を撃破。さらに、チームは福島県内外から多くのスポンサーを獲得。県リーグ所属としては異例のスポンサー収入を記録し、ソーシャルメディアのフォロワー数はJ2中位レベルの数字となった。そして、商業施設を併設したいわきFCパークへの来場者数は延べ22万人に達した。

その反面、天皇杯と並ぶ大きな目標であり、JFL(日本フットボールリーグ)への飛び級昇格を狙って挑んだ「全国社会人サッカー選手権大会」では、持っている力を出せぬまま2回戦敗退。大会を勝ち抜き、JFLに昇格するだけの地力は十分あったにもかかわらず、なぜ結果が出なかったのか。チームはその反省を込め、2018年は「自己実現型」というテーマを掲げた。

「自分で考えて、自分で達成し、自らチームに貢献する。自立した人間として、それぞれが自分自身のやるべきことをしっかりやり、理想を実現する。それができないと、チームはこれ以上強くならない。そんな事実を、昨年の負けによって突きつけられました。
選手達はサッカーをしながら毎日、物流倉庫で働きます。それは当たり前のこと。その上で、もっとサッカーが上手くなる。仕事を言い訳にせず、言われたことだけをするのでもなく、自分で考えて行動し、チームに貢献する。仕事をするのも当たり前、クラブハウスをきれいに掃除するのも当たり前。やるべきことをやった上で、もっと個としてサッカーに向き合ってほしいと思います」

■”仲良し軍団”から”戦う集団”へ。

また今年より、選手の契約形態が一部変更となった。FW平岡将豪がプロ契約を結び、ツェーゲン金沢からのレンタル選手であるDF榎本滉大、ブラジル人FWルーカス・マセドとともに、プロとして活動していく。彼らは好待遇と引き換えに、試合で勝敗を左右するプレーをして初めて評価されるという厳しい立場に置かれた。そのため、クリアせねばならぬハードルの高さは他のセミプロ選手とは異なる。そんな状況の中で今年、自ら立候補して選手会長になったFW平岡は語る。

平岡 将豪 選手
平岡 将豪 選手

「生活は大きく変わりました。自由な時間が増えた分は、主にランニングや筋トレ、睡眠などのコンディション調整に充てています。身体が軽い分、今後さらに負荷をかけていけると思います。
そして、今年はプレースタイルを変えていきます。実は僕には、これといった武器がない。今年ははっきりとした武器を作り、新しい自分を見つけていきたい。
以前は前で駆け引きをして相手のディフェンスの裏を取る”使われる”選手でした。でも昨年から徐々に”使う”シチュエーションが増えてきた。主にトップ下として起用されている分、役割が多彩になって難しい面がある。プレッシャーは以前よりもずっと大きいですが、今までやらなかったプレーにも挑戦し、自分の幅を広げて成長していきたい。試合で違いを見せて、結果を出す。そして、チームを引っ張る立場としても頑張りたい」

平岡 将豪 選手平岡 将豪 選手


大きく意識が変わったのはプロ選手だけではない。3年目のMF久永翼は今年から早い時間にグラウンドに来てランニングするなど、危機感を露わにしている。

久永 翼 選手
久永 翼 選手

「昨年の全社は、僕がPKを外して負けました。このままでは絶対に終われないし、必ずやり返す。今年はその気持ちを持って、毎日の練習に取り組んでいます。僕は今年25歳。サッカー選手としては、決して若手と言えない。同世代の元チームメイトはJリーグで主力として活躍していますし、今年は勝負の年。これまで以上にアグレッシブにプレーしたいです。

僕ができるのは、守備でしっかりボールを奪って攻撃につなぐこと。特に、ゲーム全体を見る力を高めていきたい。本能でプレーするだけじゃなく、考えてボールをもらい、展開を作っていきたい。そのためには、もっとイメージを高めることです」

久永 翼 選手久永 翼 選手


今年に入ってチームに起こりつつある変化。変わったのは平岡や久永だけではない。早出で走る選手、仕事後に自主的にボールを蹴り、筋力トレーニングに励む選手…彼らの姿勢はよりプロフェッショナルなものとなり、練習でも声がよく出て活気が増している。田村雄三監督は語る。

田村 雄三 監督
田村 雄三 監督

「昨年まではある意味”仲良し軍団”。でも今年は”戦う集団”になりつつあります。なぜそのような変化が起こったかというと、昨年の全社での負けと、用意していただいた最高の環境があるから。環境が人を育てることを痛感しています。

これだけの設備と体制を作っていただいたということは、結果を出すしかありません。スタッフが最高の準備をする代わりに、選手達には逃げ道も、『やる』以外の言い訳の余地もいっさい与えません。彼らも素晴らしい環境に感謝しています。だからこそ、やらなきゃいけない」

田村 雄三 監督田村 雄三 監督


2018年はポジション争いの激化が予想され、例え昨年のレギュラーでもまったく安泰ではない。生き残りをかけた状況において、すべては自分次第。変わりたいという気持ちをどれだけ強く持ち、本気で努力できるか。すべては、そこにかかっている。

(後編に続く)


パシフィック・リムカップ 2018 ダイジェスト1戦目

バンクーバー・ホワイトキャップスFC vs いわきFC


パシフィック・リムカップ 2018ダイジェスト2戦目

コロンバス・クルーSC vs いわきFC

 

 

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チーム創設2年目となった2017年。いわきFCは天皇杯でJ1所属チームを破り、福島県1部リーグを圧倒的な強さで優勝し、東北社会人2部南リーグに昇格。またトレーニングジム(ドームアスリートハウス)と商業施設を備えたクラブハウス「いわきFCパーク」が完成し、万全の体制を整えた。

そして3年目となる今年。掲げた目標は「日本一のスポーツチーム」。東北社会人2部南リーグ所属ではあるが、まずは日本でナンバーワンの環境を作り上げる。いわきFCパーク、いわきFCフィールドに加え、IT技術を搭載した分析ソフトの採用や選手の食事環境の整備などにより、日本一のスポーツチームを目指していくのだ。
掲げた目標の達成。そのためには何が必要なのか。いわきFCの2018年の展望について、大倉智総監督、田村雄三監督、そしてFW平岡将豪、MF久永翼の2選手に話を聞いた。

■止まらない・倒れない・痛がらない。

2月8日~10日にハワイで行われた「パシフィック・リムカップ2018」。米国MLS(メジャーリーグサッカー)からコロンバス・クルーSC、バンクーバー・ホワイトキャップスFC、日本のJリーグから北海道コンサドーレ札幌、そして東北社会人2部リーグからいわきFCが参戦した。

いわきFCは初戦、バンクーバーに0対1で惜敗。2戦目はコロンバスと打ち合いを繰り広げるも、3対5で敗れた。結果は2戦2敗で4チーム中4位。しかし、チームは単なる勝ち負けでは測ることのできない、大きな自信を得た。

大型で上背に勝り、各国代表選手を多数擁するMLSの2チーム。選手達はまったく臆することなく身体をぶつけ、幾度となく相手選手を跳ね飛ばし、球際の競り合いや走力でもまったく引けを 取らなかった。鍛え上げたフィジカルを前面に押し出して真っ向勝負を繰り広げ、これまでの取り組みの正しさ、そして、日本のサッカー選手がパワーで世界と互角に渡り合える大きな可能性を証明してみせた。今シーズン最初の山場であったパシフィック・リムカップを終え、株式会社いわきスポーツクラブ代表取締役兼いわきFC総監督・大倉智は語る。

大倉 智 総監督
大倉 智 総監督

「今回確信できたのは、東北社会人2部、すなわち上から数えれば”6部”相当のいわきFCでも、正しいストレングストレーニングを積めば、世界と十分戦えるということ。MLSの2チームのレベルは非常に高かったですが、選手達はそれほど緊張することもなく、『普段から鍛えているストレングスを試す絶好の機会だ』とばかりに、いつも通り堂々と、勇敢に戦いました。見ているこちらがびっくりするぐらい、普通の態度で臨んでいましたね。『フィジカルコンタクトでは負けない』という自信が選手達からみなぎっていることが、見ていてわかりました」

大倉 智 総監大倉 智 総監

結果こそ最下位。だが2試合とも、スタンドからの大きな拍手と、多くの海外のメディアからの高い評価を得た。特にフィジカルについては、あらためて自信を深める結果になった。正しいストレングストレーニングに取り組めば、上背で勝る相手にも十分、競り勝てる。それが選手達の自信となり、アグレッシブなプレーにつながる。そして彼らの戦う姿勢が観客に伝わり、スタジアムに熱狂が生まれる。チームはその好循環を確信した。

「そして痛感したことがあります。MLSのチームとアグレッシブな試合をしてからあらためてJリーグを見ると、正直、面白くない。なぜなら積極的にボールを奪おうとしないし、少し相手と接触しただけで倒れ、ファールをアピールする。そんな姿を見ていると残念な気持ちになります。

MLSの選手は激しくコンタクトされても何も言いませんし、審判もいちいち笛など吹きません。ウチも日ごろから『ファールされても倒れるな』と言っています。いわきFCは『止まらない・倒れない・痛がらない』。ふっ飛ばされても、やられた選手が悪い。

Jリーグはコンタクトが少ないので、審判も、たまに激しいプレーがあると笛を吹きたくなるのはわかります。でも、本当にこのままでいいのでしょうか? パシフィック・リムカップを終えてチームのホームページにも書きましたが、日本の選手はヨーロッパのチームに移籍し、激しい身体のぶつけ合いを体験するたびに『世界ではこれが普通。こういう激しいリーグでやりたかったし、楽しい』と言います。じゃあ、Jリーグって何? それが素直な思いです。この現状は審判、選手、指導者それぞれに問題がある。

ですから、Jリーグという小さな枠組みに固執することはないと思っています。もっと大きな目線を持ち、パシフィック・リム、すなわち環太平洋という未開拓のマーケットも意識しながら、チームを強化していきます」

昨年から訴えているように、いわきFCの野望は「Jリーグ昇格」という小さなスケールで語られるべきものではない。そのスタンスは2018年も不変だ。

■今年のテーマは「自己実現型」。

チーム創設2年目となった2017年。6月にトレーニングジムを備えたクラブハウス「いわきFCパーク」が完成。選手は午前はグラウンドでの練習とストレングストレーニングに取り組み、午後はDIB(ドームいわきベース)で業務をこなす。メディカルにおいては医療機関と綿密に連携。負傷対応のみならず遺伝子検査なども行い、実現したいサッカーから逆算した理想のフィジカルとコンディション作りをサポート。そして栄養バランスを考慮し、多くのたんぱく質を摂れる食事を1日3回、DIB内のDNSパワーカフェで提供する。
そんな理想のサイクルが構築され、いわきFCの体制は今や、J1チームをも軽く凌駕するレベルに達している。

結果、昨年は天皇杯福島県予選でJ3所属の福島ユナイテッドFCを、全国大会2回戦でJ1所属の北海道コンサドーレ札幌を撃破。さらに、チームは福島県内外から多くのスポンサーを獲得。県リーグ所属としては異例のスポンサー収入を記録し、ソーシャルメディアのフォロワー数はJ2中位レベルの数字となった。そして、商業施設を併設したいわきFCパークへの来場者数は延べ22万人に達した。

その反面、天皇杯と並ぶ大きな目標であり、JFL(日本フットボールリーグ)への飛び級昇格を狙って挑んだ「全国社会人サッカー選手権大会」では、持っている力を出せぬまま2回戦敗退。大会を勝ち抜き、JFLに昇格するだけの地力は十分あったにもかかわらず、なぜ結果が出なかったのか。チームはその反省を込め、2018年は「自己実現型」というテーマを掲げた。

「自分で考えて、自分で達成し、自らチームに貢献する。自立した人間として、それぞれが自分自身のやるべきことをしっかりやり、理想を実現する。それができないと、チームはこれ以上強くならない。そんな事実を、昨年の負けによって突きつけられました。
選手達はサッカーをしながら毎日、物流倉庫で働きます。それは当たり前のこと。その上で、もっとサッカーが上手くなる。仕事を言い訳にせず、言われたことだけをするのでもなく、自分で考えて行動し、チームに貢献する。仕事をするのも当たり前、クラブハウスをきれいに掃除するのも当たり前。やるべきことをやった上で、もっと個としてサッカーに向き合ってほしいと思います」

■”仲良し軍団”から”戦う集団”へ。

また今年より、選手の契約形態が一部変更となった。FW平岡将豪がプロ契約を結び、ツェーゲン金沢からのレンタル選手であるDF榎本滉大、ブラジル人FWルーカス・マセドとともに、プロとして活動していく。彼らは好待遇と引き換えに、試合で勝敗を左右するプレーをして初めて評価されるという厳しい立場に置かれた。そのため、クリアせねばならぬハードルの高さは他のセミプロ選手とは異なる。そんな状況の中で今年、自ら立候補して選手会長になったFW平岡は語る。

平岡 将豪 選手
平岡 将豪 選手

「生活は大きく変わりました。自由な時間が増えた分は、主にランニングや筋トレ、睡眠などのコンディション調整に充てています。身体が軽い分、今後さらに負荷をかけていけると思います。
そして、今年はプレースタイルを変えていきます。実は僕には、これといった武器がない。今年ははっきりとした武器を作り、新しい自分を見つけていきたい。
以前は前で駆け引きをして相手のディフェンスの裏を取る”使われる”選手でした。でも昨年から徐々に”使う”シチュエーションが増えてきた。主にトップ下として起用されている分、役割が多彩になって難しい面がある。プレッシャーは以前よりもずっと大きいですが、今までやらなかったプレーにも挑戦し、自分の幅を広げて成長していきたい。試合で違いを見せて、結果を出す。そして、チームを引っ張る立場としても頑張りたい」

平岡 将豪 選手平岡 将豪 選手


大きく意識が変わったのはプロ選手だけではない。3年目のMF久永翼は今年から早い時間にグラウンドに来てランニングするなど、危機感を露わにしている。

久永 翼 選手
久永 翼 選手

「昨年の全社は、僕がPKを外して負けました。このままでは絶対に終われないし、必ずやり返す。今年はその気持ちを持って、毎日の練習に取り組んでいます。僕は今年25歳。サッカー選手としては、決して若手と言えない。同世代の元チームメイトはJリーグで主力として活躍していますし、今年は勝負の年。これまで以上にアグレッシブにプレーしたいです。

僕ができるのは、守備でしっかりボールを奪って攻撃につなぐこと。特に、ゲーム全体を見る力を高めていきたい。本能でプレーするだけじゃなく、考えてボールをもらい、展開を作っていきたい。そのためには、もっとイメージを高めることです」

久永 翼 選手久永 翼 選手


今年に入ってチームに起こりつつある変化。変わったのは平岡や久永だけではない。早出で走る選手、仕事後に自主的にボールを蹴り、筋力トレーニングに励む選手…彼らの姿勢はよりプロフェッショナルなものとなり、練習でも声がよく出て活気が増している。田村雄三監督は語る。

田村 雄三 監督
田村 雄三 監督

「昨年まではある意味”仲良し軍団”。でも今年は”戦う集団”になりつつあります。なぜそのような変化が起こったかというと、昨年の全社での負けと、用意していただいた最高の環境があるから。環境が人を育てることを痛感しています。

これだけの設備と体制を作っていただいたということは、結果を出すしかありません。スタッフが最高の準備をする代わりに、選手達には逃げ道も、『やる』以外の言い訳の余地もいっさい与えません。彼らも素晴らしい環境に感謝しています。だからこそ、やらなきゃいけない」

田村 雄三 監督田村 雄三 監督


2018年はポジション争いの激化が予想され、例え昨年のレギュラーでもまったく安泰ではない。生き残りをかけた状況において、すべては自分次第。変わりたいという気持ちをどれだけ強く持ち、本気で努力できるか。すべては、そこにかかっている。

(後編に続く)


パシフィック・リムカップ 2018 ダイジェスト1戦目

バンクーバー・ホワイトキャップスFC vs いわきFC


パシフィック・リムカップ 2018ダイジェスト2戦目

コロンバス・クルーSC vs いわきFC

 

 

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