競技パフォーマンスUP

リスクを冒さぬ退屈な日本のサッカーを、圧倒的なパワーで変革する。 いわきFCが巻き起こすフィジカル革命 ~その9 後編

リスクを冒さぬ退屈な日本のサッカーを、圧倒的なパワーで変革する。
いわきFCが巻き起こすフィジカル革命 ~その9 後編

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リスクを冒さぬ退屈な日本のサッカーを、圧倒的なパワーで変革する。 いわきFCが巻き起こすフィジカル革命 ~その9 後編

リスクを冒さぬ退屈な日本のサッカーを、圧倒的なパワーで変革する。
いわきFCが巻き起こすフィジカル革命 ~その9 後編

(この記事は2018年2月に公開されました。)

チーム創設3年目となる今年。いわきFCが掲げた目標は「日本一のスポーツチーム」。ファシリティ、フィジカル、メディカル、栄養摂取、そしてIT技術など、チームを構成するあらゆる要素において、ナンバーワンの環境を作り上げることだ。では目標を達成するには、何が必要なのか。引き続き大倉智総監督、田村雄三監督に話を聞く。

■フィジカルトレーニングはさらに個別性を重視

2018年のいわきFCは、京都サンガFCから完全移籍したGK永井建成、グルージャ盛岡の特別指定選手だったDF鈴木一朗、横浜F・マリノスユース~中央大出身のMF早坂翔、アルビレックス新潟ユースから加わった長身FW小批ランディなど、8人の新加入選手を迎えてスタートを切った。大倉智総監督は語る。

大倉 智 総監督
大倉 智 総監督

「新加入選手のレベルは年々、上がっています。今年入った選手のフィジカルのレベルは過去2年よりずっと高く、例えば3年目の金大生はチーム加入当初、懸垂は一度もできず、ベンチプレスも60㎏が挙がらなかった。でも今年の新加入選手の多くは本格的なストレングストレーニングを始める前から懸垂を10回以上こなし、ベンチプレスも80㎏以上を挙げます。また、メンタルもしっかりしている。そして、今年はJクラブ・ユース出身の選手が多くいて、彼らはトップチームの選手たちを目の前で見てきました。だからいわきFCで、今の自分に足りないものを身につけ、将来はトップレベルで戦いたいという明確なビジョンを持っています。

そんな新加入選手の”ギラつき”に対し、在籍2~3年目の選手は尻に火がついた状態になっています。特に、チーム創設1年目から在籍している選手達。FW菊池将太やMF久永翼は危機感にあふれていますし、ケガでリハビリ中のMF片山紳やDF古山瑛翔も、本格復帰後はうかうかしていられないでしょう。彼らは今年25歳。プレーヤーとして明確な結果を出さねばなりませんし、より強いリーダーシップとチームへの貢献が求められ、真価を問われるシーズンになるはずです」

大倉 智 総監督大倉 智 総監督

ストレングストレーニングの指導は引き続き、ドームアスリートハウスの鈴木拓哉パフォーマンスコーチが行う。サッカー選手を超えるフィジカルを目指してトレーニングを行い、遺伝子チェックによるタイプ分類に基づき、個別性を盛り込んでいく。

ストレングストレーニングは、今やチームのカルチャーとして完全に確立されている。フィジカルへの自信が試合中のコンタクトに対する恐怖感を打ち消し、それが観客を興奮させるプレーにつながることを、選手達は深く理解している。田村雄三監督は語る。

田村 雄三 監督
田村 雄三 監督

「全員が同じプログラムのもとでストレングストレーニングを行うスタイルは、昨年で終わりました。今年は、例えば大卒3年目の選手と高卒1年目の選手は明確なフィジカルの差があることを考慮し、メニューの個別性を高め、サプリメントの摂り方も変え、よりパーソナライズされたプログラムを作っていきます。

プロ選手や大卒2~3年目の選手は経験がありますので、ある程度、任せておいて大丈夫。身体が完成しつつある3年目のFW菊池、MF久永、板倉直紀あたりは、フィジカルトレーニングをやや抑えて違う刺激を与えたり、ボールを扱う時間を増やすなどして、動きの質を高めていくことを考えています。今年からウエイトトレーニングに加えてヨガやピラティスを取り入れているのもそういった狙いで、身につけた筋肉をより効率的に動かすためです。

これまでもさまざまな仮説を立て、遺伝子検査などさまざまな試みを行ってきましたが、その一環です。チーム作りとストレングス強化が完全に連携しているからこそ、これらの仮説を検証することができます。ヨガやピラティスは、今年1年やってみて、よかったら本格的に取り入れていこうと思います」

田村 雄三 監督田村 雄三 監督

※ヨガ、ピラティスの様子はいわきFCの公式TWにて

また昨年は「鍛錬期」と称し、山場となる試合前などに一定期間、ほとんどボールを扱わずに集中的にフィジカルトレーニングする期間を設けた。これについては、今年も継続する。

「ただし昨年のように、鍛錬期に練習試合を組むことはしません。今年はそれをせず、週4日×3~4週間ほど、フィジカルトレーニングに集中してもらいます。ただしその中である程度の強弱をつけ、昨年は例えば4日連続でフィジカルトレーニングで追い込んでいたところを、2日追い込んで1日ヨガやピラティスで身体を緩め、再び2日追い込むというように、アクセントをつけていくことも考えています。

また今年は、鍛錬期から試合までの調整期間をしっかり取ろうと思います。昨年の経験で、ストレングストレーニングを集中的に行ってから試合でそれを発揮できるようになるまで、約1カ月ほど必要であることがわかりました。そのため、今年は抜く時期はしっかりと抜く。もちろん抜く=休むではありません。一定の負荷はしっかりとかけ続けます」(田村)

■圧倒的な力で勝ちたい。

また、メディカル/ニュートリションについては昨年の路線を継続。チームドクターである順天堂大医学部助教・齋田良知医師、そしてドームアスリートハウスのニュートリションチーム、DNSチームとは、さらなる連携を模索していく。

「選手の年齢とキャリアがバラついてくる中で、どのようにパーソナライズしていくか。まだ明確なプランは完成していません。現在は1日3500kcal程度を摂ることになっていますが、大卒3年目と高卒1年目では差をつけた方がいいかもしれない。また血液検査の結果によっても、サプリメントのチョイスは変わってくるでしょう。

今年より、選手が食事を摂るDIB(ドームいわきベース)内のDNSパワーカフェがメニューをリニューアル。多くのたんぱく質を摂ることができ、しかもおいしい食事を1日3回摂れます。将来は専用のレストランを持ち、さらにパーソナライズしていきたいですね。トップチームからアカデミーの子供達まで、みんなが一緒に食べられる専用の食堂を作れたらと思います」(大倉)

チームは今年、東北社会人リーグ2部南リーグに昇格。リーグ戦については問題なく勝てると考えている。天皇杯に次ぐ目標の一つが、昨年2回戦で敗れた「全社」こと「全国社会人サッカー選手権」だ。昨年まで全社上位進出チームに与えられていた「全国地域サッカーチャンピオンズリーグ」への出場枠が、今年は撤廃。その影響で、いわきFCのJFLへの飛び級昇格はなくなった。それでも、勝ちに行く

「全社は過去2年間の忘れもの。JFL昇格がなくなっても関係ない。完全な”厄介者”となって『あいつら、優勝しても何もないのに…』と言われながら圧倒的な力で勝ちたい。そして、インパクトを与えたいです」(田村)

昨年、全社を取れなかった理由はシンプル。地力が足りなかったからだ。選手もスタッフも深く理解している。やらなくては、未来は開けない。やらなければ、生き残れない。チームは昨年の悔しい敗北を糧に。今年、しっかりとノウハウを蓄積していく。そして最高の環境のもとで地力を蓄え、圧倒的に突き抜けた日本一のチームへと、成長を遂げる。

(前編を読む)

 

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(この記事は2018年2月に公開されました。)

チーム創設3年目となる今年。いわきFCが掲げた目標は「日本一のスポーツチーム」。ファシリティ、フィジカル、メディカル、栄養摂取、そしてIT技術など、チームを構成するあらゆる要素において、ナンバーワンの環境を作り上げることだ。では目標を達成するには、何が必要なのか。引き続き大倉智総監督、田村雄三監督に話を聞く。

■フィジカルトレーニングはさらに個別性を重視

2018年のいわきFCは、京都サンガFCから完全移籍したGK永井建成、グルージャ盛岡の特別指定選手だったDF鈴木一朗、横浜F・マリノスユース~中央大出身のMF早坂翔、アルビレックス新潟ユースから加わった長身FW小批ランディなど、8人の新加入選手を迎えてスタートを切った。大倉智総監督は語る。

大倉 智 総監督
大倉 智 総監督

「新加入選手のレベルは年々、上がっています。今年入った選手のフィジカルのレベルは過去2年よりずっと高く、例えば3年目の金大生はチーム加入当初、懸垂は一度もできず、ベンチプレスも60㎏が挙がらなかった。でも今年の新加入選手の多くは本格的なストレングストレーニングを始める前から懸垂を10回以上こなし、ベンチプレスも80㎏以上を挙げます。また、メンタルもしっかりしている。そして、今年はJクラブ・ユース出身の選手が多くいて、彼らはトップチームの選手たちを目の前で見てきました。だからいわきFCで、今の自分に足りないものを身につけ、将来はトップレベルで戦いたいという明確なビジョンを持っています。

そんな新加入選手の”ギラつき”に対し、在籍2~3年目の選手は尻に火がついた状態になっています。特に、チーム創設1年目から在籍している選手達。FW菊池将太やMF久永翼は危機感にあふれていますし、ケガでリハビリ中のMF片山紳やDF古山瑛翔も、本格復帰後はうかうかしていられないでしょう。彼らは今年25歳。プレーヤーとして明確な結果を出さねばなりませんし、より強いリーダーシップとチームへの貢献が求められ、真価を問われるシーズンになるはずです」

大倉 智 総監督大倉 智 総監督

ストレングストレーニングの指導は引き続き、ドームアスリートハウスの鈴木拓哉パフォーマンスコーチが行う。サッカー選手を超えるフィジカルを目指してトレーニングを行い、遺伝子チェックによるタイプ分類に基づき、個別性を盛り込んでいく。

ストレングストレーニングは、今やチームのカルチャーとして完全に確立されている。フィジカルへの自信が試合中のコンタクトに対する恐怖感を打ち消し、それが観客を興奮させるプレーにつながることを、選手達は深く理解している。田村雄三監督は語る。

田村 雄三 監督
田村 雄三 監督

「全員が同じプログラムのもとでストレングストレーニングを行うスタイルは、昨年で終わりました。今年は、例えば大卒3年目の選手と高卒1年目の選手は明確なフィジカルの差があることを考慮し、メニューの個別性を高め、サプリメントの摂り方も変え、よりパーソナライズされたプログラムを作っていきます。

プロ選手や大卒2~3年目の選手は経験がありますので、ある程度、任せておいて大丈夫。身体が完成しつつある3年目のFW菊池、MF久永、板倉直紀あたりは、フィジカルトレーニングをやや抑えて違う刺激を与えたり、ボールを扱う時間を増やすなどして、動きの質を高めていくことを考えています。今年からウエイトトレーニングに加えてヨガやピラティスを取り入れているのもそういった狙いで、身につけた筋肉をより効率的に動かすためです。

これまでもさまざまな仮説を立て、遺伝子検査などさまざまな試みを行ってきましたが、その一環です。チーム作りとストレングス強化が完全に連携しているからこそ、これらの仮説を検証することができます。ヨガやピラティスは、今年1年やってみて、よかったら本格的に取り入れていこうと思います」

田村 雄三 監督田村 雄三 監督

※ヨガ、ピラティスの様子はいわきFCの公式TWにて

また昨年は「鍛錬期」と称し、山場となる試合前などに一定期間、ほとんどボールを扱わずに集中的にフィジカルトレーニングする期間を設けた。これについては、今年も継続する。

「ただし昨年のように、鍛錬期に練習試合を組むことはしません。今年はそれをせず、週4日×3~4週間ほど、フィジカルトレーニングに集中してもらいます。ただしその中である程度の強弱をつけ、昨年は例えば4日連続でフィジカルトレーニングで追い込んでいたところを、2日追い込んで1日ヨガやピラティスで身体を緩め、再び2日追い込むというように、アクセントをつけていくことも考えています。

また今年は、鍛錬期から試合までの調整期間をしっかり取ろうと思います。昨年の経験で、ストレングストレーニングを集中的に行ってから試合でそれを発揮できるようになるまで、約1カ月ほど必要であることがわかりました。そのため、今年は抜く時期はしっかりと抜く。もちろん抜く=休むではありません。一定の負荷はしっかりとかけ続けます」(田村)

■圧倒的な力で勝ちたい。

また、メディカル/ニュートリションについては昨年の路線を継続。チームドクターである順天堂大医学部助教・齋田良知医師、そしてドームアスリートハウスのニュートリションチーム、DNSチームとは、さらなる連携を模索していく。

「選手の年齢とキャリアがバラついてくる中で、どのようにパーソナライズしていくか。まだ明確なプランは完成していません。現在は1日3500kcal程度を摂ることになっていますが、大卒3年目と高卒1年目では差をつけた方がいいかもしれない。また血液検査の結果によっても、サプリメントのチョイスは変わってくるでしょう。

今年より、選手が食事を摂るDIB(ドームいわきベース)内のDNSパワーカフェがメニューをリニューアル。多くのたんぱく質を摂ることができ、しかもおいしい食事を1日3回摂れます。将来は専用のレストランを持ち、さらにパーソナライズしていきたいですね。トップチームからアカデミーの子供達まで、みんなが一緒に食べられる専用の食堂を作れたらと思います」(大倉)

チームは今年、東北社会人リーグ2部南リーグに昇格。リーグ戦については問題なく勝てると考えている。天皇杯に次ぐ目標の一つが、昨年2回戦で敗れた「全社」こと「全国社会人サッカー選手権」だ。昨年まで全社上位進出チームに与えられていた「全国地域サッカーチャンピオンズリーグ」への出場枠が、今年は撤廃。その影響で、いわきFCのJFLへの飛び級昇格はなくなった。それでも、勝ちに行く

「全社は過去2年間の忘れもの。JFL昇格がなくなっても関係ない。完全な”厄介者”となって『あいつら、優勝しても何もないのに…』と言われながら圧倒的な力で勝ちたい。そして、インパクトを与えたいです」(田村)

昨年、全社を取れなかった理由はシンプル。地力が足りなかったからだ。選手もスタッフも深く理解している。やらなくては、未来は開けない。やらなければ、生き残れない。チームは昨年の悔しい敗北を糧に。今年、しっかりとノウハウを蓄積していく。そして最高の環境のもとで地力を蓄え、圧倒的に突き抜けた日本一のチームへと、成長を遂げる。

(前編を読む)

 

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