健康・体力・美容UP
第一回の自己紹介でも書きましたが、私はスポーツ栄養学と臨床栄養学を研究してきました。そして、それぞれ対象や求める成果に違いはあれど、両者ともそもそも「人間栄養学」であるということに気付きました。唯一異なるところと言えば、スポーツ栄養には「プラセボ効果も効果のうち」という神話があることです。病気はガッツと根性では治りませんが、アスリートにおいては精神力も良い成績を出すための重要な要因であることは間違いありません。これもアスリートが「人間」であるからでしょう。
「人間栄養学」とは私が尊敬する栄養学者の故・細谷憲政先生(東京大学名誉教授)がその重要性を力説された考え方です。今までの栄養学の中心は食品や食品中の栄養素の細胞内の分子レベルでの作用などであった「食物栄養学」に対して、対象とすべきを人間として、調理方法や食べ方から健康、そしてパフォーマンスに至るまで、ヒト中心の栄養を取り扱うのが「人間栄養学」です。
「人間栄養学」において重要なのは、ヒトにおけるデータ(エビデンス)です。サプリメントの広告でよく見かけるのが、ラットやマウスのデータを用いて、あたかもヒトにも同等の効果があるような宣伝です。残念ながら消費者もよく騙されて買ってしまいます。メカニズムを推測して説明するために動物データを使うのは科学的と思いますが、ラットが速く走ったとか、マウスの記憶力が良くなったとか・・・まあ、あまり意味のないことです。ヒトでのデータではブレが大きくて効果が十分に確認されていなくても、動物データのみで機能性を思わせる表示や宣伝広告がたまに見受けられます。
表1にヒトとラットやマウスの生理学的な相違点と類似点を参考までにまとめました。類似点としては食べ過ぎや運動不足で肥満になり、たんぱく質や必須脂肪酸の摂取はヒト並みに重要です。一方、実験動物の体重は当然ながらヒトよりも軽いし寿命は短く、代謝は体重を補正するとヒトの5~10倍も高くなっています。よって動物実験は便利ですが、栄養学的な観点からはあくまでもヒトでの効果検証に導くためのモデルであるということを忘れてはならないと思います。
ヒト | ラット | マウス | |
---|---|---|---|
相違点 | |||
体重 | 60~80 kg | 350-650 g | 30-90 g |
遺伝子(塩基対数) | 29億 | 27.5億 (ヒトとの類似率90%) |
26億 (ヒトとの類似率90%) |
安静時代謝量 | 1200-2000 kcal/日 | ヒトの6.4倍 (体重補正後) |
ヒトの7倍 (体重補正後) |
消化管の特徴 | — | 胆嚢がない 盲腸が大きい |
小腸内壁の表面積が ヒトと比べて狭い |
タンパク質代謝回転 | — | ヒトの5倍 | ヒトの10倍 |
性的成熟 | 11~13年 | 6週 | 3~6週 |
生涯で体重が一番重い年齢 | ~30年 | ~12か月 | ~12か月 |
平均寿命 | 75~80年 | 2~3年 | 2~3年 |
類似点 | 運動不足で肥満になる。 | |||
---|---|---|---|---|
食べ過ぎると太る。 | ||||
持久系の運動で体脂肪が落ちる。 | ||||
レジスタンストレーニングで筋肉量が増加する。 | ||||
体タンパク合成にはたんぱく質の摂取が必要。 | ||||
通常の生育には必須脂肪酸の摂取が必要。 |
【こちらもオススメ】
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第一回の自己紹介でも書きましたが、私はスポーツ栄養学と臨床栄養学を研究してきました。そして、それぞれ対象や求める成果に違いはあれど、両者ともそもそも「人間栄養学」であるということに気付きました。唯一異なるところと言えば、スポーツ栄養には「プラセボ効果も効果のうち」という神話があることです。病気はガッツと根性では治りませんが、アスリートにおいては精神力も良い成績を出すための重要な要因であることは間違いありません。これもアスリートが「人間」であるからでしょう。
「人間栄養学」とは私が尊敬する栄養学者の故・細谷憲政先生(東京大学名誉教授)がその重要性を力説された考え方です。今までの栄養学の中心は食品や食品中の栄養素の細胞内の分子レベルでの作用などであった「食物栄養学」に対して、対象とすべきを人間として、調理方法や食べ方から健康、そしてパフォーマンスに至るまで、ヒト中心の栄養を取り扱うのが「人間栄養学」です。
「人間栄養学」において重要なのは、ヒトにおけるデータ(エビデンス)です。サプリメントの広告でよく見かけるのが、ラットやマウスのデータを用いて、あたかもヒトにも同等の効果があるような宣伝です。残念ながら消費者もよく騙されて買ってしまいます。メカニズムを推測して説明するために動物データを使うのは科学的と思いますが、ラットが速く走ったとか、マウスの記憶力が良くなったとか・・・まあ、あまり意味のないことです。ヒトでのデータではブレが大きくて効果が十分に確認されていなくても、動物データのみで機能性を思わせる表示や宣伝広告がたまに見受けられます。
表1にヒトとラットやマウスの生理学的な相違点と類似点を参考までにまとめました。類似点としては食べ過ぎや運動不足で肥満になり、たんぱく質や必須脂肪酸の摂取はヒト並みに重要です。一方、実験動物の体重は当然ながらヒトよりも軽いし寿命は短く、代謝は体重を補正するとヒトの5~10倍も高くなっています。よって動物実験は便利ですが、栄養学的な観点からはあくまでもヒトでの効果検証に導くためのモデルであるということを忘れてはならないと思います。
ヒト | ラット | マウス | |
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相違点 | |||
体重 | 60~80 kg | 350-650 g | 30-90 g |
遺伝子(塩基対数) | 29億 | 27.5億 (ヒトとの類似率90%) |
26億 (ヒトとの類似率90%) |
安静時代謝量 | 1200-2000 kcal/日 | ヒトの6.4倍 (体重補正後) |
ヒトの7倍 (体重補正後) |
消化管の特徴 | — | 胆嚢がない 盲腸が大きい |
小腸内壁の表面積が ヒトと比べて狭い |
タンパク質代謝回転 | — | ヒトの5倍 | ヒトの10倍 |
性的成熟 | 11~13年 | 6週 | 3~6週 |
生涯で体重が一番重い年齢 | ~30年 | ~12か月 | ~12か月 |
平均寿命 | 75~80年 | 2~3年 | 2~3年 |
類似点 | 運動不足で肥満になる。 | |||
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食べ過ぎると太る。 | ||||
持久系の運動で体脂肪が落ちる。 | ||||
レジスタンストレーニングで筋肉量が増加する。 | ||||
体タンパク合成にはたんぱく質の摂取が必要。 | ||||
通常の生育には必須脂肪酸の摂取が必要。 |
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