健康・体力・美容UP
株式会社DNS SO(Scientific Officer)
栄養学博士 青柳清治
「新型コロナウイルスCOVID-19の重症患者は血中のビタミンDが不足気味¹。重症化を避けるためにはビタミンDのサプリメントが有効である」という話が世間を騒がせました。
その真偽はともかく、ビタミンDは、アスリートの骨と骨格筋の強度やパフォーマンスに関係する重要な栄養素です。主な役割は、骨の形成に欠かせないカルシウムやリンの吸収を促進すること。ビタミンDが欠乏すると、それらの吸収が抑制され、骨折のリスクが高まります²。
ビタミンDの供給源は2つあります。まず一つはキノコ類や魚などの食品。もう一つは日光です。
ヒトの皮膚にはコレステロールを作る過程でできる「ビタミンDの素」が存在しています。日光を浴びると、ビタミンDの素は紫外線によって、活性型のビタミンDに変換されます。
ビタミンDの食品からの摂取基準は各国さまざまです。欧米では15~20μg/日ですが³、我が国の食事摂取基準(2020年版)では3~8.5μg/日になっています⁴。なぜかというと、日本ではある程度の日照暴露(=日光を浴びること)によるビタミンDの供給が想定されているからです。
顔面及び両手の甲の面積程度の皮膚に日光を浴びた際に、5.5μgのビタミンDの産生に必要な時間は、時間、季節、場所によってさまざまなことが分かっています⁵(表1)
冒頭でお話したCOVID-19 とビタミンDの関係について、我々がサポートするいわきFCのチームドクター・齋田良知先生が先日、大変興味深い研究結果を発表されました⁶。
いわきFCでは、選手のコンディショニング維持とパフォーマンスの向上を目的として、選手一人一人の血液データの解析を行っています。齋田ドクターは、この4月に発令された緊急事態宣言による外出制限や食生活の変化により、選手達の血中のビタミンD値がどのように変化したのかを解析するため、血清中の25-ヒドロキシビタミンD(=25-OHD。ビタミンDの栄養状態の指標)の量を調査(図1)すると、例年に比べて大幅に低くなっていることが確認されました。
2年前の2018年では、日照暴露時間の長かった春シーズンでの25-OHDは、冬シーズンよりも増えていました(平均26.8 ng/ml ⇒ 34.8 ng/ml)。一方、2020年には25-OHDの増加は見られず、それどころか減少していたのです(平均24.9 ng/ml ⇒ 21.2 ng/ml)。25-OHDが26.6 ng/ml以下の疲労骨折になるオッズ比は0.79と言われています⁷。
原因として、新型コロナウイルスの流行下の緊急事態宣言による野外トレーニングの制限が考えられます。いわきFCではこの結果を受け、選手達の食事におけるビタミンD摂取を強化しているそうです。
ビタミンD値の低下は、疲労骨折や肉離れにつながる可能性があるということを、スポーツ指導者は認識すべきでしょう。そしてこのことはトップアスリート以外にも当てはまり、一般の方もビタミンD値が低下すると、骨折や転倒によるケガなどにつながる恐れがあります。
残念ながら、コロナ禍の終息はいまだに見えません。通常の活動が制限され、食事もやや乱れがちの日々は、まだ続くことでしょう。効率よくサプリメントを活用し、ビタミンDを少なくとも欧米の基準並みの量(20μg/日)摂取することをお勧めします。
栄養学博士、(株)DNS 執行役員
米国オキシデンタル大学卒業後、㈱協和発酵バイオでアミノ酸研究に従事する中で、イリノイ大学で栄養学の博士号を取得。以降、外資企業で栄養剤ビジネス、商品開発の責任者を歴任した。日本へ帰国後2015年から、ウェアブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店・㈱ドームのサプリメントブランド「DNS」にて責任者を務める。2020年より分社化した㈱DNSでサイエンティフィックオフィサーを務める。
株式会社DNS SO(Scientific Officer)
栄養学博士 青柳清治
「新型コロナウイルスCOVID-19の重症患者は血中のビタミンDが不足気味¹。重症化を避けるためにはビタミンDのサプリメントが有効である」という話が世間を騒がせました。
その真偽はともかく、ビタミンDは、アスリートの骨と骨格筋の強度やパフォーマンスに関係する重要な栄養素です。主な役割は、骨の形成に欠かせないカルシウムやリンの吸収を促進すること。ビタミンDが欠乏すると、それらの吸収が抑制され、骨折のリスクが高まります²。
ビタミンDの供給源は2つあります。まず一つはキノコ類や魚などの食品。もう一つは日光です。
ヒトの皮膚にはコレステロールを作る過程でできる「ビタミンDの素」が存在しています。日光を浴びると、ビタミンDの素は紫外線によって、活性型のビタミンDに変換されます。
ビタミンDの食品からの摂取基準は各国さまざまです。欧米では15~20μg/日ですが³、我が国の食事摂取基準(2020年版)では3~8.5μg/日になっています⁴。なぜかというと、日本ではある程度の日照暴露(=日光を浴びること)によるビタミンDの供給が想定されているからです。
顔面及び両手の甲の面積程度の皮膚に日光を浴びた際に、5.5μgのビタミンDの産生に必要な時間は、時間、季節、場所によってさまざまなことが分かっています⁵(表1)
冒頭でお話したCOVID-19 とビタミンDの関係について、我々がサポートするいわきFCのチームドクター・齋田良知先生が先日、大変興味深い研究結果を発表されました⁶。
いわきFCでは、選手のコンディショニング維持とパフォーマンスの向上を目的として、選手一人一人の血液データの解析を行っています。齋田ドクターは、この4月に発令された緊急事態宣言による外出制限や食生活の変化により、選手達の血中のビタミンD値がどのように変化したのかを解析するため、血清中の25-ヒドロキシビタミンD(=25-OHD。ビタミンDの栄養状態の指標)の量を調査(図1)すると、例年に比べて大幅に低くなっていることが確認されました。
2年前の2018年では、日照暴露時間の長かった春シーズンでの25-OHDは、冬シーズンよりも増えていました(平均26.8 ng/ml ⇒ 34.8 ng/ml)。一方、2020年には25-OHDの増加は見られず、それどころか減少していたのです(平均24.9 ng/ml ⇒ 21.2 ng/ml)。25-OHDが26.6 ng/ml以下の疲労骨折になるオッズ比は0.79と言われています⁷。
原因として、新型コロナウイルスの流行下の緊急事態宣言による野外トレーニングの制限が考えられます。いわきFCではこの結果を受け、選手達の食事におけるビタミンD摂取を強化しているそうです。
ビタミンD値の低下は、疲労骨折や肉離れにつながる可能性があるということを、スポーツ指導者は認識すべきでしょう。そしてこのことはトップアスリート以外にも当てはまり、一般の方もビタミンD値が低下すると、骨折や転倒によるケガなどにつながる恐れがあります。
残念ながら、コロナ禍の終息はいまだに見えません。通常の活動が制限され、食事もやや乱れがちの日々は、まだ続くことでしょう。効率よくサプリメントを活用し、ビタミンDを少なくとも欧米の基準並みの量(20μg/日)摂取することをお勧めします。
栄養学博士、(株)DNS 執行役員
米国オキシデンタル大学卒業後、㈱協和発酵バイオでアミノ酸研究に従事する中で、イリノイ大学で栄養学の博士号を取得。以降、外資企業で栄養剤ビジネス、商品開発の責任者を歴任した。日本へ帰国後2015年から、ウェアブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店・㈱ドームのサプリメントブランド「DNS」にて責任者を務める。2020年より分社化した㈱DNSでサイエンティフィックオフィサーを務める。