体重・筋量UP

HMB日本上陸の裏話

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執行役員SOScientific Officer
栄養学博士 青柳清治

■日本でサプリメントとしてHMBを使えるようにした仕掛け人

人気のHMB(β‐ヒドロキシ-βメチル酪酸)を、日本で食品として使えるようにした仕掛け人がいます。

何を隠そう、この私もその一人です。実際の申請作業を行ったのはサプリメント業界の影武者であるバイオヘルスリサーチ社の故・大濱宏文先生と池田秀子先生で、お二人の尽力による非常に大きな功績といえるでしょう。

私はかつて米国の大手製薬会社アボット・ラボラトリーズに在籍し、病態別栄養剤を世界に広めるビジネス・デベロップメントの仕事をしておりました。
※詳しい経歴はこちら→https://www.dnszone.jp/magazine/2018/16537

当時アボット社では、HMBを主原料とし、褥瘡(床ずれ)などの創傷治癒を目的とした病態別栄養剤を世界展開していました。その中で唯一、日本だけ、HMBの食品としての使用が認められておらず、輸入することができませんでした。そこで、私がお二人に相談を持ち掛けたのでした。20065月のことです。

通常、HMBのような新規化合物質を食品として使用する許可を得るには、10年ほどかかります。しかしHMBは、2年という異例の早さで食品として許可されました。その裏には、我が国の医薬品医療機器等法(旧薬事法)という法律に関するお二人の深い知識と経験から編み出された、緻密な戦略がありました。

■「食薬区分」とは?

事の偉大さを理解するには、まずは旧薬事法に基づいて医薬品と食品を分ける「食薬区分」について、知る必要があります。

我が国における医薬品と食品成分(非医薬品)の区分は、昭和4661日に「無承認無許可医薬品の指導取り締まりについて」(薬発第476号)という通知に基づいています。これを通称「ヨンロク通知」といいます。

当初はビタミンやミネラルなどの栄養素も医薬品に区分されましたが、その後の規制緩和によって食品扱いになっています。ただしその動きの中で、今も数々の栄養素が医薬品扱いのままになっているのです。例えば、単なるアミノ酸で海外ではサプリメントとして売られているタウリンが、わが国ではいまだに医薬品扱いになっているのも、このヨンロク通知の名残です。

食薬区分で医薬品扱いになっていた物質の一つに、体内に存在するアミノ酸誘導体で、脂質代謝において重要な役目を担うL-カルニチンがありました。今はサプリメントとして多くのバーニング系サプリに使われていますが、2002年にそれを可能にしたのがお二人です。L-カルニチンの大手であるロンザ社(スイス)が規制緩和を仕掛け、3年という異例のスピードで実現させたのです。

しかし食薬区分上、HMBは医薬品のリストにも非医薬品のリストにも載っていませんでした。つまり、まったくの新規物質。その点、L-カルニチンの時とはわけが違います。

20071030日、HMBを非医薬品扱いにする申請書が、アボット社から厚生労働省に提出されました。アボット社が保有していたHMBの安全性データ(体内動態試験、急性毒性試験、遺伝毒性試験、食経験など)は、医薬品レベルのもの。それを駆使して「HMBはあくまでも安全な食品である」と主張した申請書を書き上げたのです。その結果、申請から約1年3カ月という異例の早さで、20092月、HMBが非医薬品物質として認められました。

しかし、もう一つのハードルがありました。それは、HMBは「食品」なのか、それとも「食品添加物」なのか、という食品衛生法上の区別です。増粘剤や乳化剤に用いられる物質が食品添加物に相当するため、例え非医薬品として認められていても、通常は申請と審査に10年程度の時間がかかってしまいます。

そこでHMBの食薬区分の申請書において、私達は「HMBはあくまでも食品である」と主張し、それをしっかりとした形で立証しました。これにより、HMBは異例の早さでサプリメントとして使えるようになったのです。

さらに、武勇伝は続きます。

■β-アラニン解禁にも働きかける

最近、わが国でもβアラニンがサプリメントとして出回り始めました。これは米国のNatural Alternative International Inc.NAI社)の働きかけに対し、池田さんが動いたことがきっかけです。

今まではβアラニンをサプリメントとして使えなかった我が国では、乳酸の酸を中和するカルノシンを筋中に蓄積させるには、鶏肉などからの抽出物であるイミダゾールジペプチドをサプリメントとして摂取するしかありませんでした。しかしこの規制緩和によって、今は安価で無味無臭のβアラニンが主流になりつつあります。

L-カルニチン(ロンザ社)、HMB(アボット社)、βアラニン(NAI社)。歴史的な食薬区分の規制緩和は、そもそも外圧によるものです。

当然ながらビジネスチャンスを狙った面はありますが、これまで、外資がお金と時間をかけて門戸を開いてきたのは確かなこと。その結果、海外では当たり前のように使われている効果の高いスポーツサプリメントを、日本のアスリートが使えるようになったのは間違いのない事実です。

我が国の医・食行政は、今も閉ざされています。そして国内には、マユツバものをマーケティング力で売り込む会社や、古き食薬区分にしがみついてビジネスを続けている会社がいまだ多くあります。彼らにはもう少し規制緩和に投資し、日本人アスリートのレベルアップに貢献してほしいものです。

HMBタブレット

【1食(6粒)あたり】

エネルギー:6.6kcal、たんぱく質:0g、脂質:0.1g、炭水化物:1.4g、食塩相当量:0.005g、HMBカルシウム:1,500㎎(HMBとして1,200㎎)

詳しい情報・ご購入はこちらから DNS Online Shop



青柳 清治

青柳 清治 │ Seiji_Aoyagi

栄養学博士、(株)DNS 執行役員 
米国オキシデンタル大学卒業後、㈱協和発酵バイオでアミノ酸研究に従事する中で、イリノイ大学で栄養学の博士号を取得。以降、外資企業で栄養剤ビジネス、商品開発の責任者を歴任した。日本へ帰国後2015年から、ウェアブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店・㈱ドームのサプリメントブランド「DNS」にて責任者を務める。2020年より分社化した㈱DNSでサイエンティフィックオフィサーを務める。

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執行役員SOScientific Officer
栄養学博士 青柳清治

■日本でサプリメントとしてHMBを使えるようにした仕掛け人

人気のHMB(β‐ヒドロキシ-βメチル酪酸)を、日本で食品として使えるようにした仕掛け人がいます。

何を隠そう、この私もその一人です。実際の申請作業を行ったのはサプリメント業界の影武者であるバイオヘルスリサーチ社の故・大濱宏文先生と池田秀子先生で、お二人の尽力による非常に大きな功績といえるでしょう。

私はかつて米国の大手製薬会社アボット・ラボラトリーズに在籍し、病態別栄養剤を世界に広めるビジネス・デベロップメントの仕事をしておりました。
※詳しい経歴はこちら→https://www.dnszone.jp/magazine/2018/16537

当時アボット社では、HMBを主原料とし、褥瘡(床ずれ)などの創傷治癒を目的とした病態別栄養剤を世界展開していました。その中で唯一、日本だけ、HMBの食品としての使用が認められておらず、輸入することができませんでした。そこで、私がお二人に相談を持ち掛けたのでした。20065月のことです。

通常、HMBのような新規化合物質を食品として使用する許可を得るには、10年ほどかかります。しかしHMBは、2年という異例の早さで食品として許可されました。その裏には、我が国の医薬品医療機器等法(旧薬事法)という法律に関するお二人の深い知識と経験から編み出された、緻密な戦略がありました。

■「食薬区分」とは?

事の偉大さを理解するには、まずは旧薬事法に基づいて医薬品と食品を分ける「食薬区分」について、知る必要があります。

我が国における医薬品と食品成分(非医薬品)の区分は、昭和4661日に「無承認無許可医薬品の指導取り締まりについて」(薬発第476号)という通知に基づいています。これを通称「ヨンロク通知」といいます。

当初はビタミンやミネラルなどの栄養素も医薬品に区分されましたが、その後の規制緩和によって食品扱いになっています。ただしその動きの中で、今も数々の栄養素が医薬品扱いのままになっているのです。例えば、単なるアミノ酸で海外ではサプリメントとして売られているタウリンが、わが国ではいまだに医薬品扱いになっているのも、このヨンロク通知の名残です。

食薬区分で医薬品扱いになっていた物質の一つに、体内に存在するアミノ酸誘導体で、脂質代謝において重要な役目を担うL-カルニチンがありました。今はサプリメントとして多くのバーニング系サプリに使われていますが、2002年にそれを可能にしたのがお二人です。L-カルニチンの大手であるロンザ社(スイス)が規制緩和を仕掛け、3年という異例のスピードで実現させたのです。

しかし食薬区分上、HMBは医薬品のリストにも非医薬品のリストにも載っていませんでした。つまり、まったくの新規物質。その点、L-カルニチンの時とはわけが違います。

20071030日、HMBを非医薬品扱いにする申請書が、アボット社から厚生労働省に提出されました。アボット社が保有していたHMBの安全性データ(体内動態試験、急性毒性試験、遺伝毒性試験、食経験など)は、医薬品レベルのもの。それを駆使して「HMBはあくまでも安全な食品である」と主張した申請書を書き上げたのです。その結果、申請から約1年3カ月という異例の早さで、20092月、HMBが非医薬品物質として認められました。

しかし、もう一つのハードルがありました。それは、HMBは「食品」なのか、それとも「食品添加物」なのか、という食品衛生法上の区別です。増粘剤や乳化剤に用いられる物質が食品添加物に相当するため、例え非医薬品として認められていても、通常は申請と審査に10年程度の時間がかかってしまいます。

そこでHMBの食薬区分の申請書において、私達は「HMBはあくまでも食品である」と主張し、それをしっかりとした形で立証しました。これにより、HMBは異例の早さでサプリメントとして使えるようになったのです。

さらに、武勇伝は続きます。

■β-アラニン解禁にも働きかける

最近、わが国でもβアラニンがサプリメントとして出回り始めました。これは米国のNatural Alternative International Inc.NAI社)の働きかけに対し、池田さんが動いたことがきっかけです。

今まではβアラニンをサプリメントとして使えなかった我が国では、乳酸の酸を中和するカルノシンを筋中に蓄積させるには、鶏肉などからの抽出物であるイミダゾールジペプチドをサプリメントとして摂取するしかありませんでした。しかしこの規制緩和によって、今は安価で無味無臭のβアラニンが主流になりつつあります。

L-カルニチン(ロンザ社)、HMB(アボット社)、βアラニン(NAI社)。歴史的な食薬区分の規制緩和は、そもそも外圧によるものです。

当然ながらビジネスチャンスを狙った面はありますが、これまで、外資がお金と時間をかけて門戸を開いてきたのは確かなこと。その結果、海外では当たり前のように使われている効果の高いスポーツサプリメントを、日本のアスリートが使えるようになったのは間違いのない事実です。

我が国の医・食行政は、今も閉ざされています。そして国内には、マユツバものをマーケティング力で売り込む会社や、古き食薬区分にしがみついてビジネスを続けている会社がいまだ多くあります。彼らにはもう少し規制緩和に投資し、日本人アスリートのレベルアップに貢献してほしいものです。

HMBタブレット

【1食(6粒)あたり】

エネルギー:6.6kcal、たんぱく質:0g、脂質:0.1g、炭水化物:1.4g、食塩相当量:0.005g、HMBカルシウム:1,500㎎(HMBとして1,200㎎)

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青柳 清治

青柳 清治 │ Seiji_Aoyagi

栄養学博士、(株)DNS 執行役員 
米国オキシデンタル大学卒業後、㈱協和発酵バイオでアミノ酸研究に従事する中で、イリノイ大学で栄養学の博士号を取得。以降、外資企業で栄養剤ビジネス、商品開発の責任者を歴任した。日本へ帰国後2015年から、ウェアブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店・㈱ドームのサプリメントブランド「DNS」にて責任者を務める。2020年より分社化した㈱DNSでサイエンティフィックオフィサーを務める。

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