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競技パフォーマンスUP

Vol.4 「データ」×「食事」 いわきFCメソッドの根幹-前編-

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Vol.4 「データ」×「食事」 いわきFCメソッドの根幹-前編-

Vol.4 「データ」×「食事」 いわきFCメソッドの根幹-前編-

DNS栄養士・田中初紀が、Team DNSのサッカークラブ「いわきFC」のニュートリション(栄養)サポートについてのあれこれを、赤裸々に(!?)綴ります。かつてチームの中にいたからこそ見えたもの、感じたこと。そして選手達の素顔に触れながら、アスリートのパフォーマンスアップに有益な栄養情報をお伝えしていきます。

データを通じた「見える化」で、成長を実現する。

今回は「データと食事」について、書いていこうと思います。

いわきFCは、チームドクターである順天堂大の齋田良知先生の主導で、身体に関わるさまざまなデータを収集。そこから得た情報をもとに、選手それぞれにパーソナライズした対応を行っています。

具体的には、血液検査や体組成変化のデータを追うことで、「IN」(食事量、食事の質、食事の組合せ、消化、吸収など)」と「OUT」(基礎代謝、運動、排せつ、ケガや病気など)の関連性を見ています。

例えば、たんぱく質や鉄が不足している状態では、トレーニングでどんなに追い込んでも筋肉がつきにくかったり、疲れやすかったり、本来発揮できるはずのパフォーマンスが発揮できなかったりすることがあります。

逆に栄養が満たされた状態にあると、身体は十分な材料を備えているので、フル稼働が可能になります。血液検査は、この部分を明確に数値で示してくれます。合わせて、食事で摂った栄養素で実際にどう身体が変化したかを見るため、体重、体脂肪率、筋肉量などを常時モニタリング(図1)し、分析を行っています。

図1.見える化した体組成データ

 

データを通じて選手の身体を「見える化」することで、現状の課題や問題点、そして成長に必要な材料を、より具体的に把握できます。それが、選手達の成長につながります。

■ターゲットにしている指標は「骨格筋量」。

身体の状態を把握できる指標はさまざま。いわきFCは、そのうちいくつかにフォーカスして数字を追っています。

いわきFCといえば「筋トレ集団」。そう言われることがよくあります。実際に筋トレ=ストレングストレーニングをかなりの頻度で行っていますし、しっかりと結果も求めています。

ストレングストレーニングの効果を見る一つの指標に「骨格筋量」があります。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんので、解説します。

筋肉には骨格に沿って付き、身体を動かす「骨格筋」、内臓を作る「平滑筋」、心臓を作る「心筋」があります。いわきFCがフォーカスしているのは、筋肉の中でも身体を動かす筋肉である骨格筋の量です。

骨格筋量の測定は週1回、オフ明けの日に行います。同時にデータとして取れるため、体脂肪率も見ますが、それほど重視しません。体脂肪率が高く、パフォーマンスに影響を及ぼしている選手には声がけを行ったり、絞るべく働きかけることはありますが、あくまでおまけ程度。重きを置いているのは筋肉です。

いわきFCは2018年時点で、骨格筋量の目標値(表1)を下記のように設定していました。

表1.骨格筋量の目標値

MAX測定とはトレーニングの効果を定期的に測定する、いわば「実力テスト」のようなもの。種目はジム内で行う「スクワット/ベンチプレス/クリーン/懸垂」、フィールドで行う「立ち幅跳び/プロアジリティ/YO-YOテスト/10m-20m-50m走」などの種目があります。これら数値を向上させることが、90分間走り続けられること、当たり負けしないこと、ジャンプで競り負けないこと、そして球際の強さなどにつながってくると考えています。

参考にある選手の2018年上半期の骨格筋量の変化(図2)をお見せしたいと思います。

図2.ある選手の2018年上半期の骨格筋量の変化

血液検査データにおいて重視しているもの。

生化学データである血液検査は3カ月に一度実施しています。

総合的に健康を評価しつつ、その中でも身体作りやパフォーマンス、傷害予防に関わってくる指標として着目していたのが「総たんぱく(TP/ヘモグロビン(HGB/貯蔵鉄(Fer/ EPA/AA /ビタミンD25(OH)D)」(表2)の5つです。

表2.血液検査の目標値 

それぞれ解説していきます。

TPは、血中に含まれるたんぱくの総量のことで、栄養状態や脱水の有無を確認できます。HGBは赤血球に含まれるヘムたんぱく質のこと。酸素の運搬役であり、減っていると貧血を起こす可能性があります。

Ferは、鉄を貯蔵する体内のタンパク質のこと。体内の鉄分が不足する際、まず貯蔵鉄であるフェリチン、次に血液中の血清鉄、最後にヘモグロビンが減少していきます。そのため、血清フェリチン濃度、血清鉄、ヘモグロビンをモニタリングし、貧血を引き起こす前の「鉄欠乏」をチェックします。

EPA/AA比は、血中のエイコサペンタエン酸(EPA)とアラキドン酸(AA)の比率のことこの数値を高く保つことで、酸素供給能力の向上や筋肉の痛み・炎症の抑制(※1)が期待できます。そして25(OH)Dは、血中に含まれるビタミンDの量を表します。

ビタミンDはカルシウムやリンの吸収に関わり、骨代謝を促進する他、免疫力を向上させまる効果があります。さらに近年、血中のビタミンD濃度を高く保つことで疲労骨折、肉離れのリスクを低減できる(※2)として、指標としての注目が高まっています。

選手を最高の状態に導くため、必要な情報はチームからさまざまな形で提供されています。目標値は常に数字として見ることができ、達成未達の評価は一目瞭然。選手達は逃げることができません。

とはいえ、最終的に大事なのは目標値の達成ではなく、サッカーにおけるパフォーマンス向上。数字がすべてではありませんし、目標値はあくまで一つの指標です。そのため、選手の体調やパフォーマンスレベルをコーチやトレーナー、ドクターと確認しながら、達成をサポートしていきます。

現状の課題解決のため、栄養摂取のノウハウを選手それぞれが実践できる形に落とし込み、寄り添うこと。それが、私に課せられたミッションだと思っています。

後編に続く



田中 初紀

田中 初紀 │ Hazuki Tanaka

栄養士
東京農業大学卒業。2017年株式会社ドーム入社後、サプリメント事業部、ドームアスリートハウスを経て、2020年より株式会社DNSブランドマーケティング部兼デジタルマーケティング部に所属。アスリートや健康の保持・増進を目指す方への食事指導のほか、自社ブランドサイトにて、チーム帯同レポートや食事コンテンツに関わる記事執筆を行う。チームサポートではいわきFC、NECグリーンロケッツ東葛、福岡大学サッカー部を担当。自身も5歳から少林寺拳法に打ち込む現役アスリート。一児の母として、子育てにも奮闘中。

【参考文献】

  • ※1.Eisuke Ochi and Yosuke Tsuchiya, Eicosapentaenoic Acid (EPA) and Docosahexaenoic Acid (DHA) in Muscle Damage and Function,Nutrients 2018, 10(5), 552
  • ※2.Rebolledo BJ , Bernard JA , Werner BC , et al. The association of vitamin D status in lower extremity muscle strains and core muscle injuries at the National Football League combine. Arthroscopy 2018;34:1280–5.
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DNS栄養士・田中初紀が、Team DNSのサッカークラブ「いわきFC」のニュートリション(栄養)サポートについてのあれこれを、赤裸々に(!?)綴ります。かつてチームの中にいたからこそ見えたもの、感じたこと。そして選手達の素顔に触れながら、アスリートのパフォーマンスアップに有益な栄養情報をお伝えしていきます。

データを通じた「見える化」で、成長を実現する。

今回は「データと食事」について、書いていこうと思います。

いわきFCは、チームドクターである順天堂大の齋田良知先生の主導で、身体に関わるさまざまなデータを収集。そこから得た情報をもとに、選手それぞれにパーソナライズした対応を行っています。

具体的には、血液検査や体組成変化のデータを追うことで、「IN」(食事量、食事の質、食事の組合せ、消化、吸収など)」と「OUT」(基礎代謝、運動、排せつ、ケガや病気など)の関連性を見ています。

例えば、たんぱく質や鉄が不足している状態では、トレーニングでどんなに追い込んでも筋肉がつきにくかったり、疲れやすかったり、本来発揮できるはずのパフォーマンスが発揮できなかったりすることがあります。

逆に栄養が満たされた状態にあると、身体は十分な材料を備えているので、フル稼働が可能になります。血液検査は、この部分を明確に数値で示してくれます。合わせて、食事で摂った栄養素で実際にどう身体が変化したかを見るため、体重、体脂肪率、筋肉量などを常時モニタリング(図1)し、分析を行っています。

図1.見える化した体組成データ

 

データを通じて選手の身体を「見える化」することで、現状の課題や問題点、そして成長に必要な材料を、より具体的に把握できます。それが、選手達の成長につながります。

■ターゲットにしている指標は「骨格筋量」。

身体の状態を把握できる指標はさまざま。いわきFCは、そのうちいくつかにフォーカスして数字を追っています。

いわきFCといえば「筋トレ集団」。そう言われることがよくあります。実際に筋トレ=ストレングストレーニングをかなりの頻度で行っていますし、しっかりと結果も求めています。

ストレングストレーニングの効果を見る一つの指標に「骨格筋量」があります。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんので、解説します。

筋肉には骨格に沿って付き、身体を動かす「骨格筋」、内臓を作る「平滑筋」、心臓を作る「心筋」があります。いわきFCがフォーカスしているのは、筋肉の中でも身体を動かす筋肉である骨格筋の量です。

骨格筋量の測定は週1回、オフ明けの日に行います。同時にデータとして取れるため、体脂肪率も見ますが、それほど重視しません。体脂肪率が高く、パフォーマンスに影響を及ぼしている選手には声がけを行ったり、絞るべく働きかけることはありますが、あくまでおまけ程度。重きを置いているのは筋肉です。

いわきFCは2018年時点で、骨格筋量の目標値(表1)を下記のように設定していました。

表1.骨格筋量の目標値

MAX測定とはトレーニングの効果を定期的に測定する、いわば「実力テスト」のようなもの。種目はジム内で行う「スクワット/ベンチプレス/クリーン/懸垂」、フィールドで行う「立ち幅跳び/プロアジリティ/YO-YOテスト/10m-20m-50m走」などの種目があります。これら数値を向上させることが、90分間走り続けられること、当たり負けしないこと、ジャンプで競り負けないこと、そして球際の強さなどにつながってくると考えています。

参考にある選手の2018年上半期の骨格筋量の変化(図2)をお見せしたいと思います。

図2.ある選手の2018年上半期の骨格筋量の変化

血液検査データにおいて重視しているもの。

生化学データである血液検査は3カ月に一度実施しています。

総合的に健康を評価しつつ、その中でも身体作りやパフォーマンス、傷害予防に関わってくる指標として着目していたのが「総たんぱく(TP/ヘモグロビン(HGB/貯蔵鉄(Fer/ EPA/AA /ビタミンD25(OH)D)」(表2)の5つです。

表2.血液検査の目標値 

それぞれ解説していきます。

TPは、血中に含まれるたんぱくの総量のことで、栄養状態や脱水の有無を確認できます。HGBは赤血球に含まれるヘムたんぱく質のこと。酸素の運搬役であり、減っていると貧血を起こす可能性があります。

Ferは、鉄を貯蔵する体内のタンパク質のこと。体内の鉄分が不足する際、まず貯蔵鉄であるフェリチン、次に血液中の血清鉄、最後にヘモグロビンが減少していきます。そのため、血清フェリチン濃度、血清鉄、ヘモグロビンをモニタリングし、貧血を引き起こす前の「鉄欠乏」をチェックします。

EPA/AA比は、血中のエイコサペンタエン酸(EPA)とアラキドン酸(AA)の比率のことこの数値を高く保つことで、酸素供給能力の向上や筋肉の痛み・炎症の抑制(※1)が期待できます。そして25(OH)Dは、血中に含まれるビタミンDの量を表します。

ビタミンDはカルシウムやリンの吸収に関わり、骨代謝を促進する他、免疫力を向上させまる効果があります。さらに近年、血中のビタミンD濃度を高く保つことで疲労骨折、肉離れのリスクを低減できる(※2)として、指標としての注目が高まっています。

選手を最高の状態に導くため、必要な情報はチームからさまざまな形で提供されています。目標値は常に数字として見ることができ、達成未達の評価は一目瞭然。選手達は逃げることができません。

とはいえ、最終的に大事なのは目標値の達成ではなく、サッカーにおけるパフォーマンス向上。数字がすべてではありませんし、目標値はあくまで一つの指標です。そのため、選手の体調やパフォーマンスレベルをコーチやトレーナー、ドクターと確認しながら、達成をサポートしていきます。

現状の課題解決のため、栄養摂取のノウハウを選手それぞれが実践できる形に落とし込み、寄り添うこと。それが、私に課せられたミッションだと思っています。

後編に続く



田中 初紀

田中 初紀 │ Hazuki Tanaka

栄養士
東京農業大学卒業。2017年株式会社ドーム入社後、サプリメント事業部、ドームアスリートハウスを経て、2020年より株式会社DNSブランドマーケティング部兼デジタルマーケティング部に所属。アスリートや健康の保持・増進を目指す方への食事指導のほか、自社ブランドサイトにて、チーム帯同レポートや食事コンテンツに関わる記事執筆を行う。チームサポートではいわきFC、NECグリーンロケッツ東葛、福岡大学サッカー部を担当。自身も5歳から少林寺拳法に打ち込む現役アスリート。一児の母として、子育てにも奮闘中。

【参考文献】

  • ※1.Eisuke Ochi and Yosuke Tsuchiya, Eicosapentaenoic Acid (EPA) and Docosahexaenoic Acid (DHA) in Muscle Damage and Function,Nutrients 2018, 10(5), 552
  • ※2.Rebolledo BJ , Bernard JA , Werner BC , et al. The association of vitamin D status in lower extremity muscle strains and core muscle injuries at the National Football League combine. Arthroscopy 2018;34:1280–5.