競技パフォーマンスUP
DNS栄養士・田中初紀が、Team DNSのサッカークラブ「いわきFC」のニュートリション(栄養)サポートについてのあれこれを、赤裸々に(!?)綴ります。かつてチームの中にいたからこそ見えたもの、感じたこと。そして選手達の素顔に触れながら、アスリートのパフォーマンスアップに有益な栄養情報をお伝えしていきます。
~前編を読む~
後編では、骨格筋量をアップさせ、血液検査データを改善するための食事とサプリメントの摂取方法について書いていきます。
以前の記事でも書きましたが「これを食べたから骨格筋量がUPする!」なんて魔法のような食べ物はありません。
トレーナーが科学的根拠に基づいたトレーニングプログラムを組み、選手が地道なトレーニングを積み重ね、適切な栄養補給を行い、十分な休養を取る。それにより、筋肉は少しずつ少しずつ積み上げられていきます。
ですから、食事だけで何とかできるとは思っていません。
選手達がトレーニングしている時の私は、ただただ見守るばかり。トレーニングが終わったら、栄養補給のベストタイミングを逃さないよう、すかさずプロテインやR4を飲むよう声がけしていました。選手達も慣れていますから、私がいちいち言わなくても、自主的に飲んでくれる選手が大半。そのため、1年目の選手やトレーニングで追い込まれてヘロヘロになっている選手にこそ声掛けすることを意識していました。
そして1日を通しての栄養補給では、必要なエネルギーをしっかり満たしてあげることを重視しつつ、やはり筋肉の材料になるたんぱく質をしっかり摂ってもらうようにメニューを組んでいました。
DNSはアスリートに、1日に体重1㎏当たり2gのたんぱく質を摂ることを推奨していますので、食事でそれを補っていきました。1食の中で主菜を2品組み合わせ、さまざまな食材からたんぱく質を補えるよう意識しました。
それでも栄養素を摂るのが難しいタイミングはあります。そんな時は迷うことなく、サプリメントのチカラを借ります。
次に、血液検査においてフォーカスしている5つの項目へのアプローチを紹介していきます。
TP(総たんぱく)、HGB(ヘモグロビン)、Fer(フェリチン)は栄養素で見ると、たんぱく質と大きな関わりがあります。そのため、たんぱく質の目標摂取量を確実に摂らせること、そしてタイミングを大切にしています。
摂取量が目標量を上回り、十分に摂れている。それなのに血液検査データを見ると数値が芳しくないことが以前ありました。その場合は1回の摂取量を多くせず、分散した頻回摂取にして改善していきました。
Ferの材料は鉄ですので、食事で積極的に鉄分を補うようにします。血液検査データを見るとFerの低い選手は多くいますが、FeやHGBまで落ちている選手はほとんどいません。
ハードトレーニングが続く時期や夏はFeやHGBまで落ちてしまい、貧血症状が出る選手が、数名ですがいました。鉄分はたんぱく質やビタミンCと一緒に摂ることで吸収を高められるため、組み合わせる野菜などにも気を使いつつ、鉄を多く含むカツオや鰯、レバー、あさり、納豆などを献立に入れたり、ミネラルをサプリメントでプラスしたり。時にはコーチ陣と相談し、トレーニング強度を調整したこともありました。
鉄を摂ってすぐにFerが上がることはありませんが、身体の中に十分に鉄が存在していれば貯蔵されていきます。地道に蓄積させていくことが大切です。
そしてEPA/AA比を向上させるため、さばやいわし、あじなどの青魚を味つけや調理法を変え、毎日食べても飽きが来ないように気をつけつつ、朝昼夕の食事で一品以上を必須で出していました。とはいえ選手達の肉の消費も多いので、どうしてもAA(アラキドン酸)値が高くなる傾向にあり、EPA(エイコサペンタエン酸)はさらに摂る必要がありました。そのため、全選手必須アイテムとして、サプリメントを最大限に活用しました。EPA/AA比は、EPAを摂らせるとしっかりと数値が上がってきます。安心してモニタリングしていられる項目でした。
ビタミンDは紫外線を浴びることで肌でも作られるので、一般的に夏場は安定した数値を維持することができます。しかし肌の露出が減り、日照時間も短くなる冬場は減少する傾向があります。いわきFCでも夏場は安定した数値が出て、冬場は減少していました。
そのため、ビタミンDを多く含む鮭やしらす、きのこ類を積極的にメニューの中で使いました。齋田先生も「ビタミンDのモニタリングは傷害予防に紐づく」とおっしゃっていましたし、私自身も不足させてはいけない項目として重視していました。そこで食事だけでなく、サプリメントのチカラも借りて補っていました。
このように、血液データの改善のため、それぞれの栄養素を意識的に摂るよう働きかけていました。しかし、摂ってもそう簡単には上がってきてくれないこともありました。
そんな時は、チームドクターである齋田先生やトレーナー、栄養士メンバーに相談し、意見をいただきながらいろいろなことを試しました。データとにらめっこしていると、ついつい数値を上げることがゴールであるかのように、目標をすり替えてしまうこともありました。今思えば、選手たちにプレッシャーをかけてしまっていたのではないかと反省する面もあります。上手くいったこと、いかなかったこと。すべてひっくるめて、サポートは私自身の学びにつながったと実感しています。
次回は、鍛錬期と食事について書きたいと思います。
栄養士
東京農業大学卒業。2017年株式会社ドーム入社後、サプリメント事業部、ドームアスリートハウスを経て、2020年より株式会社DNS OMO Div兼マーケティングDivに所属。アスリートや健康の保持・増進を目指す方への食事指導のほか、自社ブランドサイトにて、チーム帯同レポートや食事コンテンツに関わる記事執筆を行う。チームサポートではいわきFCを担当。自身も5歳から少林寺拳法に打ち込む現役アスリート。一児の母として、子育てにも奮闘中。
DNS栄養士・田中初紀が、Team DNSのサッカークラブ「いわきFC」のニュートリション(栄養)サポートについてのあれこれを、赤裸々に(!?)綴ります。かつてチームの中にいたからこそ見えたもの、感じたこと。そして選手達の素顔に触れながら、アスリートのパフォーマンスアップに有益な栄養情報をお伝えしていきます。
~前編を読む~
後編では、骨格筋量をアップさせ、血液検査データを改善するための食事とサプリメントの摂取方法について書いていきます。
以前の記事でも書きましたが「これを食べたから骨格筋量がUPする!」なんて魔法のような食べ物はありません。
トレーナーが科学的根拠に基づいたトレーニングプログラムを組み、選手が地道なトレーニングを積み重ね、適切な栄養補給を行い、十分な休養を取る。それにより、筋肉は少しずつ少しずつ積み上げられていきます。
ですから、食事だけで何とかできるとは思っていません。
選手達がトレーニングしている時の私は、ただただ見守るばかり。トレーニングが終わったら、栄養補給のベストタイミングを逃さないよう、すかさずプロテインやR4を飲むよう声がけしていました。選手達も慣れていますから、私がいちいち言わなくても、自主的に飲んでくれる選手が大半。そのため、1年目の選手やトレーニングで追い込まれてヘロヘロになっている選手にこそ声掛けすることを意識していました。
そして1日を通しての栄養補給では、必要なエネルギーをしっかり満たしてあげることを重視しつつ、やはり筋肉の材料になるたんぱく質をしっかり摂ってもらうようにメニューを組んでいました。
DNSはアスリートに、1日に体重1㎏当たり2gのたんぱく質を摂ることを推奨していますので、食事でそれを補っていきました。1食の中で主菜を2品組み合わせ、さまざまな食材からたんぱく質を補えるよう意識しました。
それでも栄養素を摂るのが難しいタイミングはあります。そんな時は迷うことなく、サプリメントのチカラを借ります。
次に、血液検査においてフォーカスしている5つの項目へのアプローチを紹介していきます。
TP(総たんぱく)、HGB(ヘモグロビン)、Fer(フェリチン)は栄養素で見ると、たんぱく質と大きな関わりがあります。そのため、たんぱく質の目標摂取量を確実に摂らせること、そしてタイミングを大切にしています。
摂取量が目標量を上回り、十分に摂れている。それなのに血液検査データを見ると数値が芳しくないことが以前ありました。その場合は1回の摂取量を多くせず、分散した頻回摂取にして改善していきました。
Ferの材料は鉄ですので、食事で積極的に鉄分を補うようにします。血液検査データを見るとFerの低い選手は多くいますが、FeやHGBまで落ちている選手はほとんどいません。
ハードトレーニングが続く時期や夏はFeやHGBまで落ちてしまい、貧血症状が出る選手が、数名ですがいました。鉄分はたんぱく質やビタミンCと一緒に摂ることで吸収を高められるため、組み合わせる野菜などにも気を使いつつ、鉄を多く含むカツオや鰯、レバー、あさり、納豆などを献立に入れたり、ミネラルをサプリメントでプラスしたり。時にはコーチ陣と相談し、トレーニング強度を調整したこともありました。
鉄を摂ってすぐにFerが上がることはありませんが、身体の中に十分に鉄が存在していれば貯蔵されていきます。地道に蓄積させていくことが大切です。
そしてEPA/AA比を向上させるため、さばやいわし、あじなどの青魚を味つけや調理法を変え、毎日食べても飽きが来ないように気をつけつつ、朝昼夕の食事で一品以上を必須で出していました。とはいえ選手達の肉の消費も多いので、どうしてもAA(アラキドン酸)値が高くなる傾向にあり、EPA(エイコサペンタエン酸)はさらに摂る必要がありました。そのため、全選手必須アイテムとして、サプリメントを最大限に活用しました。EPA/AA比は、EPAを摂らせるとしっかりと数値が上がってきます。安心してモニタリングしていられる項目でした。
ビタミンDは紫外線を浴びることで肌でも作られるので、一般的に夏場は安定した数値を維持することができます。しかし肌の露出が減り、日照時間も短くなる冬場は減少する傾向があります。いわきFCでも夏場は安定した数値が出て、冬場は減少していました。
そのため、ビタミンDを多く含む鮭やしらす、きのこ類を積極的にメニューの中で使いました。齋田先生も「ビタミンDのモニタリングは傷害予防に紐づく」とおっしゃっていましたし、私自身も不足させてはいけない項目として重視していました。そこで食事だけでなく、サプリメントのチカラも借りて補っていました。
このように、血液データの改善のため、それぞれの栄養素を意識的に摂るよう働きかけていました。しかし、摂ってもそう簡単には上がってきてくれないこともありました。
そんな時は、チームドクターである齋田先生やトレーナー、栄養士メンバーに相談し、意見をいただきながらいろいろなことを試しました。データとにらめっこしていると、ついつい数値を上げることがゴールであるかのように、目標をすり替えてしまうこともありました。今思えば、選手たちにプレッシャーをかけてしまっていたのではないかと反省する面もあります。上手くいったこと、いかなかったこと。すべてひっくるめて、サポートは私自身の学びにつながったと実感しています。
次回は、鍛錬期と食事について書きたいと思います。
栄養士
東京農業大学卒業。2017年株式会社ドーム入社後、サプリメント事業部、ドームアスリートハウスを経て、2020年より株式会社DNS OMO Div兼マーケティングDivに所属。アスリートや健康の保持・増進を目指す方への食事指導のほか、自社ブランドサイトにて、チーム帯同レポートや食事コンテンツに関わる記事執筆を行う。チームサポートではいわきFCを担当。自身も5歳から少林寺拳法に打ち込む現役アスリート。一児の母として、子育てにも奮闘中。