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圧倒的フィジカルで実現する「世界基準のフットボール」   ~法政オレンジ・モンスター化プロジェクト Part.2

圧倒的フィジカルで実現する「世界基準のフットボール」
~法政オレンジ・モンスター化プロジェクト Part.2

今年度から安田秀一総監督/有澤玄ヘッドコーチによる新体制となった、法政大学アメリカンフットボール部オレンジ。今シーズンはこれまでのスタイルを一新。フィジカルとファンダメンタルを軸に据えた「世界基準のフットボール」を目指し、進化を続けている。

■しっかり食べられている選手ほど、いい結果が出ている。

有澤玄ヘッドコーチ
有澤玄ヘッドコーチ

春のシーズンは試合を減らして基本技術の習得に勤しみ、夏もファンダメンタルに徹した。そして9月に入り、本番となる秋のシーズンが開幕。チームは立教大学との開幕戦で確実に勝利を収めるも、第2節の中央大学戦を落とす。だが3戦目の日本体育大学戦、第4戦の明治大学戦に大勝し、再び上昇気流に乗っている。

今年のチーム方針として、まず徹底しているのが安全管理だ。ケガを最小限にとどめるには、しっかりとフィジカルトレーニングを積んで力強い身体を作ることが欠かせない。有澤玄ヘッドコーチは語る。

「単純に、負傷者が少ないチームは強いです。試合中にケガ人が出た時はレフリータイムアウトになりますが、僕のこれまでの経験から言うと、レフリータイムアウトの数は勝ち負けと確実に比例していて、数が少ないチームは強い。今年のチームは他の大学と比べてその回数が明らかに少なく、実際に負傷者も少ないです。

今年はシーズンインから一貫してウエイトトレーニングを行い、フィジカルアップを目指してきました。僕は今年からヘッドコーチに就任したので何とも言いにくいですが、昨年と比べて負傷者の数は圧倒的に減っている。フィジカルトレーニングの成果は間違いなく出ています」

有澤玄ヘッドコーチ
有澤玄ヘッドコーチ


世界基準のフィジカルを目指し、チームが行っているのが厳密な体重管理だ。学年・ポジションごとに身長比で適正体重を算出し、体重のノルマを設定。「短期増量プロジェクト」は、その中で特に体重をアップさせたい選手11人、主にOL(オフェンスライン:最前線で守備選手をブロックし、ボールキャリアをプロテクトする攻撃ポジション)とDB(ディフェンシブバック:相手レシーバーに対峙し、主にパスを取らせぬようカバーする守備ポジション)を対象としたものだ。

チーム全選手の1日の食事量の目安は1日4500kcal(プロテイン含む)。増量プロジェクトの対象選手はこれに1400kcalをプラスし、1日あたり計5900kcalがカロリー摂取の目安だ。そして1日あたりのたんぱく質摂取量は、体重(㎏)×2g(体重80㎏の選手の場合、160g)。1回あたりのたんぱく質摂取量は0.25g/体重kg(体重80㎏の選手の場合、20g)である。

大きなポイントは、たんぱく質と炭水化物を適切なタイミングで摂ること。選手達は3回の食事に加え、2~3時間おきに補食を摂り、空腹状態を作らないよう務めている。

【1日3食に加える補食の摂取例
:OL島田実紀(2年)の場合】

乳製品 2回(朝昼夜のどこかで)
PRO-X 1本(朝食時)
卵(全卵) 4個(毎食時)
おにぎり 1個(午後)
Bar-X 1本(午後)
カステラ 3切(練習2時間前~練習直後)
バナナ 2本(練習2時間前~練習直後)
BCAA 10g(練習前) 
プロテイン 2回(練習後にホエイSP、寝る前にSLOW
パワーシェイク 1本(夕食時)

5月末にスタートしたこのプロジェクトの成果について、株式会社ドームの管理栄養士・小井土幸恵は語る。

「全体的に言えば、OLや、TE(タイトエンド:OLとともに守備選手をブロックし、パスも捕球する攻撃の要)、LB(ラインバッカー:守備の2列目に位置し、ラン、パス両方で相手攻撃のボールキャリアを止める守備の中心ポジション)の選手の方が成果は出ています。スキルポジションであるDBの選手の中にはもともと食が細い選手もいますし、走る量が多い分、エネルギー消費も増える。そこは致し方ないと思っています。ただし、どのポジションにも共通して言えることが、大事なのはやはり食事やサプリメントをきっちり食べる、ということ。しっかり食べられている選手ほどいい結果が出ていることは、間違いありません」


■たんぱく質と炭水化物の摂取タイミングを意識したら、明らかに変わった。

今回のプロジェクトで大きな成果を残したのは、LB田中情也(1年)、TE吉田貴宏(2年)、OL島田実紀(2年)だ。特に島田は、スタートした5月末から10月までの間で体重は102.5㎏→105.4㎏に、骨格筋量が43.3㎏から45.7㎏に増え、体脂肪率は28%から26.3%に減った。そして9月に測定した40ヤード走のタイムは5秒34。5月に計測した時の5秒48から、0秒14縮まった。

島田実紀 選手
島田実紀 選手

「プロジェクトが始まってから、意識的に食事量を増やしました。一度に多く食べるのではなく、食事の回数を増やし、トータルでたくさん食べることを意識しました。正直、今まではそれほど意識していませんでしたが、食事の量やタイミングがいかに大事かを実感しています。今までは腹が減ったら食べて、という感じでしたが、たんぱく質と炭水化物の摂取タイミングをちゃんと意識したところ、明らかに身体が変わってきました」

常に高い意識を持ち、1日の中でさまざまな工夫をこらしながら、体重アップに務めていった。

「授業がある日は、まず朝食を自宅で食べてから片道2時間をかけて多摩キャンパスに行きます。途中のコンビニで、授業の合間に食べるためのおにぎりや乳製品を買っておきます。そして昼食は丼ものやから揚げなどです。昼は油が多くなりがちですが、増量しなければならないし、たんぱく質重視でそれほど気にしません。そして午後の授業の空き時間で、おにぎりやカステラ、Bar-X、あとはオレンジジュースとBCAAなどを摂ります。

授業が終わると夕方からの練習に備え、武蔵小杉のグラウンドに移動します。ウエイトトレーニングやミーティングをしてバナナ、BCAAを摂ってから練習して、終わったらバナナやカステラ、チームが用意する丼ものの補食を食べ、オレンジジュースとホエイSPを飲みます。そして自宅に帰ってから夕食。母親に頼んで、夜は生姜焼きや冷しゃぶなどにしてもらい、揚げ物などの油ものはなるべく避けました。そして夕食時には牛乳やヨーグルトなど乳製品を摂り、寝る前にSLOWを飲みます。

正直、食べるのがつらいこともありました。特に朝は、たくさん食べる習慣がなかったのできつかったです。でも、食事に対する意識は完全に変わりました。例えばコンビニで買う時には成分表示をしっかり見て選ぶようになりました。そしてプロジェクトが始まってから特に買うようになったのが、100%のオレンジジュース。質の高い糖質が摂れるので、助かります。練習やトレーニングの後に、プロテインに混ぜて飲むとおいしいです。1日かけて1本(1L)を飲み切ります」

島田実紀 選手
島田実紀 選手


■しっかりと力を蓄えた状態で戦っていける。

もっとパワーをつけたい。彼がそんな思いを強く持ったのは、6月の京都大戦がきっかけだった。

「ランプレーで京大の選手に思い切り押し込まれたことで、もっと体重とパワーを上げなくてはいけないと実感しました。当時は100㎏程度でしたが、OLユニットの中では小型ですし軽すぎます。他の選手に比べると身長がないので、持ち前のスピードを落とさず、相手をフィジカルで圧倒できるようになろうと思いました」

法政オレンジのOLの基準体重は2年生の場合、身長×0.6㎏。身長175㎝の島田選手の場合は105㎏となる。プロジェクト開始時の体重は102.5㎏。まずは基準値の105㎏に到達すべく、食事を増やして筋力トレーニングに励んだ。

トレーニング風景

「もともと横に速く動くプレーが得意でしたが、最近は少し遅くなったかもしれません。でも、その代わりに得られたものもたくさんあります。この秋のシーズンも、パワー負けすることはほとんどありません。6月から積み上げてきたことが、確実に自信につながっています。そしてスピードも、重さに身体が慣れれば戻ってくると思います。

とはいえ、試合に出ているOLの中ではまだ一番軽いですし、他のメンバーの力強さには及びません。特に4年生と比べると、まだまだ全然です。上半身の筋力はそんなに負けていないのですが、下半身は正直、差がある。だから、シーズン中でもしっかりトレーニングを行っていきます。トレーナーに相談したら、体重を増やすには尻の筋肉を大きくするのが一番の近道だそうです。だから、下半身のトレーニングは特に重点的にやっていきます。OLの基準として、2年生が身長×0.6㎏、4年生は身長×0.62㎏です。それで計算すると、自分の場合108.5㎏です。ただしこれは最低基準の重さなので、できるだけ早くそこまで持っていきたいです」

そんな彼の姿勢とこの先の展望について、有澤HCはこう語る。

「春からかなり伸びました。もともと機動力があるところにパワーと体重が加わって、さらによくなった印象があります。以前から身体を上手く使えているので、パワーがついたことでプレーに余裕が生まれたようにも思います。授業を受けるキャンパスが遠いのはウチのチーム全体の弱点ですが、上手く利用してほしいですね。移動時間中でも、スマホがあればいろいろなことができる。そこが勝負です。

今年という話ではありませんが、できれば、OLの平均体重は身長に関係なく120㎏ぐらいほしいです。今はまだ120㎏に達した選手はいませんが、十分なポテンシャルのある選手も多い。ぜひ、みんなで競い合ってほしいです。

今シーズンについては、負傷者が少ないことと、ファンダメンタルで相手チームに勝てているという意味で、確実に成果が出ています。ここから相手のレベルは上がっていきますが、しっかりと力を蓄えた状態で戦っていける。何より選手達が、秋のリーグ戦の間もどんどん成長していこうとしています。それが楽しみですし、伸びしろはいっぱいある。いや、伸びしろだらけです。シーズン最後の1プレーまで、成長し続けてほしいですね」

第5節の対戦相手は慶應義塾大。そこから早稲田大、日本大と続くリーグ戦はいよいよ佳境に入る。その先の大学日本一決定戦そして日本選手権を見すえ、選手達はパワーに磨きをかけ続ける。「世界基準のフットボール」の実現は、もうすぐだ。

法政オレンジ




Text:
前田成彦
DESIRE TO EVOLUTION編集長(株式会社ドーム コンテンツ企画部所属)。学生~社会人にてアメリカンフットボールを経験。趣味であるブラジリアン柔術の競技力向上、そして学生時代のベンチプレスMAX超えを目標に奮闘するも、誘惑に負け続ける日々を送る。お気に入りのマッスルメイトはホエイSP。

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