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Part 83  効率的なセット数とは

Part 83
効率的なセット数とは

  • 目  的:筋肥大・筋力向上の効率化
  • メリット:試行錯誤せず、最短で筋肥大・筋力向上を実現できる

人気のジムで「順番待ち」は日常的な風景だ。パワーラックやベンチプレス台が空くのを待っている人が列をなし、ときとしてトラブルが起こることもある。数セットで終わるのなら問題もないだろう。だが、一つのエクササイズを10セットも20セットも行うトレーニーも多い。まれにほんの数セットしか行わないトレーニーもいて、ジムに来たと思ったら数十分で帰ったりする。この違いは何なのだろうか。

◆セット数の歴史

「ボディビルの父」と呼ばれるユージン・サンドウ(1867-1925)は1エクササイズにつき10~15レップスを2~3セット、スローテンポで行う方法を推奨していたという。つまり現在のジムで行われているトレーニング法は、100年前と大差ないのである。

その後、アーノルド・シュワルツェネッガーの時代になると、一部位あたり20セットほど行うトレーニング法が主流となった。しかし鬼才アーサー・ジョーンズが登場し、ノーチラスマシンを発明して「このマシンを使えば1セットだけで十分だ」と主張した。それ以来、多セット派と少セット派で論争が繰り広げられている。

◆部位によって異なるセット数

適切なセット数について考える前に、検討すべきことがある。胸のトレーニングと背中のトレーニングを同じように考えて良いのだろうか。

胸の場合、筋肉は主に大胸筋だ。しかし背中の場合、広背筋や大円筋、僧帽筋、菱形筋、脊柱起立筋群など、数多くの筋肉が存在する。だから一つの筋肉について3セットとしても、胸の場合は「大胸筋のために3セット」でトータル3セットとなるが、背中の場合は「広背筋のために3セット、僧帽筋のために3セット、脊柱起立筋群のために3セット、となり、トータルでのセット数は明らかに変わってくる。

またスクワットやデッドリフトの場合、大腿四頭筋や内転筋、ハムストリング、大殿筋、脊柱起立筋群、腹筋群など、一つのエクササイズで数多くの筋肉を刺激することになる。背中のためにデッドリフトを3セット行った場合、同時に脚も3セット行っていることになる可能性があるわけだ。こういったことが話を複雑にしてしまう。

◆学術論文の世界では

学術的な世界でも、論争は続いている。Carpinelliらは、1セットでも多セットでも筋力や筋肥大において差はない、としている(※1)。それに対してKriegerらは、2~3セット行う方が、1セットに比べて筋力向上効果が46%高くなる、という結果を14の論文から導き出した(※2)。さらに4~6セット行なった方が1セットよりも筋肥大効果が高い、とするメタ・アナリシスを発表した(※3)。

これに対してCarpinelliらは「選んだ論文の質が悪い。サンプルサイズが少なく、各セットは限界まで行っておらず、コントロール群がない。フォーストレップスを行ったり行わなかったりなどの違いもあり、信頼できないメタ・アナリシスである」と反論している(※4)。

なお1エクササイズを10回10セット行うジャーマン・ボリューム・トレーニングにおいては、最近になって10セットやるよりも5セットの方がむしろ良い結果が出たという報告が出てきている(※5)。ジャーマン・ボリューム・トレーニングでは各セットにおいて限界まで行わないため、「余裕を持って5セット」という方法でも十分に効果があるということは、重要な知見といえそうだ。

◆追い込むなら1~2セット、追い込まないなら多セット

追い込めば1セットで効果がある、という主張や、追い込まずに5セットは10セットより効果がある、とする報告、一つのエクササイズは他の部位にも影響(疲労)を与えるということなどから考えると、少なくとも、一部位につきトータルで10セット行うのは多すぎる、という結論が導けそうだ。多くのシリアスなトレーニーは追い込んで10セット以上行っていることが多いのだが、明らかにやり過ぎである。

なお、ウェイトリフティング選手は多くのセットをこなすことが多いが、スナッチやジャークはネガティブで粘って下ろすことがない。主にポジティブの負荷となるため、筋肉への刺激は、実はそれほど強くはないのである。

◆具体的な推奨セット数

では、代表的な各部位における推奨セット数と種目数を紹介しよう。ウォームアップは抜きで、メインセットのみの記載となる。

・胸:上部を1~2種目、中~下部を1~2種目。トータル2~3種目。
1種目あたり1~2セット、トータル3~4セット

・背中:上から引く種目を1種目、前から引く種目を1種目、デッドリフトまたはシュラッグのどちらかを1種目
1種目あたり1~2セット、トータル4~6セット。

・肩:前部1種目、中部1種目、後部1種目
1種目あたり1~2セット、トータル3~5セット。

・腕:上腕二頭筋1~2種目、上腕三頭筋1~2種目
1種目あたり1~2セット、トータル2~4セット。

・脚:大腿四頭筋1~2種目、ハムストリング1~2種目、臀部1~2種目
1種目あたり1~2セット、トータル4~6セット。

・腹:クランチ系1種目、ツィスト系1種目
1種目あたり1~2セット、トータル2~3セット。

上記は追い込んで行う場合であるが、追い込まずに行う場合も各部位につき10セットを超えないように調整するといいだろう。これまで闇雲に追い込み、大量のセットをこなし、それでも効果が上がらないと悩んでいたウォリアーは、ぜひ参考にしてほしい。


(「効率的なレップス数とは」を読む)
  • ※1: Strength training. Single versus multiple sets.
    Sports Med. 1998 Aug;26(2):73-84.
  • ※2: Single versus multiple sets of resistance exercise: a meta-regression.
    J Strength Cond Res. 2009 Sep;23(6):1890-901. doi: 10.1519/JSC.0b013e3181b370be.
  • ※3: Single vs. multiple sets of resistance exercise for muscle hypertrophy: a meta-analysis.
    J Strength Cond Res. 2010 Apr;24(4):1150-9. doi: 10.1519/JSC.0b013e3181d4d436.
  • ※4: CRITICAL REVIEW OF A META-ANALYSIS FOR THE EFFECT OF SINGLE AND MULTIPLE SETS OF RESISTANCE TRAINING ON STRENGTH GAINS
    Med Sport 16 (3): 122-130, 2012DOI: 10.5604/17342260.1011393
  • ※5: Effects of a Modified German Volume Training Program on Muscular Hypertrophy and Strength.
    J Strength Cond Res. 2017 Nov;31(11):3109-3119. doi: 10.1519/JSC.0000000000001747.


Text:
Mr.D
栄養・サプリメント・トレーニングについて、聞けば全てに答えを持っているウォリアー界の生き字引的存在。数々の有名選手のパフォーマンスアップの裏にもMr.Dの存在が...。

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