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Dr.'s Eye   ~スポーツサプリメントと医薬品の境界線とは? ─前編─

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~スポーツサプリメントと医薬品の境界線とは? ─前編─

私はこれまで、スポーツ栄養学と臨床栄養学を勉強してきました。今回は、この二つをクロスオーバーしたサプリメントについてお話したいと思います。

日本には1996年より「リーバクト」という医薬品(薬価¥178.5/包)があります。この薬の中身、何だと思いますか? リーバクトは1包(4.15g)中に、L-イソロイシン952mg、L-ロイシン1904mg、L-バリン1144mgを含む分岐鎖アミノ酸製剤です。効能は「食事摂取量が十分にもかかわらず低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善」です。

イソロイシン、ロイシン、バリン。この3つの成分名を聞いて、ピンと来た方も多いのではないでしょうか。そう。リーバクトの成分は、スポーツサプリメントとして売られているBCAAと何ら変わりません。つまり、スポーツサプリメントと同じ成分のものが、医薬品として、しかも同じメーカーから発売されているのです。

なかなか衝撃的な事実です。そもそも、アミノ酸やビタミンなどの栄養素が医薬品として扱われていることは、わが国の歪んだ制度の象徴といえます。

また「アミノレバンEN」という医薬品(薬価¥461/包)もあります。この主原料はやはりBCAA(L-イソロイシン1923mg、L-ロイシン2037mg、L-バリン1602mg/50g包)で、その他に炭水化物、たんぱく質、脂質、アミノ酸、ビタミン、ミネラルを添加した、肝不全用の粉末の経口栄養剤です。効能は「肝性脳症を伴う慢性肝不全患者の栄養状態の改善」となっています。

「リーバクト」と「アミノレバンEN」。2016年には両製品とも、60億円程度の売り上げがあったようです。特にリーバクトは、スポーツサプリメントと同じような単純なアミノ酸製品であるのにもかかわらず、それが処方されると国の医療費が費やされていることになります。

果たして、それでいいのでしょうか。

そもそもBCAAは必須アミノ酸に分類され、体内では合成されません。そのため、筋たんぱく合成のためには食事やサプリメントから必須アミノ酸を摂取する必要があります。特に筋肉は人の身体を構成するたんぱく質の中でもBCAAの割合が高く(必須アミノ酸の約35%)、筋肉を作るにはBCAAをより多く補給せねばなりません。

また、BCAAはエネルギーを産生するクエン酸回路に取り込まれるので、エネルギー源ともなり、スポーツ栄養では多岐にわたって利用さているサプリメントです。スポーツ栄養で多く使われているプロテインの原料であるホエイも、BCAA含量が多い(約20%)ことがスポーツ栄養における利点とされています。

(後編へ続く)

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