競技パフォーマンスUP

俺達は、やり抜く。俺達は、圧倒的にデカくなる。そして必ず、奪い返す。フィジカルに復活を託す京都大学ギャングスターズ 前編

俺達は、やり抜く。俺達は、圧倒的にデカくなる。そして必ず、奪い返す。
フィジカルに復活を託す京都大学ギャングスターズ 前編

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競技パフォーマンスUP

俺達は、やり抜く。俺達は、圧倒的にデカくなる。そして必ず、奪い返す。フィジカルに復活を託す京都大学ギャングスターズ 前編

俺達は、やり抜く。俺達は、圧倒的にデカくなる。そして必ず、奪い返す。
フィジカルに復活を託す京都大学ギャングスターズ 前編

かつて大型選手をそろえ、大学アメリカンフットボール界を席巻。6度の大学日本一に輝いた名門・京都大学アメリカンフットボール部ギャングスターズ。しかし1996年度を最後に大学王座から遠ざかり、関西学生リーグで立命館大、関西学院大の後塵を拝す。それでも前進を続ける彼らはウエイトトレーニングへの取り組みを見直し、パワーあふれる大型選手を育成して復活を期す。彼らはいかなる改革によって大学王座を奪回せんとしているのか。西村大介監督、河田繁治フィジカルコーディネーター、南川太志ストレングスコーチに話を聞いた。
(※インタビューは、2016年9月に実施。)


■オーバーパワーされている状況を打破する

「ウチはご存じの通り国立大学で、高校時代にアメリカンフットボール経験のある選手は1割程度にすぎません。その経験者達も、私学の強豪大学のスポーツ推薦には引っかからなかった選手ばかり。昔も今も大半を占めるのは高校までアメフト未経験の選手です。高校時代にウエイトトレーニングをしっかりやってきた選手もほとんどいません。そのため、入部した時のベンチプレスのMAXが50㎏なんていい方。30㎏ぐらいの選手もいます。そのレベルから選手を育てねばならないのは、他校と比べ大きく劣るポイントです」

語るのは、2012年よりチームを率いる西村大介監督。京都大は伝統的に、アメフト経験はなくとも身体の大きな選手や運動センスの優れた選手を育てることで、強いチームを築いてきた。しかし、近年は多くのチームがウエイトトレーニングによるフィジカル強化に力を入れ、選手のサイズが大型化。かつて『パワーの京大』と呼ばれた彼らも近年はオーバーパワーされる状況が増え、1996年以来、関西学生リーグ優勝から遠ざかっている。


西村大介監督

「昨年のチャンピオンである立命館大や関西学院大の選手達は皆、大きい。特に立命館大の選手のサイズとパワーはすさまじく、近年は見た目だけで『これはかなわない…』と委縮してしまう面もありました。そんな状況を打破するため、あらためて身体作りを見直し始めたのが約3年前のことでした。

それまでは、アメリカンフットボールの実際の練習の中で当たり込んで身体を強くしていこう、という方針を立てていました。ウエイトトレーニングは個人任せで、必要な選手はやればいい、という形。チームとしてメニューと個人の数値を管理し、全員でトレーニングを行う機会はなく、サプリメントの摂取も特に勧めていませんでした。しかし、それではやはり勝てないことが、はっきりしてきました。試合で明らかなパワー負けをする状況が多々あり、ウエイトトレーニングによるフィジカル強化を、根本から考える必要に迫られてきました。

ではどうすれば、再び日本一を勝ち取ることができるのか。我々はまず、自分達の強みが何なのかをあらためて考えました。その結果わかったのが、ストロングポイントは『努力を継続する力』だということでした。選手達は受験勉強という楽しくもないことを、いろいろな誘惑のある中で、コツコツとやり抜いてきました。その『やり抜く』能力ならば、どこのチームにも対抗できる。そしてウエイトトレーニングは、その能力を生かせる最たるものではないかと。

しっかりと追い込んで、いいトレーニングをして、優れた栄養を摂り、質の高いリカバリーを行う。そのためには自己管理ができ、しっかりとトレーニングを続けられる力、すなわち『やり抜く』能力が欠かせません。それならば、しっかりとウエイトトレーニングに取り組むべきだと考えました」

全員で行うウエイトトレーニングをプログラムとして組み入れた結果、選手の意識は徐々に変化。
今は、ウエイトトレーニングは勝つために絶対必要なもの、というコンセンサスが確立されている。南川太志ストレングスコーチは語る。


南川太志ストレングスコーチ

「確かにアメリカンフットボールの練習でもパワーはつくし、身体も大きくなる。でも、あえてウエイトトレーニングに取り組むのは、それがアメリカンフットボールの選手にふさわしい身体作りに対して、最も効率的だから。トレーニングと休養と栄養摂取。このサイクルをしっかりと回していけば、身体は確実に大きくなります。そして正しいフォームでウエイトトレーニングができるようになれば、ボールを持って走ったり、ブロックをしたりタックルをしたり、という動きも間違いなく向上します」

しかし、だからといってウエイトトレーニングをひたすらこなせばいいのではない。そこにも、京都大ならではの事情が見え隠れする。

「高校まで大したスポーツ経験がなく、勉強ばかりしてきた京大生は、立命館大、あるいはDNSさんで昨年取り上げていた東海大ラグビー部の選手達などとは、育ってきた環境が明らかに違います。そもそも、1年ないし2年の浪人生活を経て入学してくる選手も多々いるわけで、基礎体力のレベルは低い。そんな選手達にハードなトレーニングを課し、疲労をため込ませた結果、シリアスなケガ人が続出するようなことがあってはいけない。また、ウエイトレーニングばかりに時間を取られ、戦術を練り上げる時間が大幅に減るのもよくない。

日本一を目指して毎年のチーム作りを行っていく中で、我々は我々なりの身体作りの方法を、本気で確立せねばなりません。今はまだ、その途中にある。だからこの1年や2年で、ウエイトトレーニングの成果が簡単に出るとは思っていません。一つの目安として、身体ができていない1回生から現在のトレーニングプログラムを経験した選手が、4回生でどこまで圧倒的に大きくなっているか。その結果を見つつ、トライ&エラーを重ねていく。我々なりのやり方が確立されるまでには、あと少しの時間が必要でしょう。

とはいえ、ここ数年で選手達の体つきが進化したのは確か。間違いなく大きくなり、扱う重量もどんどん増えている。これについては河田コーチ、南川コーチの功績が非常に大きい。2人のおかげで、ウエイトトレーニングの重要性を選手達にしっかりと認識させることができていると思います」(西村)


河田繁治フィジカルコーディネーター

ウエイトトレーニングだけでなく、栄養摂取の重要性についても周知させた。現在、ほとんどの選手は大学近辺で一人暮らしをしているが、彼らが質の高い栄養を摂取できるよう配慮。チームの拠点となるクラブハウスに食堂を備え、選手は管理栄養士の指導のもと作られた栄養価の高い食事を、朝と夜の2回摂ることができる。河田繁治フィジカルコーディネーターは語る。

「食べることの重要性は、トレーニングと同レベル。食事は確かに限られた予算の中でやりくりしていかねばなりませんが、今の練習量を見越し、どれぐらいの量の時にはどれだけの栄養摂取をすればいいのか、という目安を出していただき、それに沿って食べさせています。ポジションによっては身体の小さい子もいますから、そういった選手にはご飯の量を調節するなどして、たくさん食べるよう指導を行います。

補食についても練習前、そして場合によっては夕食後に提供しています。授業がある時期は生活を管理しきれない面があるので、特にチェックが必要な選手は個別に写真を撮って送らせ、アドバイスをするようにしています。そして、トレーニング後と練習後には、必ずプロテインを飲ませています」


■1回生は3カ月間、徹底してフォームを作る

年間のトレーニングプログラム作成にも、彼らが有数の受験難関校で、スポーツ推薦制度のない国立大学のチームであることが密接に関係してくる。

「チーム作りは例年、シーズン終了後にスタートします。新2年生~4年生はここから約12週間をトレーニング期間として、しっかりと身体を作ります。年間において最も強い負荷をかけて追い込むのがこの時期です。線形ピリオダイゼーションの考えに基づき、最初の2~3週間は低~中重量×ハイレップでレストを短く設定してスタート。まずは筋肥大と筋持久力の向上を狙い、そこから徐々に扱う重量を増やし、レップスを減らしていきます。トレーニング期間中にはビッグスリーなどいくつかの種目の測定を行いつつ、体組成をチェック。ポジション別に設定した目標の達成率を月ごとに確認し、体重と筋肉量を見ながら、強度を上げていきます」(河田)

トレーニング期間以降は、グラウンドでのスキル練習の割合が増える。そして3月に合宿、4月~5月にオープン戦をこなす。もちろんこの期間も、頻度と強度はやや落ちるがウエイトトレーニングはしっかりと行う。そして4月に入学した1回生が、5月にかけて入部してくる。

「1回生と2~4回生は筋力の差が大きいので、トレーニングは別に行います。今年から、1回生については5~7月の3カ月をかけ、フォームを固めさせることを徹底しています。もちろん今までやってないことはありませんが、システムとして設けたのは今年からです。

フォームの重要性は、今年1月にアメリカを視察して痛感したことでした。向こうの中、高生は体育の授業にウエイトトレーニングが組み込まれていますが、その際に基本的なフォーミングの指導を行っています。これはウチの1回生にぴったりだと思い、さっそく取り入れた次第です」(南川)

1回生でも身体が十分でき、アメリカンフットボールの動きを覚えていれば、トップチームの試合にピックアップされるケースもある。以前はより多くの1年生を積極的に起用していたが、近年、このような試みはできる限り行わないようにしている。


西村大介監督

「1回生の『こいつはいいぞ!』と思う選手を試合でどんどん使った結果、2回生~3回生までに大きなケガをして、成長が頭打ちになるケースがこれまで時々ありました。それでもスターターにふさわしい選手は引き上げるのですが、控えだけれど上に抜擢してみよう、ぐらいのレベルの選手は、なるべく使いません。身体がしっかりでき、4回生までケガをせずしっかりやれるだろう、という見込みがある選手のみ、引き上げるようにしています」(西村)

そして、春のオープン戦が終わった6~7月。2~4年生はこの時期に再びトレーニング期間を設け、身体作りを徹底的にやり直す。

「設定した重量を追いかけることは大切ですが、それを達成して満足しないことです。大事なのはあくまで、養ったパワーを実際のパフォーマンスに活かすこと。その点だけは履き違えないよう注意しています。数字を追うあまりケガをしては意味がありませんから、正しいフォームできちんと負荷をかけることを意識させています」(河田)

現行プログラムの導入後、実際に多くの選手がサイズアップした。

「今の2回生~3回生の身体は、入部当初からまったく変わっています。もともとのレベルが低いので偉そうなことは言えませんが、ベンチプレスの経験がない選手や、40~50㎏程度しか挙げられなかった選手が今は120㎏を挙げるとか、入部当初の体重が70㎏ぐらいだった選手が110~120㎏ぐらいまで大きくなる、といったケースは多々あります。伸びしろ的には、日本で一番かと(笑)。

コツコツと努力する能力は、京大生の大きな特徴。その点で、多くの選手が定めたプログラムに則って確実にサイズアップしていることが、今後大きな自信になってくる可能性は十分にあります」(西村)

(後編に続く)




Text:
前田成彦
DESIRE TO EVOLUTION編集長(株式会社ドーム コンテンツ企画部所属)。学生~社会人にてアメリカンフットボールを経験。趣味であるブラジリアン柔術の競技力向上、そして学生時代のベンチプレスMAX超えを目標に奮闘するも、誘惑に負け続ける日々を送る。お気に入りのマッスルメイトはホエイSP。

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かつて大型選手をそろえ、大学アメリカンフットボール界を席巻。6度の大学日本一に輝いた名門・京都大学アメリカンフットボール部ギャングスターズ。しかし1996年度を最後に大学王座から遠ざかり、関西学生リーグで立命館大、関西学院大の後塵を拝す。それでも前進を続ける彼らはウエイトトレーニングへの取り組みを見直し、パワーあふれる大型選手を育成して復活を期す。彼らはいかなる改革によって大学王座を奪回せんとしているのか。西村大介監督、河田繁治フィジカルコーディネーター、南川太志ストレングスコーチに話を聞いた。
(※インタビューは、2016年9月に実施。)


■オーバーパワーされている状況を打破する

「ウチはご存じの通り国立大学で、高校時代にアメリカンフットボール経験のある選手は1割程度にすぎません。その経験者達も、私学の強豪大学のスポーツ推薦には引っかからなかった選手ばかり。昔も今も大半を占めるのは高校までアメフト未経験の選手です。高校時代にウエイトトレーニングをしっかりやってきた選手もほとんどいません。そのため、入部した時のベンチプレスのMAXが50㎏なんていい方。30㎏ぐらいの選手もいます。そのレベルから選手を育てねばならないのは、他校と比べ大きく劣るポイントです」

語るのは、2012年よりチームを率いる西村大介監督。京都大は伝統的に、アメフト経験はなくとも身体の大きな選手や運動センスの優れた選手を育てることで、強いチームを築いてきた。しかし、近年は多くのチームがウエイトトレーニングによるフィジカル強化に力を入れ、選手のサイズが大型化。かつて『パワーの京大』と呼ばれた彼らも近年はオーバーパワーされる状況が増え、1996年以来、関西学生リーグ優勝から遠ざかっている。


西村大介監督

「昨年のチャンピオンである立命館大や関西学院大の選手達は皆、大きい。特に立命館大の選手のサイズとパワーはすさまじく、近年は見た目だけで『これはかなわない…』と委縮してしまう面もありました。そんな状況を打破するため、あらためて身体作りを見直し始めたのが約3年前のことでした。

それまでは、アメリカンフットボールの実際の練習の中で当たり込んで身体を強くしていこう、という方針を立てていました。ウエイトトレーニングは個人任せで、必要な選手はやればいい、という形。チームとしてメニューと個人の数値を管理し、全員でトレーニングを行う機会はなく、サプリメントの摂取も特に勧めていませんでした。しかし、それではやはり勝てないことが、はっきりしてきました。試合で明らかなパワー負けをする状況が多々あり、ウエイトトレーニングによるフィジカル強化を、根本から考える必要に迫られてきました。

ではどうすれば、再び日本一を勝ち取ることができるのか。我々はまず、自分達の強みが何なのかをあらためて考えました。その結果わかったのが、ストロングポイントは『努力を継続する力』だということでした。選手達は受験勉強という楽しくもないことを、いろいろな誘惑のある中で、コツコツとやり抜いてきました。その『やり抜く』能力ならば、どこのチームにも対抗できる。そしてウエイトトレーニングは、その能力を生かせる最たるものではないかと。

しっかりと追い込んで、いいトレーニングをして、優れた栄養を摂り、質の高いリカバリーを行う。そのためには自己管理ができ、しっかりとトレーニングを続けられる力、すなわち『やり抜く』能力が欠かせません。それならば、しっかりとウエイトトレーニングに取り組むべきだと考えました」

全員で行うウエイトトレーニングをプログラムとして組み入れた結果、選手の意識は徐々に変化。
今は、ウエイトトレーニングは勝つために絶対必要なもの、というコンセンサスが確立されている。南川太志ストレングスコーチは語る。


南川太志ストレングスコーチ

「確かにアメリカンフットボールの練習でもパワーはつくし、身体も大きくなる。でも、あえてウエイトトレーニングに取り組むのは、それがアメリカンフットボールの選手にふさわしい身体作りに対して、最も効率的だから。トレーニングと休養と栄養摂取。このサイクルをしっかりと回していけば、身体は確実に大きくなります。そして正しいフォームでウエイトトレーニングができるようになれば、ボールを持って走ったり、ブロックをしたりタックルをしたり、という動きも間違いなく向上します」

しかし、だからといってウエイトトレーニングをひたすらこなせばいいのではない。そこにも、京都大ならではの事情が見え隠れする。

「高校まで大したスポーツ経験がなく、勉強ばかりしてきた京大生は、立命館大、あるいはDNSさんで昨年取り上げていた東海大ラグビー部の選手達などとは、育ってきた環境が明らかに違います。そもそも、1年ないし2年の浪人生活を経て入学してくる選手も多々いるわけで、基礎体力のレベルは低い。そんな選手達にハードなトレーニングを課し、疲労をため込ませた結果、シリアスなケガ人が続出するようなことがあってはいけない。また、ウエイトレーニングばかりに時間を取られ、戦術を練り上げる時間が大幅に減るのもよくない。

日本一を目指して毎年のチーム作りを行っていく中で、我々は我々なりの身体作りの方法を、本気で確立せねばなりません。今はまだ、その途中にある。だからこの1年や2年で、ウエイトトレーニングの成果が簡単に出るとは思っていません。一つの目安として、身体ができていない1回生から現在のトレーニングプログラムを経験した選手が、4回生でどこまで圧倒的に大きくなっているか。その結果を見つつ、トライ&エラーを重ねていく。我々なりのやり方が確立されるまでには、あと少しの時間が必要でしょう。

とはいえ、ここ数年で選手達の体つきが進化したのは確か。間違いなく大きくなり、扱う重量もどんどん増えている。これについては河田コーチ、南川コーチの功績が非常に大きい。2人のおかげで、ウエイトトレーニングの重要性を選手達にしっかりと認識させることができていると思います」(西村)


河田繁治フィジカルコーディネーター

ウエイトトレーニングだけでなく、栄養摂取の重要性についても周知させた。現在、ほとんどの選手は大学近辺で一人暮らしをしているが、彼らが質の高い栄養を摂取できるよう配慮。チームの拠点となるクラブハウスに食堂を備え、選手は管理栄養士の指導のもと作られた栄養価の高い食事を、朝と夜の2回摂ることができる。河田繁治フィジカルコーディネーターは語る。

「食べることの重要性は、トレーニングと同レベル。食事は確かに限られた予算の中でやりくりしていかねばなりませんが、今の練習量を見越し、どれぐらいの量の時にはどれだけの栄養摂取をすればいいのか、という目安を出していただき、それに沿って食べさせています。ポジションによっては身体の小さい子もいますから、そういった選手にはご飯の量を調節するなどして、たくさん食べるよう指導を行います。

補食についても練習前、そして場合によっては夕食後に提供しています。授業がある時期は生活を管理しきれない面があるので、特にチェックが必要な選手は個別に写真を撮って送らせ、アドバイスをするようにしています。そして、トレーニング後と練習後には、必ずプロテインを飲ませています」


■1回生は3カ月間、徹底してフォームを作る

年間のトレーニングプログラム作成にも、彼らが有数の受験難関校で、スポーツ推薦制度のない国立大学のチームであることが密接に関係してくる。

「チーム作りは例年、シーズン終了後にスタートします。新2年生~4年生はここから約12週間をトレーニング期間として、しっかりと身体を作ります。年間において最も強い負荷をかけて追い込むのがこの時期です。線形ピリオダイゼーションの考えに基づき、最初の2~3週間は低~中重量×ハイレップでレストを短く設定してスタート。まずは筋肥大と筋持久力の向上を狙い、そこから徐々に扱う重量を増やし、レップスを減らしていきます。トレーニング期間中にはビッグスリーなどいくつかの種目の測定を行いつつ、体組成をチェック。ポジション別に設定した目標の達成率を月ごとに確認し、体重と筋肉量を見ながら、強度を上げていきます」(河田)

トレーニング期間以降は、グラウンドでのスキル練習の割合が増える。そして3月に合宿、4月~5月にオープン戦をこなす。もちろんこの期間も、頻度と強度はやや落ちるがウエイトトレーニングはしっかりと行う。そして4月に入学した1回生が、5月にかけて入部してくる。

「1回生と2~4回生は筋力の差が大きいので、トレーニングは別に行います。今年から、1回生については5~7月の3カ月をかけ、フォームを固めさせることを徹底しています。もちろん今までやってないことはありませんが、システムとして設けたのは今年からです。

フォームの重要性は、今年1月にアメリカを視察して痛感したことでした。向こうの中、高生は体育の授業にウエイトトレーニングが組み込まれていますが、その際に基本的なフォーミングの指導を行っています。これはウチの1回生にぴったりだと思い、さっそく取り入れた次第です」(南川)

1回生でも身体が十分でき、アメリカンフットボールの動きを覚えていれば、トップチームの試合にピックアップされるケースもある。以前はより多くの1年生を積極的に起用していたが、近年、このような試みはできる限り行わないようにしている。


西村大介監督

「1回生の『こいつはいいぞ!』と思う選手を試合でどんどん使った結果、2回生~3回生までに大きなケガをして、成長が頭打ちになるケースがこれまで時々ありました。それでもスターターにふさわしい選手は引き上げるのですが、控えだけれど上に抜擢してみよう、ぐらいのレベルの選手は、なるべく使いません。身体がしっかりでき、4回生までケガをせずしっかりやれるだろう、という見込みがある選手のみ、引き上げるようにしています」(西村)

そして、春のオープン戦が終わった6~7月。2~4年生はこの時期に再びトレーニング期間を設け、身体作りを徹底的にやり直す。

「設定した重量を追いかけることは大切ですが、それを達成して満足しないことです。大事なのはあくまで、養ったパワーを実際のパフォーマンスに活かすこと。その点だけは履き違えないよう注意しています。数字を追うあまりケガをしては意味がありませんから、正しいフォームできちんと負荷をかけることを意識させています」(河田)

現行プログラムの導入後、実際に多くの選手がサイズアップした。

「今の2回生~3回生の身体は、入部当初からまったく変わっています。もともとのレベルが低いので偉そうなことは言えませんが、ベンチプレスの経験がない選手や、40~50㎏程度しか挙げられなかった選手が今は120㎏を挙げるとか、入部当初の体重が70㎏ぐらいだった選手が110~120㎏ぐらいまで大きくなる、といったケースは多々あります。伸びしろ的には、日本で一番かと(笑)。

コツコツと努力する能力は、京大生の大きな特徴。その点で、多くの選手が定めたプログラムに則って確実にサイズアップしていることが、今後大きな自信になってくる可能性は十分にあります」(西村)

(後編に続く)