競技パフォーマンスUP

Part 75 瞬発力を高めるストップ&ゴー

Part 75 「瞬発力を高めるストップ&ゴー」

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Part 75 瞬発力を高めるストップ&ゴー

Part 75 「瞬発力を高めるストップ&ゴー」

  • 目  的:筋力向上、瞬発力向上
  • メリット:モーターユニット動員数の向上、安全性の高さ、静から動への動き

「パワーがある」と言えば、普通は力が強いことを指す。しかし厳密に言うと、パワーと筋力は別物である。パワーとは「筋力×速度」。すなわち力があるだけではダメで、それを爆発的に発揮できてはじめて「パワーがある」ということができるのだ。

ウォリアーのトレーニングは筋肥大や筋力向上を目指すことが多い。これがベースである。ベースとなる筋肉量・筋力を基に、パワーを増やしていくことが競技能力の向上につながっていく。

パワーを増やすために一般的に行われる方法が「プライオメトリクス」だ。筋肉や腱は急激に引き伸ばされると、断裂してしまわないように収縮しようとする特性がある。これを「伸張反射」と呼び、通常よりも強い力で収縮することができる。また筋肉や腱にはエラスチンという弾性を持つ繊維があり、これが引き延ばされると弾性エネルギーによりゴムが縮むように、強く収縮しようとする働きがある。
この働きを「SSC:Stretch-Shortening Cycle」と呼ぶ。たいていの場合、ジャンプする時には一度しゃがんでから一気に跳び上がる。これは無意識にSSCを利用しているのだ。

SSCを強調して通常より強いパワーを得ようとするトレーニングがプライオメトリクスであり、デプスジャンプやハードルホップ、拍手腕立て伏せなどが代表的なエクササイズである。

<デプスジャンプ>

<ハードルホップ>


■SSCの適用

しかし関節の強度に問題がある場合は、プライオメトリクスを行うことができない。ケガの危険があるからだ。また女性など筋力が弱い場合は、そもそもこれらのエクササイズを行うことができない。
そのような場合、エクササイズにおいてSSCを適用すればいい。具体的にはスクワットを行う際、一気にしゃがんでから、ボトムでスピーディーに切り返して立ち上がるようにするのだ。

<SSCによるスクワット>

あるいはベンチプレスの場合、胸で弾ませるのではなく、一気に下ろして胸の上数cmのところでスピーディーに切り返して持ち上げるのである。

<SSCによるベンチプレス>

この方法ならば使用重量を自由に設定できるため、ケガの危険性は少なくなる。


■ストップ&ゴーの適用

次に勧めたいのが「ストップ&ゴー」だ。これはボトムポジションで動作を静止させ、それから爆発的にウェイトを挙げる、という方法である。

スクワットでストップ&ゴーを行う場合について説明しよう。まずは普段使う重量(10回ギリギリできる程度の重量)の60%程度の重さのバーをセットする。そしてバーをゆっくりと下ろしてしゃがみ、ボトムポジションに達したら、そこで1秒ほど静止する。そして1秒経ったところで、爆発的に立ち上がるのだ。
立ち上がったら、またゆっくりとしゃがんでボトムで静止させ、1秒したら爆発的に持ち上げる。この繰り返しである。

<ストップ&ゴー スクワット>

6回程度行うと、疲労のため爆発的に立ち上がることができなくなる。そして粘らないと挙げられないようになったら、そこでセットを終了させる。ゆっくり挙げるのでは、ストップ&ゴーの意味がないのである。

ボトムで動作を静止させるエクササイズとしては、「ボックス・スクワット」も有効だ。これは適度な高さのボックスを用意して、その上にしゃがみ込み、尻がボックスに触れたら立ち上がる、というものだ。

<ボックス・スクワット>

ベンチプレスの場合は胸の上で静止させたり、フロアプレスとして床で静止させたりしてから行うのもいいだろう。

ストップ&ゴーにおいてはSSCを利用したエクササイズに比べ、「静から動」への動きを高められるメリットがある。スプリントにおけるスタートダッシュやPK時におけるキーパーの動き、アメフトのスナップ後など、多くの競技において「静から動」の動きが重要となる。「動から動」ならばSSCが使えるが、「静から動」の場合は使えない。

SSCやストップ&ゴー、プライオメトリクスを習熟度に合わせてプログラムに組み込むことで、筋力からパワーへの転換がスムーズに進むことになるだろう。

(Part 74を読む)
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  • 目  的:筋力向上、瞬発力向上
  • メリット:モーターユニット動員数の向上、安全性の高さ、静から動への動き

「パワーがある」と言えば、普通は力が強いことを指す。しかし厳密に言うと、パワーと筋力は別物である。パワーとは「筋力×速度」。すなわち力があるだけではダメで、それを爆発的に発揮できてはじめて「パワーがある」ということができるのだ。

ウォリアーのトレーニングは筋肥大や筋力向上を目指すことが多い。これがベースである。ベースとなる筋肉量・筋力を基に、パワーを増やしていくことが競技能力の向上につながっていく。

パワーを増やすために一般的に行われる方法が「プライオメトリクス」だ。筋肉や腱は急激に引き伸ばされると、断裂してしまわないように収縮しようとする特性がある。これを「伸張反射」と呼び、通常よりも強い力で収縮することができる。また筋肉や腱にはエラスチンという弾性を持つ繊維があり、これが引き延ばされると弾性エネルギーによりゴムが縮むように、強く収縮しようとする働きがある。
この働きを「SSC:Stretch-Shortening Cycle」と呼ぶ。たいていの場合、ジャンプする時には一度しゃがんでから一気に跳び上がる。これは無意識にSSCを利用しているのだ。

SSCを強調して通常より強いパワーを得ようとするトレーニングがプライオメトリクスであり、デプスジャンプやハードルホップ、拍手腕立て伏せなどが代表的なエクササイズである。

<デプスジャンプ>

<ハードルホップ>


■SSCの適用

しかし関節の強度に問題がある場合は、プライオメトリクスを行うことができない。ケガの危険があるからだ。また女性など筋力が弱い場合は、そもそもこれらのエクササイズを行うことができない。
そのような場合、エクササイズにおいてSSCを適用すればいい。具体的にはスクワットを行う際、一気にしゃがんでから、ボトムでスピーディーに切り返して立ち上がるようにするのだ。

<SSCによるスクワット>

あるいはベンチプレスの場合、胸で弾ませるのではなく、一気に下ろして胸の上数cmのところでスピーディーに切り返して持ち上げるのである。

<SSCによるベンチプレス>

この方法ならば使用重量を自由に設定できるため、ケガの危険性は少なくなる。


■ストップ&ゴーの適用

次に勧めたいのが「ストップ&ゴー」だ。これはボトムポジションで動作を静止させ、それから爆発的にウェイトを挙げる、という方法である。

スクワットでストップ&ゴーを行う場合について説明しよう。まずは普段使う重量(10回ギリギリできる程度の重量)の60%程度の重さのバーをセットする。そしてバーをゆっくりと下ろしてしゃがみ、ボトムポジションに達したら、そこで1秒ほど静止する。そして1秒経ったところで、爆発的に立ち上がるのだ。
立ち上がったら、またゆっくりとしゃがんでボトムで静止させ、1秒したら爆発的に持ち上げる。この繰り返しである。

<ストップ&ゴー スクワット>

6回程度行うと、疲労のため爆発的に立ち上がることができなくなる。そして粘らないと挙げられないようになったら、そこでセットを終了させる。ゆっくり挙げるのでは、ストップ&ゴーの意味がないのである。

ボトムで動作を静止させるエクササイズとしては、「ボックス・スクワット」も有効だ。これは適度な高さのボックスを用意して、その上にしゃがみ込み、尻がボックスに触れたら立ち上がる、というものだ。

<ボックス・スクワット>

ベンチプレスの場合は胸の上で静止させたり、フロアプレスとして床で静止させたりしてから行うのもいいだろう。

ストップ&ゴーにおいてはSSCを利用したエクササイズに比べ、「静から動」への動きを高められるメリットがある。スプリントにおけるスタートダッシュやPK時におけるキーパーの動き、アメフトのスナップ後など、多くの競技において「静から動」の動きが重要となる。「動から動」ならばSSCが使えるが、「静から動」の場合は使えない。

SSCやストップ&ゴー、プライオメトリクスを習熟度に合わせてプログラムに組み込むことで、筋力からパワーへの転換がスムーズに進むことになるだろう。

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