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高価な栄養素も吸収されなければ意味がない

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■栄養学でいう「体内」と「体外」の違いとは?

皆さんは「バイオアベイラビリティ(bioavailability)」という言葉を耳にしたことがありますか? 日本語では「生物学的利用能」といって、単純にいうと摂取した栄養素や医薬品がどれぐらい体内に吸収されているか、という吸収率のことです。
一般的に、口から摂取した栄養はすべて体内に吸収されていると思われがちですが、実際はそうではありません。重要なのは、栄養素がどれだけ体内に吸収されているか。バイオアベイラビリティとは、その指標となる大切な考えです。
バイオアベイラビリティについて理解していただくに当たり、皆さんにはまず栄養学でいう「体内」と「体外」の違いについて、知ってほしいと思います。

人間が口から摂取した食物は消化管を通じ、身体の中を通って吸収され、不要なものは最後に便として排出されます。消化管とは図の通り、口から肛門まで、身体の中に納まっている消化と吸収をつかさどる管をいいます。
ここで厳密に言うと、「体内」とは腸管の壁から内側(腹腔内側)のことで、腸管に至るまでの消化管の内側は「体外」となります。
イラストのように消化管を一本の管として考えると、理解しやすいかもしれません。
腸管に至るまでの消化管の内側は、外界のように菌やアレルギー物質などが多く存在する、ある意味「汚い場所」です。そして腸管の壁は、菌やアレルギー物質が体内に入らないよう防御し、必要な栄養素を体内に取り込み、不要なものを排泄します。
口から摂取した栄養素は、腸管の壁から吸収されない限り「体内」に入ったことにならない、ということを、まずご理解いただきたいと思います。

■「バイオアベイラビリティ」を常に意識しよう。

では、バイオアベイラビリティとは何か。単純な式で表すと「バイオアベイラビリティ(%)=吸収量÷摂取量」です。
例として、成人の亜鉛代謝を示しましょう。食事からの亜鉛の摂取量は一般的に8~15㎎です。しかし、実際に小腸から吸収されているのは2~5㎎。つまり、バイオアベイラビリティは約25~30%ということ。つまり食事から亜鉛を摂っても、実際に体内に吸収されるのは3割弱に過ぎないのです(厳密にいえば、体内から腸管内に排出されたり、腸内細菌に利用されたりする亜鉛もあり、便として排出される亜鉛の量は摂取量と近くなります)。

一般的に炭水化物(食物繊維を除く)、たんぱく質やアミノ酸、脂質などのバイオアベイラビリティは90%以上とされています。それに対し、ビタミンやミネラルは10~30%ぐらい。特にビタミンやミネラルは形態によって大きく差があり、例えば硫酸亜鉛(ZnSO4)の亜鉛のバイオアベイラビリティは30%ほどありますが、酸化亜鉛(ZnO)の亜鉛は、ほぼ吸収されずに排泄されてしまいます(ちなみにDNSのZMAで使われている亜鉛含有酵母のバイオアベイラビリティは、比較的高いとされています)。
これらのデータから言えるのが、特にビタミン、ミネラル系サプリメントは原材料をしっかりとチェックした方がいい、ということです。

興味深い事実をご紹介しましょう。
ここしばらく流行っている成分「コエンザイムQ10(CoQ10)」は脂溶性物質(油に溶ける)であるため、吸収率はさまざまな要因によって変動します。また、粉末かソフトカプセル内のキャリア油によっても大きな差が生じます。しかし一般的には、CoQ10のバイオアベイラビリティは10~40%程度といわれています。つまり高価なサプリメントに入っているCoQ10の多くは、体内に吸収されることなく、便として排出されてしまっているのです。

また皆さんもご存じであろう、とあるドリンク。一応は薬機法に抵触せず「二日酔いに効く」という触れ込みで販売されています。その有効成分とされているのが、ウコン(クルクミン)です。
クルクミンの効果については細胞レベルや動物モデルの研究データはありますが、実は人の臨床的エビデンスはほとんどありません。その理由は、クルクミンのバイオアベイラビリティは0%に近いといわれ、非常に低いからです5。そしてクルクミンは、ドリンク中にたった30㎎しか入っていません。ほとんど体内に吸収されることのないクルクミンが有用なわけがなく、案の定、メーカーのホームページには何のデータも記載されていません。つまりそのドリンクが売れているのは、単なる「マーケティングの力」に過ぎないということです。

皆さんに知っていただきたいのが、残念ながら摂取したサプリメントはすべてが体内に吸収されるわけではない、ということです。そして栄養によっては、多くが便として排出されてしまいます。ですから、栄養を摂る時は常にバイオアベイラビリティを考慮し、摂取した栄養が確実に吸収されて身体の役に立つように、常に注意を払うことが大事です。
そのためには、ぜひ食品表示は栄養成分のみではなく原材料リストもチェックし、バイオアベイラビリティの高い原材料が使われているかどうか、確認してほしいと思います。そして人間の吸収能力には限界がありますので、サプリメントの過剰摂取はそれほど意味がありません。適正な量を、適したタイミングで摂ることをお勧めします。



青柳 清治

青柳 清治 │ Seiji_Aoyagi

栄養学博士、(株)DNS 執行役員 
米国オキシデンタル大学卒業後、㈱協和発酵バイオでアミノ酸研究に従事する中で、イリノイ大学で栄養学の博士号を取得。以降、外資企業で栄養剤ビジネス、商品開発の責任者を歴任した。日本へ帰国後2015年から、ウェアブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店・㈱ドームのサプリメントブランド「DNS」にて責任者を務める。2020年より分社化した㈱DNSでサイエンティフィックオフィサーを務める。

【参考文献】

  • 1. Sandrtrom B. Zinc. Human Nutrition and Dietetics. 10th Ed. 2000. 日本語版 P201 より抜粋。
  • 2. Tompkins TA et al. Clinical evaluation of the bioavailability of zinc-enriched yeast and zinc gluconate in healthy volunteers. Biological Trace Element Research (Humana Press) July. 2007.
  • 3. Guilermo L.L. Nutrition. 2019, 57, 133-140.
  • 4. Hemmi N. B.; Raj K. C., Mitochondrion. 2-007, 7S, S78-S88.
  • 5. Anand P.; Kunnumakkara A. B.; Newman R. A.; Aggarwal B. B., Mol. Pharm. 2007, 4, 807-818.
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■栄養学でいう「体内」と「体外」の違いとは?

皆さんは「バイオアベイラビリティ(bioavailability)」という言葉を耳にしたことがありますか? 日本語では「生物学的利用能」といって、単純にいうと摂取した栄養素や医薬品がどれぐらい体内に吸収されているか、という吸収率のことです。
一般的に、口から摂取した栄養はすべて体内に吸収されていると思われがちですが、実際はそうではありません。重要なのは、栄養素がどれだけ体内に吸収されているか。バイオアベイラビリティとは、その指標となる大切な考えです。
バイオアベイラビリティについて理解していただくに当たり、皆さんにはまず栄養学でいう「体内」と「体外」の違いについて、知ってほしいと思います。

人間が口から摂取した食物は消化管を通じ、身体の中を通って吸収され、不要なものは最後に便として排出されます。消化管とは図の通り、口から肛門まで、身体の中に納まっている消化と吸収をつかさどる管をいいます。
ここで厳密に言うと、「体内」とは腸管の壁から内側(腹腔内側)のことで、腸管に至るまでの消化管の内側は「体外」となります。
イラストのように消化管を一本の管として考えると、理解しやすいかもしれません。
腸管に至るまでの消化管の内側は、外界のように菌やアレルギー物質などが多く存在する、ある意味「汚い場所」です。そして腸管の壁は、菌やアレルギー物質が体内に入らないよう防御し、必要な栄養素を体内に取り込み、不要なものを排泄します。
口から摂取した栄養素は、腸管の壁から吸収されない限り「体内」に入ったことにならない、ということを、まずご理解いただきたいと思います。

■「バイオアベイラビリティ」を常に意識しよう。

では、バイオアベイラビリティとは何か。単純な式で表すと「バイオアベイラビリティ(%)=吸収量÷摂取量」です。
例として、成人の亜鉛代謝を示しましょう。食事からの亜鉛の摂取量は一般的に8~15㎎です。しかし、実際に小腸から吸収されているのは2~5㎎。つまり、バイオアベイラビリティは約25~30%ということ。つまり食事から亜鉛を摂っても、実際に体内に吸収されるのは3割弱に過ぎないのです(厳密にいえば、体内から腸管内に排出されたり、腸内細菌に利用されたりする亜鉛もあり、便として排出される亜鉛の量は摂取量と近くなります)。

一般的に炭水化物(食物繊維を除く)、たんぱく質やアミノ酸、脂質などのバイオアベイラビリティは90%以上とされています。それに対し、ビタミンやミネラルは10~30%ぐらい。特にビタミンやミネラルは形態によって大きく差があり、例えば硫酸亜鉛(ZnSO4)の亜鉛のバイオアベイラビリティは30%ほどありますが、酸化亜鉛(ZnO)の亜鉛は、ほぼ吸収されずに排泄されてしまいます(ちなみにDNSのZMAで使われている亜鉛含有酵母のバイオアベイラビリティは、比較的高いとされています)。
これらのデータから言えるのが、特にビタミン、ミネラル系サプリメントは原材料をしっかりとチェックした方がいい、ということです。

興味深い事実をご紹介しましょう。
ここしばらく流行っている成分「コエンザイムQ10(CoQ10)」は脂溶性物質(油に溶ける)であるため、吸収率はさまざまな要因によって変動します。また、粉末かソフトカプセル内のキャリア油によっても大きな差が生じます。しかし一般的には、CoQ10のバイオアベイラビリティは10~40%程度といわれています。つまり高価なサプリメントに入っているCoQ10の多くは、体内に吸収されることなく、便として排出されてしまっているのです。

また皆さんもご存じであろう、とあるドリンク。一応は薬機法に抵触せず「二日酔いに効く」という触れ込みで販売されています。その有効成分とされているのが、ウコン(クルクミン)です。
クルクミンの効果については細胞レベルや動物モデルの研究データはありますが、実は人の臨床的エビデンスはほとんどありません。その理由は、クルクミンのバイオアベイラビリティは0%に近いといわれ、非常に低いからです5。そしてクルクミンは、ドリンク中にたった30㎎しか入っていません。ほとんど体内に吸収されることのないクルクミンが有用なわけがなく、案の定、メーカーのホームページには何のデータも記載されていません。つまりそのドリンクが売れているのは、単なる「マーケティングの力」に過ぎないということです。

皆さんに知っていただきたいのが、残念ながら摂取したサプリメントはすべてが体内に吸収されるわけではない、ということです。そして栄養によっては、多くが便として排出されてしまいます。ですから、栄養を摂る時は常にバイオアベイラビリティを考慮し、摂取した栄養が確実に吸収されて身体の役に立つように、常に注意を払うことが大事です。
そのためには、ぜひ食品表示は栄養成分のみではなく原材料リストもチェックし、バイオアベイラビリティの高い原材料が使われているかどうか、確認してほしいと思います。そして人間の吸収能力には限界がありますので、サプリメントの過剰摂取はそれほど意味がありません。適正な量を、適したタイミングで摂ることをお勧めします。



青柳 清治

青柳 清治 │ Seiji_Aoyagi

栄養学博士、(株)DNS 執行役員 
米国オキシデンタル大学卒業後、㈱協和発酵バイオでアミノ酸研究に従事する中で、イリノイ大学で栄養学の博士号を取得。以降、外資企業で栄養剤ビジネス、商品開発の責任者を歴任した。日本へ帰国後2015年から、ウェアブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店・㈱ドームのサプリメントブランド「DNS」にて責任者を務める。2020年より分社化した㈱DNSでサイエンティフィックオフィサーを務める。

【参考文献】

  • 1. Sandrtrom B. Zinc. Human Nutrition and Dietetics. 10th Ed. 2000. 日本語版 P201 より抜粋。
  • 2. Tompkins TA et al. Clinical evaluation of the bioavailability of zinc-enriched yeast and zinc gluconate in healthy volunteers. Biological Trace Element Research (Humana Press) July. 2007.
  • 3. Guilermo L.L. Nutrition. 2019, 57, 133-140.
  • 4. Hemmi N. B.; Raj K. C., Mitochondrion. 2-007, 7S, S78-S88.
  • 5. Anand P.; Kunnumakkara A. B.; Newman R. A.; Aggarwal B. B., Mol. Pharm. 2007, 4, 807-818.
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