健康・体力・美容UP

Part 94  基本的トレーニング戦略 ~プログラムB

Part 94
基本的トレーニング戦略 ~プログラムB

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Part 94  基本的トレーニング戦略 ~プログラムB

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基本的トレーニング戦略 ~プログラムB

  • 目  的:基本的な身体をつくりあげるプログラミング
  • メリット:効率的なプログラムにより最短距離で身体をつくりあげられる

前々回の記事では最適のトレーニングプログラムを考える上で必要な条件、すなわちトレーニング頻度やエクササイズの選定、インターバルなどについて解説し、モデルとなるプログラムをAとBに分けて紹介した。今回はプログラムBの進め方、エクササイズの注意点について解説していこう。

■スクワットの注意点

キング・オブ・エクササイズと呼ばれるスクワットであるが、もっとも習得が難しいエクササイズの一つでもある。ただしゃがんで立ち上がるだけの動きに、重要なポイントが数多くあるのだ。ここでは特に重要な2点について解説しておこう。

1. 股関節の動きを意識しろ
スクワットにおいては足関節と膝関節、股関節が動く。しかし何も考えず無意識にしゃがむと、膝関節の動きがもっとも大きくなるはずだ。昔はスクワットのことを「ディープ・ニー・ベンド」とも呼んでいて、膝関節の曲げ伸ばし運動のようにとらえられていた。
しかし膝関節を優位に動かして膝が前に出てくるようなしゃがみ方をすると、膝への負担が大きくなってしまう。この動きでは大腿四頭筋が強く働き、ハムストリングの働きが弱くなりスネの骨が前に出ようとするため、膝を傷める可能性が高くなるのだ。
そのため、スクワットでは股関節もしっかりと動かしてハムストリングや大殿筋を使った動作を心がけるようにしたい。しゃがむ時は腰を後ろに引くようにし、膝が前に出過ぎないようにするのだ。このフォームで行うことにより、大腿四頭筋だけでなくハムストリングや大殿筋にも強い刺激を与えることができる。

2. 腹圧をしっかりかけろ
スクワットでは「背中を丸めないように」と注意されることが多い。背中が丸くなると腰を傷めてしまうからだが、背中をニュートラルな状態に保つには、体幹部が安定している必要がある。
体幹部を安定させる時に重要になるのが腹圧だ。ベルトをすると腹部が締め付けられるため、自然と腹圧が高くなる。しかしベルトに頼り切ってしまうと、自前での腹圧が弱くなってしまう。
ベルトを締めたら、ベルトを押し返すように腹を内部から突き出すように力をいれてみよう。トイレで踏ん張る時の力の入れ具合と同じである。この時が、腹圧がかかっている状態なのだ。
この力の入れ方がうまくできるようになったら、軽めの重量でベルト無しでのスクワットに挑戦してみよう。腹圧をかけつつ軽い重量でのスクワットを行うことで、自然と腹圧を高めることができる。

■デッドリフトの注意点

BIG3のしんがりを務めるデッドリフト。これも床からバーを引き上げるという単純な動きだが、フォームが悪いと簡単に腰をケガしてしまう。腰に負担をかけず、安全に高重量のデッドリフトを行うためのポイントを紹介しよう。

1.上体に力を入れてから脚で引け
バーを引き上げ始める時、先に腰が浮いてしまうことがある。上体の力が抜け、脚の力で挙げはじめようとすると、そうなってしまう。しかし腰が浮くと上体の前傾が強くなり、腰への負担が大きくなってしまうのだ。
そこで、スタートでは上体に力を入れて腰が浮かないように注意し、上体の角度を保つようにする。そこから脚に力を入れてバーを浮かせ、引き上げていくようにしたい。

2. 床引きにこだわるな
床から引くデッドリフトの場合、スタートでのバーの高さはバーベルプレートの半径で決まってくる。しかし、ヒトの身体の構造はバーベルプレートの半径とまったく関係がない。 つまり、床から引くことに根拠はないのだ。
腕の長さや股関節の柔軟性などさまざまな要因によって、スタート時におけるバーのしかるべき高さが変わってくるはずだ。床から引くとどうしても腰が丸まってしまうという場合は、パワーラックのセーフティーバーから引くトップサイドデッドリフトで代用してもまったく差し支えない。
逆に腕が長くて床から引いても可動域が不足するという場合、脚の下に台を置いて行う「デシフィットデッドリフト」をやるといいだろう。

参考:https://www.youtube.com/watch?v=CpWsUsqBtN8

■チンニングの注意点

チンニングはいわゆる「懸垂」だが、この動作一つで背中の筋肉のほとんどを刺激することができる。では、重要な点を解説していこう。

1. サムレスグリップ&肩幅よりひと握り広く
チンニングにおいてはさまざまなバーの持ち方がある。アンダーグリップで持つ方法もあるが、慣れないと上腕二頭筋に刺激が移行してしまい、背中に十分な刺激を与えることができなくなる。また手幅が狭くても、上腕二頭筋に刺激が移行してしまう。
普通のオーバーグリップでもいいが、できれば親指を他の指と同じ方向にして握る「サムレスグリップ」でやってみよう。そのほうが上腕二頭筋の力を使わず、背中の筋肉を優先的に使って行うことができる。
また手幅については、肩幅よりひと握り広く持つようにする。あまり広いと刺激が背中の上の方にばかり移行してしまうため、背中全体に効かせるためにはこれぐらいの手幅が最適である。

 

2. 膝は後ろに持ってきて上体を反らす
チンニングの時に上体が丸くなってしまうと、背中の筋肉を上手く収縮させることができない。そこで、膝を後ろに持ってきて大殿筋を収縮させてみよう。そうすると、自然と上体が反ってくるはずだ。
動作中は常に大殿筋を収縮させ、膝を後ろに置いたポジションを保つ。こうすることによって、背中の筋肉をしっかりと収縮させられる。

■ダンベルロウイングの注意点

チンニングが主に肩関節の内転なのに対し、ダンベルロウイングは肩関節の伸展や肩甲骨の内転動作となる。バーベルで行うロウイングに比べてダンベルロウイングは腰への負担も少なく、また片方ずつ行うためフォームに集中できる。では、注意点を解説していこう。

1. 挙げながら内旋させろ
ダンベルロウイングにおいては、内旋させながら挙げるようにする。広背筋の機能の一つは内旋だからだ。腕を後ろに引いて広背筋を収縮させた状態で、内旋させたり外旋させたりしてみよう。内旋させた時に広背筋の収縮が強くなるのが感じられるはずだ。
多くのウォリアーは、ダンベルロウイングのときに外旋させてしまう。外旋させると同時に手首が回外され、上腕二頭筋が使われる。そのためダンベルを引きつけやすいのだが、広背筋への刺激は弱まってしまっているのだ。

2. 斜め後ろに引き上げろ
ダンベルを垂直に引き上げると、僧帽筋に刺激のほとんどが移行してしまう。もちろん僧帽筋を狙う場合はそれでいいのだが、広背筋を刺激したいのなら斜め後ろ(腰の方向)に向けて引きつけるようにした方がいい。そうすることで肩関節の伸展動作となり、広背筋を使うことになるからだ。
また垂直に引き上げると上腕二頭筋や三角筋後部への刺激も強くなり、広背筋への刺激はますます弱くなる。斜め後ろに引くことで、それらへの刺激の分散を避けることができる。

以上、3回に渡ってバルクアップのための戦略的なプログラムを紹介してきた。今後のために、ぜひ役立ててほしい。

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  • メリット:効率的なプログラムにより最短距離で身体をつくりあげられる

前々回の記事では最適のトレーニングプログラムを考える上で必要な条件、すなわちトレーニング頻度やエクササイズの選定、インターバルなどについて解説し、モデルとなるプログラムをAとBに分けて紹介した。今回はプログラムBの進め方、エクササイズの注意点について解説していこう。

■スクワットの注意点

キング・オブ・エクササイズと呼ばれるスクワットであるが、もっとも習得が難しいエクササイズの一つでもある。ただしゃがんで立ち上がるだけの動きに、重要なポイントが数多くあるのだ。ここでは特に重要な2点について解説しておこう。

1. 股関節の動きを意識しろ
スクワットにおいては足関節と膝関節、股関節が動く。しかし何も考えず無意識にしゃがむと、膝関節の動きがもっとも大きくなるはずだ。昔はスクワットのことを「ディープ・ニー・ベンド」とも呼んでいて、膝関節の曲げ伸ばし運動のようにとらえられていた。
しかし膝関節を優位に動かして膝が前に出てくるようなしゃがみ方をすると、膝への負担が大きくなってしまう。この動きでは大腿四頭筋が強く働き、ハムストリングの働きが弱くなりスネの骨が前に出ようとするため、膝を傷める可能性が高くなるのだ。
そのため、スクワットでは股関節もしっかりと動かしてハムストリングや大殿筋を使った動作を心がけるようにしたい。しゃがむ時は腰を後ろに引くようにし、膝が前に出過ぎないようにするのだ。このフォームで行うことにより、大腿四頭筋だけでなくハムストリングや大殿筋にも強い刺激を与えることができる。

2. 腹圧をしっかりかけろ
スクワットでは「背中を丸めないように」と注意されることが多い。背中が丸くなると腰を傷めてしまうからだが、背中をニュートラルな状態に保つには、体幹部が安定している必要がある。
体幹部を安定させる時に重要になるのが腹圧だ。ベルトをすると腹部が締め付けられるため、自然と腹圧が高くなる。しかしベルトに頼り切ってしまうと、自前での腹圧が弱くなってしまう。
ベルトを締めたら、ベルトを押し返すように腹を内部から突き出すように力をいれてみよう。トイレで踏ん張る時の力の入れ具合と同じである。この時が、腹圧がかかっている状態なのだ。
この力の入れ方がうまくできるようになったら、軽めの重量でベルト無しでのスクワットに挑戦してみよう。腹圧をかけつつ軽い重量でのスクワットを行うことで、自然と腹圧を高めることができる。

■デッドリフトの注意点

BIG3のしんがりを務めるデッドリフト。これも床からバーを引き上げるという単純な動きだが、フォームが悪いと簡単に腰をケガしてしまう。腰に負担をかけず、安全に高重量のデッドリフトを行うためのポイントを紹介しよう。

1.上体に力を入れてから脚で引け
バーを引き上げ始める時、先に腰が浮いてしまうことがある。上体の力が抜け、脚の力で挙げはじめようとすると、そうなってしまう。しかし腰が浮くと上体の前傾が強くなり、腰への負担が大きくなってしまうのだ。
そこで、スタートでは上体に力を入れて腰が浮かないように注意し、上体の角度を保つようにする。そこから脚に力を入れてバーを浮かせ、引き上げていくようにしたい。

2. 床引きにこだわるな
床から引くデッドリフトの場合、スタートでのバーの高さはバーベルプレートの半径で決まってくる。しかし、ヒトの身体の構造はバーベルプレートの半径とまったく関係がない。 つまり、床から引くことに根拠はないのだ。
腕の長さや股関節の柔軟性などさまざまな要因によって、スタート時におけるバーのしかるべき高さが変わってくるはずだ。床から引くとどうしても腰が丸まってしまうという場合は、パワーラックのセーフティーバーから引くトップサイドデッドリフトで代用してもまったく差し支えない。
逆に腕が長くて床から引いても可動域が不足するという場合、脚の下に台を置いて行う「デシフィットデッドリフト」をやるといいだろう。

参考:https://www.youtube.com/watch?v=CpWsUsqBtN8

■チンニングの注意点

チンニングはいわゆる「懸垂」だが、この動作一つで背中の筋肉のほとんどを刺激することができる。では、重要な点を解説していこう。

1. サムレスグリップ&肩幅よりひと握り広く
チンニングにおいてはさまざまなバーの持ち方がある。アンダーグリップで持つ方法もあるが、慣れないと上腕二頭筋に刺激が移行してしまい、背中に十分な刺激を与えることができなくなる。また手幅が狭くても、上腕二頭筋に刺激が移行してしまう。
普通のオーバーグリップでもいいが、できれば親指を他の指と同じ方向にして握る「サムレスグリップ」でやってみよう。そのほうが上腕二頭筋の力を使わず、背中の筋肉を優先的に使って行うことができる。
また手幅については、肩幅よりひと握り広く持つようにする。あまり広いと刺激が背中の上の方にばかり移行してしまうため、背中全体に効かせるためにはこれぐらいの手幅が最適である。

 

2. 膝は後ろに持ってきて上体を反らす
チンニングの時に上体が丸くなってしまうと、背中の筋肉を上手く収縮させることができない。そこで、膝を後ろに持ってきて大殿筋を収縮させてみよう。そうすると、自然と上体が反ってくるはずだ。
動作中は常に大殿筋を収縮させ、膝を後ろに置いたポジションを保つ。こうすることによって、背中の筋肉をしっかりと収縮させられる。

■ダンベルロウイングの注意点

チンニングが主に肩関節の内転なのに対し、ダンベルロウイングは肩関節の伸展や肩甲骨の内転動作となる。バーベルで行うロウイングに比べてダンベルロウイングは腰への負担も少なく、また片方ずつ行うためフォームに集中できる。では、注意点を解説していこう。

1. 挙げながら内旋させろ
ダンベルロウイングにおいては、内旋させながら挙げるようにする。広背筋の機能の一つは内旋だからだ。腕を後ろに引いて広背筋を収縮させた状態で、内旋させたり外旋させたりしてみよう。内旋させた時に広背筋の収縮が強くなるのが感じられるはずだ。
多くのウォリアーは、ダンベルロウイングのときに外旋させてしまう。外旋させると同時に手首が回外され、上腕二頭筋が使われる。そのためダンベルを引きつけやすいのだが、広背筋への刺激は弱まってしまっているのだ。

2. 斜め後ろに引き上げろ
ダンベルを垂直に引き上げると、僧帽筋に刺激のほとんどが移行してしまう。もちろん僧帽筋を狙う場合はそれでいいのだが、広背筋を刺激したいのなら斜め後ろ(腰の方向)に向けて引きつけるようにした方がいい。そうすることで肩関節の伸展動作となり、広背筋を使うことになるからだ。
また垂直に引き上げると上腕二頭筋や三角筋後部への刺激も強くなり、広背筋への刺激はますます弱くなる。斜め後ろに引くことで、それらへの刺激の分散を避けることができる。

以上、3回に渡ってバルクアップのための戦略的なプログラムを紹介してきた。今後のために、ぜひ役立ててほしい。