競技パフォーマンスUP

選手が実践する栄養学的リカバリー戦略 -前編-

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選手が実践する栄養学的リカバリー戦略 -前編-

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DNSは20223月、NECグリーンロケッツ東葛とのオフィシャルサプライヤー契約を締結した。ここでは、DNSNECグリーンロケッツ東葛に派遣し栄養サポートを行う、管理栄養士・飯澤拓樹が、選手達の食事情やスポーツ栄養にまつわるさまざまな情報をお伝えする。

■「目が離せない」リーグワン終盤戦

JAPAN RUGBY LEAGUE ONEの2022-2023シーズンもいよいよ終盤。疲労の蓄積がピークに達するこの時期は、日々の栄養摂取やケアが特に重要になってきます。毎週末の様に試合が続くDivision1においては、蓄積した疲労をいかに早く取り除くか、選手が怪我をしない為にどのような栄養戦略が考えられるかなど、考える事が盛りだくさんです。

今回は、シーズンを戦う選手達が取り組むリカバリーの栄養戦略についてご紹介致します。NECグリーンロケッツ東葛を応援するCREW(ファン)の皆様にも、「このようなことに取り組んでいるのか!」と、選手の姿を想像しながら読んでいただけると嬉しいです。


練習に励むSO 吉村紘選手(左)とSH 丸尾祐資選手(右)(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


■「日々の変化に気を配る」アスリートの水分補給

試合で最も良いパフォーマンスを発揮するために、選手は日々強度の高いトレーニングに取り組んでいます。トレーニングによる疲労からの回復や、トレーニング中のパフォーマンス維持に重要な要素の一つとして、「水分補給」があります。

「運動中には十分な水分補給を心がけよう」ということは、スポーツに関わる全ての人が共通見解として持っていると思いますが、改めて、なぜ運動中の水分補給が重要なのでしょう?

ヒトは、運動時汗をかくこと(発汗)で皮膚の表面から熱を放散し体温を調整します。汗は我々が口にしている食事や飲料に含まれる水分がもとになっているので、たくさん汗をかくためには十分な水分補給が重要となってくるわけです。


(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


もし発汗に対して水分が不足すると、汗をかけず体温調整が上手くできなくなります。身体の水分が足りない脱水状態は、運動中の体重変化を見ることで判定することが出来ます。

一般に、体重の2%以上の脱水が生じると、運動パフォーマンス(持久力や瞬発力)が低下すると言われています1,2。また、脱水が3%に及ぶと、最大筋力(≒パワー)の低下も引き起こされるとの報告もあります3。例えば体重100kgの選手なら、運動中~運動後の体重が98~97kg程度まで落ちていると(2~3%体重)、その時に取り組んだトレーニングのパフォーマンスが下がっていた可能性が高い、ということです。運動中に何気なく飲んでいるドリンクも、パフォーマンスを維持するためにとても重要な要素だということですね。

■誰のドリンクか間違えない様に…?!

練習するグラウンドの横には、選手達のドリンクボトルが沢山置かれています。多くの選手はDNSプロズシェイカーⅢを活用してくださっていますが、さすがにあれだけの人数がいると、私からはどれが誰のボトルだか分かりません()


(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


そこで選手達は、シェイカーの蓋に名前を書いたり、絵をかいたり、テープを貼ったり… 様々な方法で自分のドリンクボトルが分かるように工夫をしています。衛生面はもちろんのこと、練習中は水かスポーツドリンク(R.E.D.を個々に自分で選んで飲んでいますが、これなら間違えることはありません!


(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


■セルフ脱水チェックを忘れずに

運動中、体重の2%以上の脱水でパフォーマンスが低下すると書きましたが、練習中、こまめに体重を測定しドリンクの飲む量を調整することは出来ません。そこで選手に取り組んでもらっているのが「セルフ脱水チェック」です。これは、トイレに行った際の自身の尿の色から、脱水の度合いを判断するというものです。


クラブハウスに掲示しているカラーチャート:作成 管理栄養士・飯澤(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


写真はクラブハウスのホワイトボードやトイレに貼ってある資料です。カラーチャートなどと呼ばれるのですが、尿の色が普段よりも濃ければ水分量が足りないことを示す、非常にわかりやすい絵になっています。私は国際オリンピック委員会のガイドライン4から図を引用させていただき、少し加工して資料化しています。トイレで脱水状態を確認し、必要に応じてドリンクの飲む量を増やしてもらいます。

トレーナーや管理栄養士が常に選手の状態を把握することは難しいので、選手がセルフでコンディションを管理できるような情報の提供を心掛けています。

後編では、トレーニングや試合で傷ついた筋肉に重要なプロテインの有用性について紹介します。



飯澤 拓樹

飯澤 拓樹 │ Hiroki_Iizawa

管理栄養士 / 修士(スポーツ健康科学)
新潟医療福祉大学を卒業後、福岡大学大学院にて修士号を取得。株式会社DNS マーケティングDiv.所属。契約アスリート/チームへの栄養サポートのほか、商品企画をはじめとしたマーケティング業務に従事している。主なサポート競技はラグビー、アメリカンフットボール、競泳など。自身も幼少期より競泳に打ち込む現役アスリートであり、日本社会人選手権出場に向けて、日々仕事とトレーニングに奮闘中。

【参考文献】

  • 1. Yoshida, T., Takanishi, T., Nakai, S., Yorimoto, A. & Morimoto, T. The critical level of water deficit causing a decrease in human exercise performance: a practical field study. Eur J Appl Physiol 87, 529–534 (2002).
  • 2. Coyle, E. F. Fluid and fuel intake during exercise. in Journal of Sports Sciences (2004).
  • 3. Gann, J. J., Andre, T. L., Gallucci, A. R. & Willoughby, D. S. Effects of Hypohydration on Muscular Strength, Endurance, and Power in Women. J Strength Cond Res 35, S102-106 (2021).
  • 4. International olympic committee. Nutrition for Athlete. (2012).
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DNSは20223月、NECグリーンロケッツ東葛とのオフィシャルサプライヤー契約を締結した。ここでは、DNSNECグリーンロケッツ東葛に派遣し栄養サポートを行う、管理栄養士・飯澤拓樹が、選手達の食事情やスポーツ栄養にまつわるさまざまな情報をお伝えする。

■「目が離せない」リーグワン終盤戦

JAPAN RUGBY LEAGUE ONEの2022-2023シーズンもいよいよ終盤。疲労の蓄積がピークに達するこの時期は、日々の栄養摂取やケアが特に重要になってきます。毎週末の様に試合が続くDivision1においては、蓄積した疲労をいかに早く取り除くか、選手が怪我をしない為にどのような栄養戦略が考えられるかなど、考える事が盛りだくさんです。

今回は、シーズンを戦う選手達が取り組むリカバリーの栄養戦略についてご紹介致します。NECグリーンロケッツ東葛を応援するCREW(ファン)の皆様にも、「このようなことに取り組んでいるのか!」と、選手の姿を想像しながら読んでいただけると嬉しいです。


練習に励むSO 吉村紘選手(左)とSH 丸尾祐資選手(右)(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


■「日々の変化に気を配る」アスリートの水分補給

試合で最も良いパフォーマンスを発揮するために、選手は日々強度の高いトレーニングに取り組んでいます。トレーニングによる疲労からの回復や、トレーニング中のパフォーマンス維持に重要な要素の一つとして、「水分補給」があります。

「運動中には十分な水分補給を心がけよう」ということは、スポーツに関わる全ての人が共通見解として持っていると思いますが、改めて、なぜ運動中の水分補給が重要なのでしょう?

ヒトは、運動時汗をかくこと(発汗)で皮膚の表面から熱を放散し体温を調整します。汗は我々が口にしている食事や飲料に含まれる水分がもとになっているので、たくさん汗をかくためには十分な水分補給が重要となってくるわけです。


(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


もし発汗に対して水分が不足すると、汗をかけず体温調整が上手くできなくなります。身体の水分が足りない脱水状態は、運動中の体重変化を見ることで判定することが出来ます。

一般に、体重の2%以上の脱水が生じると、運動パフォーマンス(持久力や瞬発力)が低下すると言われています1,2。また、脱水が3%に及ぶと、最大筋力(≒パワー)の低下も引き起こされるとの報告もあります3。例えば体重100kgの選手なら、運動中~運動後の体重が98~97kg程度まで落ちていると(2~3%体重)、その時に取り組んだトレーニングのパフォーマンスが下がっていた可能性が高い、ということです。運動中に何気なく飲んでいるドリンクも、パフォーマンスを維持するためにとても重要な要素だということですね。

■誰のドリンクか間違えない様に…?!

練習するグラウンドの横には、選手達のドリンクボトルが沢山置かれています。多くの選手はDNSプロズシェイカーⅢを活用してくださっていますが、さすがにあれだけの人数がいると、私からはどれが誰のボトルだか分かりません()


(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


そこで選手達は、シェイカーの蓋に名前を書いたり、絵をかいたり、テープを貼ったり… 様々な方法で自分のドリンクボトルが分かるように工夫をしています。衛生面はもちろんのこと、練習中は水かスポーツドリンク(R.E.D.を個々に自分で選んで飲んでいますが、これなら間違えることはありません!


(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


■セルフ脱水チェックを忘れずに

運動中、体重の2%以上の脱水でパフォーマンスが低下すると書きましたが、練習中、こまめに体重を測定しドリンクの飲む量を調整することは出来ません。そこで選手に取り組んでもらっているのが「セルフ脱水チェック」です。これは、トイレに行った際の自身の尿の色から、脱水の度合いを判断するというものです。


クラブハウスに掲示しているカラーチャート:作成 管理栄養士・飯澤(提供:NECグリーンロケッツ東葛)


写真はクラブハウスのホワイトボードやトイレに貼ってある資料です。カラーチャートなどと呼ばれるのですが、尿の色が普段よりも濃ければ水分量が足りないことを示す、非常にわかりやすい絵になっています。私は国際オリンピック委員会のガイドライン4から図を引用させていただき、少し加工して資料化しています。トイレで脱水状態を確認し、必要に応じてドリンクの飲む量を増やしてもらいます。

トレーナーや管理栄養士が常に選手の状態を把握することは難しいので、選手がセルフでコンディションを管理できるような情報の提供を心掛けています。

後編では、トレーニングや試合で傷ついた筋肉に重要なプロテインの有用性について紹介します。



飯澤 拓樹

飯澤 拓樹 │ Hiroki_Iizawa

管理栄養士 / 修士(スポーツ健康科学)
新潟医療福祉大学を卒業後、福岡大学大学院にて修士号を取得。株式会社DNS マーケティングDiv.所属。契約アスリート/チームへの栄養サポートのほか、商品企画をはじめとしたマーケティング業務に従事している。主なサポート競技はラグビー、アメリカンフットボール、競泳など。自身も幼少期より競泳に打ち込む現役アスリートであり、日本社会人選手権出場に向けて、日々仕事とトレーニングに奮闘中。

【参考文献】

  • 1. Yoshida, T., Takanishi, T., Nakai, S., Yorimoto, A. & Morimoto, T. The critical level of water deficit causing a decrease in human exercise performance: a practical field study. Eur J Appl Physiol 87, 529–534 (2002).
  • 2. Coyle, E. F. Fluid and fuel intake during exercise. in Journal of Sports Sciences (2004).
  • 3. Gann, J. J., Andre, T. L., Gallucci, A. R. & Willoughby, D. S. Effects of Hypohydration on Muscular Strength, Endurance, and Power in Women. J Strength Cond Res 35, S102-106 (2021).
  • 4. International olympic committee. Nutrition for Athlete. (2012).
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