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Nutrition Guide

身体を作り、機能させる栄養・サプリメント情報 より効率的な身体作りのために

5-1.糖質について知っておこう

糖質はヒトが生きるうえで最も重要なエネルギー源であると言える。通常、日本人は1日に摂取するエネルギーのおよそ50~60%が糖質に由来する。ここではそんな糖質について、基礎的な部分から、食事をした後身体にどうやって取り込まれるのか、どの様に貯蔵されるのか、詳しく解説する。

 

「糖類」、「糖質」、「炭水化物」の違い

お菓子やチョコレート、あるいは健康に気を使った商品など、市販品のパッケージをよく見ると「糖類」「糖質」あるいは「炭水化物」といったような記載がある。これらは一見同じように見えるが、違いは一体何だろうか?

糖類とは、単糖類のグルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース、および、二糖類のスクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)などの総称である。

糖質とは、上記の糖類に加えて糖類がいくつも結合した多糖類や、糖アルコールなどを含めたものを指す言葉である。スポーツドリンクなどによく使用されるマルトデキストリン、白米に含まれるデンプンなどが糖質に当たる。そして炭水化物は、糖質に加えて食物繊維を含めたものの総称である。

さらに、炭水化物はヒトの消化酵素で消化できる易消化性炭水化物(糖質)と、消化できない難消化性炭水化物(食物繊維)とも分類できる。

糖質は4kcal/gのエネルギーを産生し、脳や骨格筋をはじめとした生体内のあらゆる組織のエネルギー源として働く。
一方、食物繊維は前述のとおりヒトの消化酵素では消化できないものの、大腸で腸内細菌により発酵分解され0~2kcal程度のエネルギーを産生すると考えられている(図1)。

糖類、糖質、炭水化物の違い
図1. 糖類・糖質・炭水化物の違い

 

糖質は運動時の重要なエネルギー源

糖質は脂質と共に運動時の重要なエネルギー源である。しかし、ヒトの身体に貯蔵されている糖質の量は脂質に比べるととても少なく、体脂肪として脂質がおよそ80,000kcal分貯蔵されているのに対し、グリコーゲンとして貯蔵されている糖質(グリコーゲン)は非常に少ない。

生体において、糖質は主に肝臓と骨格筋、そして血中に存在する。食事から摂取した糖質は肝臓と骨格筋においてグリコーゲンという形で、それぞれ約100g(400kcal)、400g(1,600kcal)程度貯蔵されている1

肝臓のグリコーゲン(肝グリコーゲン)は主に血中グルコースの維持、骨格筋のグリコーゲン(筋グリコーゲン)は運動時のエネルギー源としての働きを持つ。

長時間運動を行ってグリコーゲンが枯渇すると、疲労が生じて力の発揮が低下したり、運動自体が継続出来なくなったりする。

筋グリコーゲンの減少は筋疲労に直結するため、運動中の筋グリコーゲン節約のための栄養戦略や、あらかじめ運動前に筋グリコーゲン貯蔵量を高めておくグリコーゲンローディング(カーボローディング)といった手法がスポーツ現場では用いられる。また、次の運動に向けて素早い糖質摂取なども疲労回復には有効である。

 

肝臓や筋肉はどうやって糖を取り込んでいるのか?

糖質はエネルギー源として肝臓や骨格筋にグリコーゲンという形で貯蔵されていると述べたが、そもそも食事から摂取した糖質はどのようにしてこれらの組織にたどり着いているのだろうか?

食事から摂取された糖質は、消化酵素によってグルコースにまで分解され、小腸で吸収されたのち門脈と呼ばれる血管を通り肝臓へたどり着く。肝臓にたどり着いたグルコースは、グルコースがいくつも鎖状になったグリコーゲンという形に変化し貯蔵される(図2)。

肝グリコーゲンは再びグルコースに分解され血中に放出されることで、血中グルコースレベルを一定レベルに維持する役割を持つ。

一方、筋肉が糖を取り込むメカニズムは肝臓と少し異なる。食後に血糖値が上昇すると膵臓からインスリンというホルモンが血中に分泌される。インスリンが骨格筋に作用すると、骨格筋はGLUT4(グルコーストランスポーター4型)の働きを介して血中のグルコースを取り込み、筋グリコーゲンとして貯蔵する(図2)。

インスリン以外に骨格筋が糖を取り込む仕組みとして運動がある。筋肉が収縮することで、インスリンの作用がなくとも血中のグルコースを取り込むことが出来る。なお、肝グリコーゲンとは異なり、筋グリコーゲンはその筋肉の中で代謝され、筋中でエネルギー源として利用される。

骨格筋や肝臓におけるグリコーゲン貯蔵
図2. 骨格筋や肝臓におけるグリコーゲン貯蔵

 

スポーツ分野で用いられる様々な糖質の形

はじめに炭水化物・糖質・糖類の違いについて説明したが、スポーツサプリメントなどには様々な種類の糖質が利用されている。ここでは、代表的な糖質の種類とその特徴を紹介する。

マルトデキストリン
主にゼリータイプのスポーツサプリメントに利用される。デンプンを加水分解して作る多糖類である。程よい甘みをもち、消化し易く、吸収速度はグルコースと同程度である。

イソマルツロース
ハチミツに含まれる天然の糖質で、グルコースとフルクトースからなる二糖類である。スクロース(砂糖)と比較して吸収が遅いため、持続的なエネルギー供給が出来るとも言われている。

果糖ブドウ糖液糖
スポーツドリンクなどによく利用される。デンプンを酵素でブドウ糖まで分解した後、さらにその一部を酵素の働きによりフルクトース(果糖)に変換した液状の糖。砂糖と同程度の甘みを持ち、特徴的なクセもなくスッキリとしている。

 

次からは、運動後の糖質摂取タイミングや量、グリコーゲンローディングなどについて、それぞれ詳しく解説する。

 

  • 【参考文献】
  • 1.Wasserman, D. H. Four grams of glucose. Am. J. Physiol. – Endocrinol. Metab. 296, 11-21 (2009).

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5-1.糖質について知っておこう

糖質はヒトが生きるうえで最も重要なエネルギー源であると言える。通常、日本人は1日に摂取するエネルギーのおよそ50~60%が糖質に由来する。ここではそんな糖質について、基礎的な部分から、食事をした後身体にどうやって取り込まれるのか、どの様に貯蔵されるのか、詳しく解説する。

 

「糖類」、「糖質」、「炭水化物」の違い

お菓子やチョコレート、あるいは健康に気を使った商品など、市販品のパッケージをよく見ると「糖類」「糖質」あるいは「炭水化物」といったような記載がある。これらは一見同じように見えるが、違いは一体何だろうか?

糖類とは、単糖類のグルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース、および、二糖類のスクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)などの総称である。

糖質とは、上記の糖類に加えて糖類がいくつも結合した多糖類や、糖アルコールなどを含めたものを指す言葉である。スポーツドリンクなどによく使用されるマルトデキストリン、白米に含まれるデンプンなどが糖質に当たる。そして炭水化物は、糖質に加えて食物繊維を含めたものの総称である。

さらに、炭水化物はヒトの消化酵素で消化できる易消化性炭水化物(糖質)と、消化できない難消化性炭水化物(食物繊維)とも分類できる。

糖質は4kcal/gのエネルギーを産生し、脳や骨格筋をはじめとした生体内のあらゆる組織のエネルギー源として働く。
一方、食物繊維は前述のとおりヒトの消化酵素では消化できないものの、大腸で腸内細菌により発酵分解され0~2kcal程度のエネルギーを産生すると考えられている(図1)。

糖類、糖質、炭水化物の違い
図1. 糖類・糖質・炭水化物の違い

 

糖質は運動時の重要なエネルギー源

糖質は脂質と共に運動時の重要なエネルギー源である。しかし、ヒトの身体に貯蔵されている糖質の量は脂質に比べるととても少なく、体脂肪として脂質がおよそ80,000kcal分貯蔵されているのに対し、グリコーゲンとして貯蔵されている糖質(グリコーゲン)は非常に少ない。

生体において、糖質は主に肝臓と骨格筋、そして血中に存在する。食事から摂取した糖質は肝臓と骨格筋においてグリコーゲンという形で、それぞれ約100g(400kcal)、400g(1,600kcal)程度貯蔵されている1

肝臓のグリコーゲン(肝グリコーゲン)は主に血中グルコースの維持、骨格筋のグリコーゲン(筋グリコーゲン)は運動時のエネルギー源としての働きを持つ。

長時間運動を行ってグリコーゲンが枯渇すると、疲労が生じて力の発揮が低下したり、運動自体が継続出来なくなったりする。

筋グリコーゲンの減少は筋疲労に直結するため、運動中の筋グリコーゲン節約のための栄養戦略や、あらかじめ運動前に筋グリコーゲン貯蔵量を高めておくグリコーゲンローディング(カーボローディング)といった手法がスポーツ現場では用いられる。また、次の運動に向けて素早い糖質摂取なども疲労回復には有効である。

 

肝臓や筋肉はどうやって糖を取り込んでいるのか?

糖質はエネルギー源として肝臓や骨格筋にグリコーゲンという形で貯蔵されていると述べたが、そもそも食事から摂取した糖質はどのようにしてこれらの組織にたどり着いているのだろうか?

食事から摂取された糖質は、消化酵素によってグルコースにまで分解され、小腸で吸収されたのち門脈と呼ばれる血管を通り肝臓へたどり着く。肝臓にたどり着いたグルコースは、グルコースがいくつも鎖状になったグリコーゲンという形に変化し貯蔵される(図2)。

肝グリコーゲンは再びグルコースに分解され血中に放出されることで、血中グルコースレベルを一定レベルに維持する役割を持つ。

一方、筋肉が糖を取り込むメカニズムは肝臓と少し異なる。食後に血糖値が上昇すると膵臓からインスリンというホルモンが血中に分泌される。インスリンが骨格筋に作用すると、骨格筋はGLUT4(グルコーストランスポーター4型)の働きを介して血中のグルコースを取り込み、筋グリコーゲンとして貯蔵する(図2)。

インスリン以外に骨格筋が糖を取り込む仕組みとして運動がある。筋肉が収縮することで、インスリンの作用がなくとも血中のグルコースを取り込むことが出来る。なお、肝グリコーゲンとは異なり、筋グリコーゲンはその筋肉の中で代謝され、筋中でエネルギー源として利用される。

骨格筋や肝臓におけるグリコーゲン貯蔵
図2. 骨格筋や肝臓におけるグリコーゲン貯蔵

 

スポーツ分野で用いられる様々な糖質の形

はじめに炭水化物・糖質・糖類の違いについて説明したが、スポーツサプリメントなどには様々な種類の糖質が利用されている。ここでは、代表的な糖質の種類とその特徴を紹介する。

マルトデキストリン
主にゼリータイプのスポーツサプリメントに利用される。デンプンを加水分解して作る多糖類である。程よい甘みをもち、消化し易く、吸収速度はグルコースと同程度である。

イソマルツロース
ハチミツに含まれる天然の糖質で、グルコースとフルクトースからなる二糖類である。スクロース(砂糖)と比較して吸収が遅いため、持続的なエネルギー供給が出来るとも言われている。

果糖ブドウ糖液糖
スポーツドリンクなどによく利用される。デンプンを酵素でブドウ糖まで分解した後、さらにその一部を酵素の働きによりフルクトース(果糖)に変換した液状の糖。砂糖と同程度の甘みを持ち、特徴的なクセもなくスッキリとしている。

 

次からは、運動後の糖質摂取タイミングや量、グリコーゲンローディングなどについて、それぞれ詳しく解説する。

 

  • 【参考文献】
  • 1.Wasserman, D. H. Four grams of glucose. Am. J. Physiol. – Endocrinol. Metab. 296, 11-21 (2009).
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