体重・脂肪DOWN

Part 74 HIITで身体を絞り切れ

Part 74「HIITで身体を絞り切れ」

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Part 74 HIITで身体を絞り切れ

Part 74「HIITで身体を絞り切れ」

  • 目  的:体脂肪減少、心肺機能向上
  • メリット:短時間で可能、速筋繊維の減少を伴わない有酸素運動効果

一般的には体脂肪を燃焼させるために有酸素運動を行うことが推奨されている。しかし有酸素運動を行うことで「遅筋の割合を増やす」「女性ホルモンやコルチゾルのレベルを上げる」「テストステロンレベルを下げる」「脱共役タンパク(UCP)を減らしてしまい、代謝を下げる」などの悪影響が起こり得る。
実際に「ストレングストレーニングのみ」と「ストレングストレーニング+有酸素運動」とで比較したところ、有酸素運動を同時に行うことでパワー向上効果や筋肥大効果が減少することがメタ分析により分かっている。(※1)
そこで推奨したいのがHIITだ。これはHigh Intensity Interval Trainingの略で、無酸素運動と有酸素運動を組み合わせたようなトレーニング法である。HIITにおける最も有名なプロトコルが「タバタ式」であり、具体的には次のように行う。

■オリジナルのタバタプロトコル

  • 1. ウォームアップ後、20秒間の全力での運動
  • 2. それに続いて10秒間の緩やかな運動
  • 3. これを7~8セット繰り返す
  • 4. 頻度は週4回

しかしこれは見るからにキツイ。もともとオリンピック選手のために考え出された方法だから当然だ。そこで、これをもっと一般向けにした方法が2009年に発表された。

■一般向けタバタプロトコル

  • 1. ウォームアップ後、60秒間の全力での運動
  • 2. それに続いて75秒の緩やかな運動
  • 3. これを8~12セット繰り返す
  • 4. 頻度は週3回

オリジナルは「全力:軽く」の割合が2:1なのに対し、こちらは4:5なので、だいぶ楽になるはずだ。そのかわり、全体としての運動時間は長くなる。 この方法で7名の男性を対象に、2週間の間に6回のセッションを行った研究がある。その結果、ミトコンドリアが増加してPGC-1αが活性化、長寿遺伝子として知られるSIRT1も活性化し、さらにGLUT4が増加して筋グリコーゲンも増加(インスリン感受性向上)していた。(※2)
なお、さらに楽な方法として「8秒間のダッシュ⇔12秒間軽く」を20分に渡って行う方法が体脂肪減少に大きな効果を示している。(※3, ※4)
このプロトコルと普通の有酸素運動(最大酸素摂取量の60%で40分間のエアロバイク)を比較した結果、HIITの方が多くの皮下脂肪(2.5kg)を減らすことができ、特に腹部の脂肪が大幅に減少している。
なおウェイトトレーニングと同じ日に有酸素運動を行うウォリアーがほとんどだと思われる。前述の通り有酸素運動はウェイトトレーニングの効果を減じる可能性があるが、HIITの場合はその心配はいらないようだ。(※5)

またHIITは有酸素運動と違って強度が高いため、CRF(副腎皮質ホルモン刺激ホルモン放出ホルモン)が放出されやすく、食欲の抑制を起こし、それも体脂肪低下に関わってくるようだ。(※3) さらに心臓血管系や自律神経における改善も起こるようである。(※6)
全力での運動としてはダッシュが代表的だが、場所がない場合はバーピーなどでも構わないし、ジャンピングスクワットでもいい。できればエアロバイクのように下肢だけを使うエクササイズではなく、ステアクライマーのように上肢も使うエクササイズがいいだろう。
緩やかな運動としては、軽くジョグしたり歩き回ったりするだけでいい。長時間を要する有酸素運動と違い、HIITは5分から長くても20分で終えることができる。競技アスリートだけでなく、体脂肪を減らして絞り切りたいウォリアーにも強く勧めたい。

(Part 73を読む)
(Part 75を読む)

    【参考文献】

    • 1:Concurrent training: a meta-analysis examining interference of aerobic and resistance exercises. J Strength Cond Res. 2012 Aug;26(8):2293-307. doi: 10.1519/JSC.0b013e31823a3e2d.
    • 2:A practical model of low-volume high-intensity interval training induces mitochondrial biogenesis in human skeletal muscle: potential mechanisms. J Physiol. 2010 Mar 15;588(Pt 6):1011-22. doi: 10.1113/jphysiol.2009.181743. Epub 2010 Jan 25.
    • 3:High-intensity intermittent exercise and fat loss. J Obes. 2011;2011:868305. doi: 10.1155/2011/868305. Epub 2010 Nov 24.
    • 4:The effects of high-intensity intermittent exercise training on fat loss and fasting insulin levels of young women. Int J Obes (Lond). 2008 Apr;32(4):684-91. doi: 10.1038/sj.ijo.0803781. Epub 2008 Jan 15.
    • 5:Resistance exercise-induced S6K1 kinase activity is not inhibited in human skeletal muscle despite prior activation of AMPK by high-intensity interval cycling. Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 308(6): E470-E481
    • 6:High-intensity intermittent exercise and cardiovascular and autonomic function. Clin Auton Res. 2013 Feb;23(1):57-65. doi: 10.1007/s10286-012-0179-1. Epub 2012 Oct 29.
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    • 目  的:体脂肪減少、心肺機能向上
    • メリット:短時間で可能、速筋繊維の減少を伴わない有酸素運動効果

    一般的には体脂肪を燃焼させるために有酸素運動を行うことが推奨されている。しかし有酸素運動を行うことで「遅筋の割合を増やす」「女性ホルモンやコルチゾルのレベルを上げる」「テストステロンレベルを下げる」「脱共役タンパク(UCP)を減らしてしまい、代謝を下げる」などの悪影響が起こり得る。
    実際に「ストレングストレーニングのみ」と「ストレングストレーニング+有酸素運動」とで比較したところ、有酸素運動を同時に行うことでパワー向上効果や筋肥大効果が減少することがメタ分析により分かっている。(※1)
    そこで推奨したいのがHIITだ。これはHigh Intensity Interval Trainingの略で、無酸素運動と有酸素運動を組み合わせたようなトレーニング法である。HIITにおける最も有名なプロトコルが「タバタ式」であり、具体的には次のように行う。

    ■オリジナルのタバタプロトコル

    • 1. ウォームアップ後、20秒間の全力での運動
    • 2. それに続いて10秒間の緩やかな運動
    • 3. これを7~8セット繰り返す
    • 4. 頻度は週4回

    しかしこれは見るからにキツイ。もともとオリンピック選手のために考え出された方法だから当然だ。そこで、これをもっと一般向けにした方法が2009年に発表された。

    ■一般向けタバタプロトコル

    • 1. ウォームアップ後、60秒間の全力での運動
    • 2. それに続いて75秒の緩やかな運動
    • 3. これを8~12セット繰り返す
    • 4. 頻度は週3回

    オリジナルは「全力:軽く」の割合が2:1なのに対し、こちらは4:5なので、だいぶ楽になるはずだ。そのかわり、全体としての運動時間は長くなる。 この方法で7名の男性を対象に、2週間の間に6回のセッションを行った研究がある。その結果、ミトコンドリアが増加してPGC-1αが活性化、長寿遺伝子として知られるSIRT1も活性化し、さらにGLUT4が増加して筋グリコーゲンも増加(インスリン感受性向上)していた。(※2)
    なお、さらに楽な方法として「8秒間のダッシュ⇔12秒間軽く」を20分に渡って行う方法が体脂肪減少に大きな効果を示している。(※3, ※4)
    このプロトコルと普通の有酸素運動(最大酸素摂取量の60%で40分間のエアロバイク)を比較した結果、HIITの方が多くの皮下脂肪(2.5kg)を減らすことができ、特に腹部の脂肪が大幅に減少している。
    なおウェイトトレーニングと同じ日に有酸素運動を行うウォリアーがほとんどだと思われる。前述の通り有酸素運動はウェイトトレーニングの効果を減じる可能性があるが、HIITの場合はその心配はいらないようだ。(※5)

    またHIITは有酸素運動と違って強度が高いため、CRF(副腎皮質ホルモン刺激ホルモン放出ホルモン)が放出されやすく、食欲の抑制を起こし、それも体脂肪低下に関わってくるようだ。(※3) さらに心臓血管系や自律神経における改善も起こるようである。(※6)
    全力での運動としてはダッシュが代表的だが、場所がない場合はバーピーなどでも構わないし、ジャンピングスクワットでもいい。できればエアロバイクのように下肢だけを使うエクササイズではなく、ステアクライマーのように上肢も使うエクササイズがいいだろう。
    緩やかな運動としては、軽くジョグしたり歩き回ったりするだけでいい。長時間を要する有酸素運動と違い、HIITは5分から長くても20分で終えることができる。競技アスリートだけでなく、体脂肪を減らして絞り切りたいウォリアーにも強く勧めたい。

    (Part 73を読む)
    (Part 75を読む)

      【参考文献】

      • 1:Concurrent training: a meta-analysis examining interference of aerobic and resistance exercises. J Strength Cond Res. 2012 Aug;26(8):2293-307. doi: 10.1519/JSC.0b013e31823a3e2d.
      • 2:A practical model of low-volume high-intensity interval training induces mitochondrial biogenesis in human skeletal muscle: potential mechanisms. J Physiol. 2010 Mar 15;588(Pt 6):1011-22. doi: 10.1113/jphysiol.2009.181743. Epub 2010 Jan 25.
      • 3:High-intensity intermittent exercise and fat loss. J Obes. 2011;2011:868305. doi: 10.1155/2011/868305. Epub 2010 Nov 24.
      • 4:The effects of high-intensity intermittent exercise training on fat loss and fasting insulin levels of young women. Int J Obes (Lond). 2008 Apr;32(4):684-91. doi: 10.1038/sj.ijo.0803781. Epub 2008 Jan 15.
      • 5:Resistance exercise-induced S6K1 kinase activity is not inhibited in human skeletal muscle despite prior activation of AMPK by high-intensity interval cycling. Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 308(6): E470-E481
      • 6:High-intensity intermittent exercise and cardiovascular and autonomic function. Clin Auton Res. 2013 Feb;23(1):57-65. doi: 10.1007/s10286-012-0179-1. Epub 2012 Oct 29.